喪中映画評「カティンの森」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2007年ポーランド映画 監督アンジェイ・ワイダ
ネタバレあり

現在喪中であります。喪失感以上に罪悪感に苦しめられております。為に理解もままならない状態で鑑賞したり、頭が整理できないまま書いたものは“喪中映画評”というタイトルとし、他の映画評とは区別することに致しました。そんな状態で映画評などと称するのも甚だ失礼とは存じますが、悪しからず。なるべく早く自分である程度納得できるものが書けるように努めます。

ソ連の崩壊で公式に認められた“カティンの森”事件の被害者関係者の行動を描くアンジェイ・ワイダ監督の力作。お話の軸となる女性アンナはワイダの母がモデルらしい。

“カティンの森”事件とは、1940年春ソ連がポーランド軍将校捕虜に対して行なった大虐殺で、戦時中から戦後にかけてソ連は1941年のナチス・ドイツによる犯行と主張し、ポーランドがそのまま社会主義体制になった為1989年までソ連の関与は公式には認められなかった。

アンナ(マヤ・オスタシェフスカ)が夫アンジェイが目の前で捕虜として収容所に送られる様子を見た後彼の実家に娘と共に身を寄せ帰還を待ち望み、戦後写真屋で働くようになった彼女と接する元レジスタンスの女性アグニェシュカ(マグダレーナ・チエレツカ)は兄の為に髪を売って墓石を作り、没年をきちんと彫るが、没年を消す為に墓石は壊される。アンナに届けられたアンジェイの日記は1940年3月に途絶えている。

といったところが主たるお話で、他の人々のエピソードを交えながら進行する。

映画的には、ドイツ軍からの攻撃とソ連軍からの侵攻から逃げる人々が橋の上で衝突する開巻直後場面の鮮やかさと、最後に再現される銃殺場面の強烈さがとにかく印象に残る。ワイダの断裁するような場面処理はさすがである。

その一方で、エピソードの繋ぎには些か要領を得ないところがあってスムーズに展開せず、ワイダ作品としては物足りないものを覚える。現状2時間のところ3時間近い時間をかけてじっくり描けばこの辺りの問題は避けられたかもしれない。純粋に商業映画として評価することに些か抵抗を覚える作品でもありますが。

現在の僕の心境に照らせば、アンナの「あの時夫を連れ帰れば」という後悔がひたすら胸に迫る。
 ただ、僕の場合は彼女と違って二か月以上考え実行する機会があったのにそれを無にし母を永遠に失ったのだ。簡単にできることなのに愚かにも実行に移さなかったのだ。アンナ以上に僕の悔いは大きいと言ったら傲慢だろうか?

この記事へのコメント

2011年05月02日 12:12
こんにちは。
歴史と言うものは、あったかなかったかより、誰がその歴史を記述するかで変わってしまうのですね。「カティンの森」事件も、それをロシアが認めるまでに、長い時間がかかりました。
ドラゴン
2011年05月02日 15:02
お久しぶりです。
まだ心の整理がつかない時期だと思いますが、ブログが再開されてひとまず安心しました。
僕みたいな若僧が何か言える立場ではありませんが、自分も普段あんまり仲が良いとは言えない母に対しての気持ちを改めようと考えさせられました。


さて、『カティンの森』ですが、僕は劇場で観た後、暫く席を立ち上がれませんでした。
好きなアンジェイ・ワイダ監督の映画をスクリーンで観ることができた喜びの一方、近頃の映画では中々感じられない重みを感じたからです。

オカピーさんがおっしゃる通り、いくつかのエピソードの積み重ね方に違和感を覚えたのですが、非常に心に残る作品だったと思います。
オカピー
2011年05月02日 20:52
kimion20002000さん、こんにちは。

人間は弱く、概して自分に都合が悪いことは認めないのが普通ですからね。
僕の今回の失敗も、結局は自分の弱さが原因でしたよ。
オカピー
2011年05月02日 21:18
ドラゴンさん、お久しぶりです。

いや、自分を客観視しますと、年齢ばかり食って僕みたいに成長できない人もいますし、若いからと言ってあながち軽視できないと思います。

ブログは再開していますが、映画鑑賞自体のレベルが下がっていて、まして碌なものが書けません。本当にひどいものを読ませており心苦しいです。

純粋に商業映画として捉えてしまうと問題もありますが、そういう観点からだけでは評価できない性格の作品ですよね。
まだ集中できない僕ですが、割合集中できた作品と思います。とは言え、今の僕には自分の罪、悔いのほうが前に来てしまうのですけどね。

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