映画評「ラスト・ソング」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ジュリー・アン・ロビンスン
ネタバレあり

夏休みにマイリー・サイラスが弟ボビー・コールマンが、母ケリー・プレストンと離婚して海辺のコテージに暮す作曲家の父親グレッグ・キニアーと過ごす為にやって来るが、両親の離婚以来すっかりひねくれ一方的に父親が悪いと決め込んでいる為気持ちが通じ合わない。名門ジュリアード音楽院に合格したというのにそのチャンスをも棒に振ろうという荒れ具合。父よりウミガメの卵をアライグマから守るのに必死になるうち水族館で手伝いをしている金持ちの坊ちゃんリーアム・ヘムズワースと親しくなる。プレイボーイらしいので最初は警戒したものの彼の真の姿を知って恋に落ちる。

人気作「きみに読む物語」をちょっと思い出していたら、鑑賞後何とその原作者ニコラス・スパークスが原作及び共同脚色を担当していると知って驚いたが、ニック・カサヴェテスの手腕もあってなかなか見事だった前述作に比べてこちらの出来映えは余り芳しくない。妙に作り物めいた気がするのである。映画の嘘については僕は肝要だが、もっと上手く嘘をこしらえないといけない。

例えば、中盤では彼女がヘイズワース君と昵懇になるや否や父親への反発をいとも簡単に解いてしまう。そこへ父親がガンであることを知って健気に父を思う娘に変身するのだから些か調子が良すぎる。元来素直な娘らしいので、これなら父の発病で和解しても大した差はなく、より自然になったはず。“娘心と秋の空”と言えばそれまでだろうか。

で、教会に火事を起したと思い込んで苦しむ父をよそに、ヘイズワース君が実際には張本人である友人を庇っていたことを知って激怒して今度はこちらと別離。益々秋の空です・・・。
 が、母親の「人間は過ちを起すものだ」という言葉を聞いた彼女は父親の残した楽譜を仕上げて葬儀の席で演奏をし、彼女の家に近いコロンビア大に編入することにしたヘイズワース君と寄りを戻す。

ただ、ジュリー・アン・ロビンスンという女性監督のタッチはなかなか素直で感じが良い。同じようなお話を日本のTV演出家辺りが作ったらとんでもない作品になった可能性が高く、そう思えば相対的に酷評したくない気分ではあります。

人は過ちを犯すものだと言うのを聞いても、個人的に泣けて来る。困ったものです。

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