映画評「ウディ・アレンの夢と犯罪」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年イギリス=フランス=アメリカ映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
ウッディー・アレンは相変わらず精力的に制作していて、WOWOWに出る頃はいつも新作が常に1~2本公開されている状態。職業監督ならいざ知らず、映画作家でこれほど作る人は稀である。
英国へ渡ってからのお気に入りはドストエフスキー的「太陽がいっぱい」と言いたくなった「マッチポイント」で、英国絡みのパロディーを大量に交えた「タロットカード殺人事件」も個人的には色々と楽しんだ。
本作もまたロンドンを舞台にドスト的に人間を試すような犯罪が繰り広げられるスリラー仕立ての悲劇で、原題にあるカッサンドラから想像されるようにギリシャ悲劇趣味も織り込んでいる。ギリシャ悲劇に登場する予言者カッサンドラは不吉の暗示と言われる。
父親の経営する小レストランでのアシスト的仕事に飽き足らず、ホテル経営を夢見る野心家の兄ユアン・マクレガーは女優ヘイリー・アトウェルと懇ろになって益々その夢へ邁進したくなる。一方、地道に自動車修理工場で働いている弟コリン・ファレルは恋人サリー・ホーキンズとちょっとした家を持とうとした矢先、弱点のギャンブルに嵌り9万ドルもの借金をしてしまう。
そんな折中国から資産家の伯父が帰国、二人してお金の無心をするが、伯父は伯父で税務署に重大な告発をしようとしている部下を亡き者にして欲しいと兄弟に交換条件を提示する。悩んだ末に仕事を引き受けターゲットを倒した後弟が苦悩を深め自首しようとした為マクレガーは彼を薬殺しようとするが、さすがに果たせず、それが大悲劇を起す引き金となる。
作品としては「マッチポイント」に近い性格ながら、兄弟の会話や身分不相応な行動にはブラック・コメディー的なニュアンスが漂っている。しかし、それが必ずしも興味深さに繋がっていかないのは、最終的にどっちつかずの印象をももたらしているからであろうか。
アレンの映画が“クラシックな”という形容がつくようになりましたか。隔世の感がありますなあ。
2007年イギリス=フランス=アメリカ映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
ウッディー・アレンは相変わらず精力的に制作していて、WOWOWに出る頃はいつも新作が常に1~2本公開されている状態。職業監督ならいざ知らず、映画作家でこれほど作る人は稀である。
英国へ渡ってからのお気に入りはドストエフスキー的「太陽がいっぱい」と言いたくなった「マッチポイント」で、英国絡みのパロディーを大量に交えた「タロットカード殺人事件」も個人的には色々と楽しんだ。
本作もまたロンドンを舞台にドスト的に人間を試すような犯罪が繰り広げられるスリラー仕立ての悲劇で、原題にあるカッサンドラから想像されるようにギリシャ悲劇趣味も織り込んでいる。ギリシャ悲劇に登場する予言者カッサンドラは不吉の暗示と言われる。
父親の経営する小レストランでのアシスト的仕事に飽き足らず、ホテル経営を夢見る野心家の兄ユアン・マクレガーは女優ヘイリー・アトウェルと懇ろになって益々その夢へ邁進したくなる。一方、地道に自動車修理工場で働いている弟コリン・ファレルは恋人サリー・ホーキンズとちょっとした家を持とうとした矢先、弱点のギャンブルに嵌り9万ドルもの借金をしてしまう。
そんな折中国から資産家の伯父が帰国、二人してお金の無心をするが、伯父は伯父で税務署に重大な告発をしようとしている部下を亡き者にして欲しいと兄弟に交換条件を提示する。悩んだ末に仕事を引き受けターゲットを倒した後弟が苦悩を深め自首しようとした為マクレガーは彼を薬殺しようとするが、さすがに果たせず、それが大悲劇を起す引き金となる。
作品としては「マッチポイント」に近い性格ながら、兄弟の会話や身分不相応な行動にはブラック・コメディー的なニュアンスが漂っている。しかし、それが必ずしも興味深さに繋がっていかないのは、最終的にどっちつかずの印象をももたらしているからであろうか。
アレンの映画が“クラシックな”という形容がつくようになりましたか。隔世の感がありますなあ。
この記事へのコメント
アレンは不思議な才能ですね。
たいして予算もかけずに、でもつねに作りたい着想が何十本もあるんでしょうね。
彼は映画や文学などの古典を色々と勉強して、それを自分なりにややコミカルに消化して色々なアイデアを出している感じがありますね。
映画では、ベルイマン、トリュフォー、ジャン・ルノワール、ヒッチコック、フィルム・ノワール。文学ではギリシャ悲劇、シェークスピア、ドストエフスキー。
それらを時には単独で、時には織り交ぜて面白いものを作ります。
アレンを本当に楽しむには、オリジナルを知っておく必要があるでしょうね。
最新作『ミッドナイト・イン・パリ』も面白そうです。
僕のかつての同僚で、お互いに故郷に戻ってしまって、何年かに一度しか会えない友人にも、そんな風にひねくれたのがいますよ。でも結構良い奴だったりします。
僕のアレンのご贔屓は、「インテリア」「ハンナとその姉妹」「マンハッタン」「スコルピオンの恋まじない」「アニー・ホール」「カイロの紫のバラ」といったところ^^)v