映画評「シャレード」
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1963年アメリカ映画 監督スタンリー・ドーネン
重要なネタバレあり
地上波の不完全版で3回、BS等での完全版で2回ほど観ているオードリー・へプバーン主演の傑作サスペンスである。5、6年前にリメイクを観たが、比較するのが御本家に申し訳ないような出来映えだった。
素晴らしいタイトル・デザインに続いて列車から一人の男性が投げ落とされる夜の場面があり、その直後打って変わって陽光が降り注ぐアルプスの露店で食事をしているオードリーに向けて銃を向ける者あり。「すわっ、一大事」と思っていると子供の水鉄砲と解るという流れからしてご機嫌で、ここで彼女と知り合ったケイリー・グラントが最後までお付き合いすることになる。
アメリカ人の彼女が夫と暮らしているフランスに帰ってみると、家には何もかもなくなっており、離婚しようと思っていた夫が殺されたことを警察から知らされる。ファースト・シーンで殺されたのがその彼である。
警察が不思議がるほど彼女は夫について何も知らないが、友人と二人でしんみりと葬儀に参列していると、死んでいることを確認するかのように三人の男ネッド・グラス、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディが次々訪れる、という場面の面白さも格別と言うべし。
アメリカ政府の役人ウォルター・マッソーは、彼らが彼女の夫が持っていたと思われる25万ドルを戴きに訪れたことを告げ、最初は味方と思っていたグラント氏も実はこのグループの仲間であるらしい。
新作ならこの辺でストーリーは止めておいた方がよろしいが、50年近く前の旧作につきもう少し書きますと、グラント氏の正体は二転三転し、マッソー氏の正体も判明、終盤にはいよいよオードリーを巡って彼らの対決が誠にサスペンスフルに展開、手に汗を握らせる。
監督をしたスタンリー・ドーネンはミュージカルだけの人かと思ったらこんなおいしい御馳走を作る才能の持ち主でござった。その前の3人の悪漢の殺された方も圧巻で、25万ドルをめぐる謎も序盤からヒントが出されていることが判明する。僕は何度も観ているからすんなり入って来るが、初めてご覧になる方はさすがにそれがヒントだとはお気づきになりますまい。
唯一の難点は、スター・システムのせいでグラント氏とマッソー氏という配役によりどういう結末になるか予想ができてしまうことくらいでしょうか。
いずれにしてもグラントが出ているせいもあってヒッチコック映画に通ずるサスペンスにユーモアを交える面白さがあり、実際ホテルでの一幕など「泥棒成金」を彷彿とする。ヒッチコックは同じ年に傑作「鳥」を作っているが、縁の深いユニヴァーサルの作品なのにこの脚本が自分のところに回って来なかったのが癪に障ったのではないだろうか。
ヘンリー・マンシーニの主題曲もお気に入りで、オードリーの魅力については言わずもがな。
洒落度(シャレード)100点の傑作。
1963年アメリカ映画 監督スタンリー・ドーネン
重要なネタバレあり
地上波の不完全版で3回、BS等での完全版で2回ほど観ているオードリー・へプバーン主演の傑作サスペンスである。5、6年前にリメイクを観たが、比較するのが御本家に申し訳ないような出来映えだった。
素晴らしいタイトル・デザインに続いて列車から一人の男性が投げ落とされる夜の場面があり、その直後打って変わって陽光が降り注ぐアルプスの露店で食事をしているオードリーに向けて銃を向ける者あり。「すわっ、一大事」と思っていると子供の水鉄砲と解るという流れからしてご機嫌で、ここで彼女と知り合ったケイリー・グラントが最後までお付き合いすることになる。
アメリカ人の彼女が夫と暮らしているフランスに帰ってみると、家には何もかもなくなっており、離婚しようと思っていた夫が殺されたことを警察から知らされる。ファースト・シーンで殺されたのがその彼である。
警察が不思議がるほど彼女は夫について何も知らないが、友人と二人でしんみりと葬儀に参列していると、死んでいることを確認するかのように三人の男ネッド・グラス、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディが次々訪れる、という場面の面白さも格別と言うべし。
アメリカ政府の役人ウォルター・マッソーは、彼らが彼女の夫が持っていたと思われる25万ドルを戴きに訪れたことを告げ、最初は味方と思っていたグラント氏も実はこのグループの仲間であるらしい。
新作ならこの辺でストーリーは止めておいた方がよろしいが、50年近く前の旧作につきもう少し書きますと、グラント氏の正体は二転三転し、マッソー氏の正体も判明、終盤にはいよいよオードリーを巡って彼らの対決が誠にサスペンスフルに展開、手に汗を握らせる。
