喪中映画評「パレード」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・行定勲
ネタバレあり

現在喪中であります。喪失感以上に罪悪感に苦しめられております。為に理解もままならない状態で鑑賞したり、頭が整理できないまま書いたものは“喪中映画評”というタイトルとし、他の映画評とは区別することに致しました。そんな状態で映画評などと称するのも甚だ失礼とは存じますが、悪しからず。なるべく早く自分である程度納得できるものが書けるように努めます。

吉田修一の同名小説を行定勲が映像化した作品。最近メジャー系列内容の作品が目立った行定監督としては初期のインディ風の作品となっているし、映画としてもメジャー傾向のものより上手く行っているようである。

東京のあるアパートを、健康オタクの映画配給会社営業マン藤原竜也、大酒飲みのイラストレーター志願・香里奈、若手男優と付き合っているフリーター貫地谷しほり、殆ど学校には行っていない模様の大学生・小出恵介がルームシェアしている。近所で女性への殴打事件が連続して起きている頃、香里奈に誘われたらしい金髪の男娼・林遣都が加わったことから、彼が殴打事件の犯人ではないかという疑惑を持つ者も現れ、徐々に彼らの現代的な関係性が浮かび上がる。

先日の「トウキョウソナタ」が象徴的であるように、昨今の人間関係を生真面目に扱おうとすると、どうも恐怖映画のようになるらしく、どん底に沈み込んでいる僕の現在の心境に全く合わないとは言え、殴打事件を巡るミステリー的趣向を盛り込み娯楽要素もたっぷり、伏線も上手く張られて興味深く観られる。

彼らの関係は一部で言われるように皮相的なのではなく、そこそこの絆を保ちながら(保つために?)相手の秘密には決して触れないように努めているということなのだろう。しかし、そこに僕が恐怖を感じる要因があるのではないかと思う。

この記事へのコメント

2011年05月05日 15:06
こんにちは。
映画の方は未見ですが、原作の吉田修一の小説の方は読みました。
非常に不快で気分の悪くなる主題を、淡々とした文体で描いていて、小説としては「巧い」作品でした。
原作も「恐怖」という言葉がぴったりでした。
私も読後、ゾッとした記憶があります。

でも個人的には、昨今の家族、友人等の人間関係を描いた映画・小説が”こんな”主題ばかり目につくのは、あまり共感できません。
「他人にしてほしいこと、されたくないこと」が多い割には「自分がどう生きたいのか?」が自覚できていないヒトが増殖している時代なので、パレードの登場人物達のような「傷つきたくないから、他人と正面から向き合わない症候群」な人達で、職場でもどこでも溢れているのは現実ではありますが、逆にそんな時代だからこそ、「圧倒的な自我」をストレートに体現した映画が観たいです。
オカピー
2011年05月05日 22:11
RAYさん、こんばんは。

原作は読んでいないものの、RAYさんのコメントから判断すると映画のほうが若干軽いのではないかというイメージがありますが、非常に不気味な感じが漂っています。

我が家は、過大な干渉はしないものの、仲の良い一家でしたから、どうもこういう無機質な平成的な人間関係にはなじめないものがありますね。
僕の大嫌いな半疑問の話し方もそういう心理の現れではないでしょうか。
僕が生まれ大学を卒業した昭和30年代以降50年代くらいまでの日本は良い社会だったと思います。

>“こんな”主題
1990年代の初めバブルの崩壊で、人生の価値観、人間関係が大きく変わったのでしょうね。
そうでなくても鬱屈しているのに、こんな映画ばかり観ていると嫌になっちゃいます。90年代以降の映画の中に僕らの考える“本当の映画”は2~3割くらいしかないような気がします。

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