映画評「17歳の肖像」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年イギリス映画 監督ロネ・シェルフィグ
ネタバレあり
英国映画の良い面が見事に現れた青春映画の秀作である。
1961年のロンドン郊外、成績優秀な女子高校生ケアリー・マリガンがオックスフォード進学を目指すある日、雨の中チェロを抱えて佇んでいる時高級車に乗った三十代の男性ピーター・サースガードに声を掛けられ、巧みなアプローチと話しぶりにすっかりほだされてしまう。後日自宅に現れた彼は頑固だが学歴に劣等感を持つ父親アルフレッド・モリーナをも巧みに懐柔し、二人の関係は公然の仲となって行き、自由と冒険にどっぷりと浸かるうちに堅苦しい勉学や平凡な生活に嫌気がさし、彼の求婚と共に学校を止めてしまうが、その直後男が妻子持ちであるという現実を知り、途方に暮れてしまう。
ビートルズが出現する前夜の、ティーンエイジャーにとっては息詰まりそうな英国の閉塞的な空気をしっかりと捉えると同時に、時代や場所を超越した普遍的な若者の思いを描いて鮮やかと言うべし。
1955年の米国若者の態度が「理由なき反抗」なら本作英国中流階級の彼女の反乱は「抵抗なき反抗」と形容したい感じで、保守的な英国社会への嫌悪がジュリエット・グレコ、アルベール・カミュ、フランス映画(ヌーヴェルヴァーグだろう)、シャネルといった自由を感じさせるフランス文化への憧れに反転して現れている辺り非常に感じが出ている。
大人(の世界の現実)に煮え湯を呑まされることで成長、学校へ戻って行く終盤は些か調子が良すぎて苦笑したくなるところがあるものの、それも若者らしさの顕れとして微笑ましく観ることができる。地味な女教師の存在も効果的。
監督ロネ・シェルフィグの感覚や呼吸の良さもあるが、やはり典型的な英国美人ケアリー・マリガンの初々しい演技によるところが大きい。大収穫でした。
♪Well, she was just seventeen, you know what I mean
2009年イギリス映画 監督ロネ・シェルフィグ
ネタバレあり
英国映画の良い面が見事に現れた青春映画の秀作である。
1961年のロンドン郊外、成績優秀な女子高校生ケアリー・マリガンがオックスフォード進学を目指すある日、雨の中チェロを抱えて佇んでいる時高級車に乗った三十代の男性ピーター・サースガードに声を掛けられ、巧みなアプローチと話しぶりにすっかりほだされてしまう。後日自宅に現れた彼は頑固だが学歴に劣等感を持つ父親アルフレッド・モリーナをも巧みに懐柔し、二人の関係は公然の仲となって行き、自由と冒険にどっぷりと浸かるうちに堅苦しい勉学や平凡な生活に嫌気がさし、彼の求婚と共に学校を止めてしまうが、その直後男が妻子持ちであるという現実を知り、途方に暮れてしまう。
ビートルズが出現する前夜の、ティーンエイジャーにとっては息詰まりそうな英国の閉塞的な空気をしっかりと捉えると同時に、時代や場所を超越した普遍的な若者の思いを描いて鮮やかと言うべし。
1955年の米国若者の態度が「理由なき反抗」なら本作英国中流階級の彼女の反乱は「抵抗なき反抗」と形容したい感じで、保守的な英国社会への嫌悪がジュリエット・グレコ、アルベール・カミュ、フランス映画(ヌーヴェルヴァーグだろう)、シャネルといった自由を感じさせるフランス文化への憧れに反転して現れている辺り非常に感じが出ている。
大人(の世界の現実)に煮え湯を呑まされることで成長、学校へ戻って行く終盤は些か調子が良すぎて苦笑したくなるところがあるものの、それも若者らしさの顕れとして微笑ましく観ることができる。地味な女教師の存在も効果的。
監督ロネ・シェルフィグの感覚や呼吸の良さもあるが、やはり典型的な英国美人ケアリー・マリガンの初々しい演技によるところが大きい。大収穫でした。
♪Well, she was just seventeen, you know what I mean
この記事へのコメント
「○○の肖像」なんて、ふた昔前みたいなタイトルで、ヒロインも見た目はそんな美人じゃないのに賞レースで話題になったりと、気にはなっておりましたが、読ませていただいて予定リストの棚に載っけました。
<「あの頃に戻っても、私は私を止めたりしない。」今回のこのコピーも褒めたいくらい。>私の本作鑑賞記事の一文。
みんなこうやって煮え湯飲まされたり、自分から火に飛び込んで生きるテクニックを覚えていく。精神や根性までもが人生テクニックで染まってしまうのか、あの頃に戻っても、私を止めたりしないって言えるものをもって大人になっていくのかが分かれ道。
ケアリー・マリガンの初々しさと、ピーター・サースガードの妖しい気だるさ。キャスティングも良かったなって思う。ピーター・サースガード、彼はちょっと眼が離せないなかなかの役者ですね。
>美人じゃない
おっと。割合僕の好みです^^)v
元テレビ朝日の渡辺真理に似ていると仰る方もいらしましたが、そう言えば真理ちゃんも結構好みでした。
基本的に、本作がここまでの好感触を得たのは彼女の英国的雰囲気のおかげと思います。アメリカの女優がやったらもっと理詰めになってしまうのではないかな。
もう一つは監督のタッチですね。呼吸が良く、アメリカの職業監督にはちょっと出せない爽やかな後味が収穫でした。
彼女は煮え湯から良い教訓を得たんですね。
僕なんか十代の頃冒険しなかったから、積極的な失敗がない代わりに、しなかったことによる後悔が大いにありますよ。
>精神や根性までもが人生テクニックで染まってしまうのか
それではあまりにも寂しい。
>ピーター・サースガード
適役だったのではないでしょうか。
ハンサム過ぎず、実感がありましたよね。
性的な冒険心も、さらりと描かれていて、なんか国は違えど、青春のエッセンスをよくかもし出しているなあと思いました。
そうですね。
本質的な部分は国を問わないんですね。
しかし、この爽やかさは一昔前の英国的だなあ、と思わせます。今の英国はタガが外れすぎていますでしょ?
3年前に予定リスト棚に入れた作品は、予想通り何度も楽しませてくれました。
>古い記事
お粗末なものしかございませんが、読んでいただければ、もしかしたら役に立つことがあるかもしれませんね。
なかなか良かったでしょ!?
この女性監督、他の作品を見ても、有望と思っておるのです。