映画評「春との旅」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・小林政広
ネタバレあり
北海道の増毛で漁師一筋に生きて来た老人・仲代達矢が、妻を失い、夫と離婚した娘に自殺され、廃校で給食係の仕事を失った孫娘の徳永えりに勧められ、住まわせてくれる家を探して姉兄弟の家を次々と訪れるが、夫々の事情があったり軋轢が浮かび上がったりするなどして結局どこもままならず、その様子を観るうち孫娘は少女時代に出て行った父・香川照之に会いに行く。彼の後妻・戸田菜穂は自分の父親のように思える仲代を迎えようとするが、相通ずるところがある祖父と孫は互いに支え合って生きようと家を後にする。
ただの頑固おやじではなくかなり我儘なところがある老人が兄弟たちに会って現実を知り、たまには衝突しながらも色々と面倒を見てくれる孫娘と心が通じ合うことができ、自分の最後を潔く迎える覚悟をするまでを描いたお話で、ちょっと穿った見方すぎるかもしれないが、足が悪くなって仕事ができなくなった老人の姿を考えると、徳永えりが演ずる孫娘の外股の歩き方に、似た者同士という意味合いを投影させているような気がしてくる。
お話の構成は小津安二郎の「東京物語」のヴァリエーションみたいなもので、人間の関係は血以上に思いが大事なのではないかというテーマに共通する感もある。
洋の東西を問わず、大興行を張る映画がチャラチャラちかちかしてどうにも落ち着かないものばかりなので、残りの人生が少なくなり家族を失ってくる人間には、たまにこういうゆったりしたテンポの映画を観ると安心したりする。
因みに、孫娘の名前が題名の春です。
2010年日本映画 監督・小林政広
ネタバレあり
北海道の増毛で漁師一筋に生きて来た老人・仲代達矢が、妻を失い、夫と離婚した娘に自殺され、廃校で給食係の仕事を失った孫娘の徳永えりに勧められ、住まわせてくれる家を探して姉兄弟の家を次々と訪れるが、夫々の事情があったり軋轢が浮かび上がったりするなどして結局どこもままならず、その様子を観るうち孫娘は少女時代に出て行った父・香川照之に会いに行く。彼の後妻・戸田菜穂は自分の父親のように思える仲代を迎えようとするが、相通ずるところがある祖父と孫は互いに支え合って生きようと家を後にする。
ただの頑固おやじではなくかなり我儘なところがある老人が兄弟たちに会って現実を知り、たまには衝突しながらも色々と面倒を見てくれる孫娘と心が通じ合うことができ、自分の最後を潔く迎える覚悟をするまでを描いたお話で、ちょっと穿った見方すぎるかもしれないが、足が悪くなって仕事ができなくなった老人の姿を考えると、徳永えりが演ずる孫娘の外股の歩き方に、似た者同士という意味合いを投影させているような気がしてくる。
お話の構成は小津安二郎の「東京物語」のヴァリエーションみたいなもので、人間の関係は血以上に思いが大事なのではないかというテーマに共通する感もある。
洋の東西を問わず、大興行を張る映画がチャラチャラちかちかしてどうにも落ち着かないものばかりなので、残りの人生が少なくなり家族を失ってくる人間には、たまにこういうゆったりしたテンポの映画を観ると安心したりする。
因みに、孫娘の名前が題名の春です。
この記事へのコメント
後でパリパリゴソゴソとされると台無しで。
えいがはでかいスクリーンに観るに限ると言いたいけれど、映画館には他の問題も色々ありますからね。
ミステリーを観ていて、後ろのバカップルが犯人が教えたり、前の人の頭が邪魔になったり、ハイビジョンで観ているとTVも馬鹿にならないですよね。
この監督にしては、お金をかけた方じゃないかしら。
ちょっとウルウルするシーンがいくつかありました。
>この監督
僕は初めてと思いますので、比較できませんが、ロケーションを使って家族ならではの感情をうまく醸成していましたね。
母が亡くなって、仲の良いと思っていた僕ら兄弟にも複雑な感情があることが解りました。色々な意味で勉強になりました。
今家族の映画を観ると、身にしみることが多いですね。