監督をしたスタンリー・ドーネンはミュージカルだけの人かと思ったらこんなおいしい御馳走を作る才能の持ち主でござった。その前の3人の悪漢の殺された方も圧巻で、25万ドルをめぐる謎も序盤からヒントが出されていることが判明する。僕は何度も観ているからすんなり入って来るが、初めてご覧になる方はさすがにそれがヒントだとはお気づきになりますまい。
唯一の難点は、スター・システムのせいでグラント氏とマッソー氏という配役によりどういう結末になるか予想ができてしまうことくらいでしょうか。
いずれにしてもグラントが出ているせいもあってヒッチコック映画に通ずるサスペンスにユーモアを交える面白さがあり、実際ホテルでの一幕など「泥棒成金」を彷彿とする。ヒッチコックは同じ年に傑作「鳥」を作っているが、縁の深いユニヴァーサルの作品なのにこの脚本が自分のところに回って来なかったのが癪に障ったのではないだろうか。
ヘンリー・マンシーニの主題曲もお気に入りで、オードリーの魅力については言わずもがな。
洒落度(シャレード)100点の傑作。
この記事へのコメント
>グラント氏とマッソー氏という配役によりどういう結末になるか予想ができてしまう
昔の俳優さんの事をあまり知らなくて良かったと、初めて思ったかもしれません(笑)
でも、ストーリーを知っていても、シャレた会話や登場人物の魅力で何度でも楽しめるんでしょうね。
これと「暗くなるまで待って」は文句ナシで10点献上ですよね!・・・って思ったら、後者はオカピーさんが9点をつけていらっしゃいました 笑
私が勝手に思っている「良質なサスペンスの5大要素」は
①夢オチしない、しっかりオチがある
②ハラハラさせるけど、イライラさせない
③適度なユーモア
④ヒロインは美女であること
⑤小粋な演出
・・・ですが、本作はもちろん、すべてを網羅。
ヘップバーンのファッションもいつもながらクラシックで上品ですごく可愛いですよね。大好きです!
大分お若いのでしょうか?
僕は十瑠さんより多分2歳くらい若いと思います
僕らくらいになると若い俳優を覚えるのが大変ですけどね^^;
>ストーリーを知っていても
非常に完成度の高い脚本と演出、そして俳優陣の魅力がありますから、何回見ても楽しめます。僕は5年に一度くらい見ていると思いますです。
9点と10点の差は実質的には殆どないと思ってください。ちょっとした気分の差。何かプラスαの要素があるかどうかといった程度の差です。
>夢落ち
これは余程上手く作らないと観客を納得させられないわけですが、作り手がやってはいけないもう一つは、例えば犯人なりが一人でいる時にいかにも犯人ではありませんよといった行動を客観的な描写に見せることですね。一人でいる時に嘘をつく必要は実際の生活ではありませんからね。
最近の作品はともかく、客観的な描写に嘘をついたら、何でもありの物語になってしまう。「シックス・センス」以降そんなのばかりが流行りましたけど^^;
観客に嘘をつくくらいなら嘘に相当する部分を最初から見せなければ良いんですよ。実際にはそれにもかなりのテクニックが要るのですが。
「シャレード」は文句なしですなあ。
当時ヒッチコックは「鳥」に夢中だったのでどう思ったか解りませんが、いかにもヒッチコックが作りそうなお話ですよね。
いい意味でのゆとりがあるし。こんなものが!?と驚かされるし・・・オードリーは美しいし・・・言うことなしのよい作品でありました。
「シックス・センス」はやられた!そういえばそうだと思いましたが、二番煎じ三番煎じはよろしからずでありますね。
勿論何も知らないほうが映画は楽しめるわけですし、通常は一回しか見ないのですからでそれがベストですが、気に入った映画の場合お話を知っていたほうが余計に楽しめる作品もありますよねえ。
「シックス・センス」はまあ“やられた”ということにしておきます(笑)が、後続の作品は勘弁願いたいと思いますです^^;
グラントさんとオードリーが出ていたのは覚えていましたが、コバーンやらジョージ・ケネディやらも出ていたのは、彼らが出てきて思い出しましたよ。
★★★★にしちゃったので、なんだか減点部分ばかり書いた記事、TBしました。
僕は「暗くなるまで待って」や「おしゃれ泥棒」の方が、点差以上に好きですね。
>1コイン
本来1963年製作では1コインは無理なんですが、この作品はそういう著作権がないらしい。
僕は「シャレード」が一番好きだなあ。
「暗くなるまで待って」と「おしゃれ泥棒」は出来では容易に比較しにくいけど、オードリーらしさがあるの「おしゃれ泥棒」。でも、この映画の化粧は嫌いなんだ(笑)。