映画評「大奥」(2010年版)
☆☆(4点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・金子文紀
ネタバレあり
2006年に仲間由紀恵が主演した邦画と同じ題名の本作はよしながふみのコミックの映画化、と言っても例によって原作は知らない。
今月見ただけでも「チェイサー」「ひまわり」「大奥」と他に同じ題名を使った作品が三本もあり仕方なく○○版と補足しているが、配給会社・制作会社には題名に工夫をこらしてもらいたいもの。ある程度年数が離れているものは良いとしても、本作のように前の作品と近い場合後年ややこしくなる。
江戸時代中期、男だけがかかる疱瘡の為に男性の人口が女性の4分の1にまで減少した為、男女の仕事の分担がほぼ逆転し、大奥でも女将軍に仕えるのは男性である。そして、片や貧乏旗本の息子から大奥に入った水野祐之進(二宮和也)が順調に出世街道を歩み、片や財政再建を目的に紀州から将軍になった徳川吉宗(柴咲コウ)が改革を進め、遂に総見で将軍が水野に目を掛ける時がやって来る。どうもすんなり出世して行くと思ったら、実は大奥元締・藤波(佐々木蔵之介)の陰謀であった・・・。
という一種のパラレル・ワールド的なお話だが、僕は昨年こういうお話の映画が公開されると聞いて「とんでもない」と思う一方で、どんな風に仕上がっているか見ものだなとこの日が来るのを待っていた。
結論から言えば、思ったよりはきちんと作られているが、女将軍の場合男性大奥はまず成立しないであろうという僕の限られた知識に基づく考えは変わらない。そもそも大奥は将軍に世継ぎが出来ない時のことを考えて正室に加えて側室を増やしていった結果成立、それが次第に形骸化して吉宗の時代までにあのように巨大化していったと思われる。
しかし、将軍が女性である時彼女自身に問題があれば側室も何もあったものではない。仮に問題がないとしても、認知というややこしい問題が発生するので複数の男性を一時に抱えることはできない。
将軍が女性であっても、遊郭に暮らすのが男性でも、岡っ引きが女性でも構わないが、少なくとも世継ぎの問題を有効に解決する手段になり得ない以上男性将軍と同じ形の大奥は成立しないはず。実際には寧ろ将軍(男)を大事にして正室・側室に子供をじゃんじゃん産ませる方策が取られるのではあるまいか。まして女性の方が余っているのだからそのほうが合理的だ。人間の行動原理だけは現実と常識に即さないとダメで、ファンタジーだから何でもアリというのでは困る。
それを許容して観ることが出来れば★一つ余分に進呈できるくらいのお話にはなっている。が、本当の吉宗が大奥の美女を優先的に解雇したというのは聞いていたので、これを例にしても男女を文字通りひっくりかえしただけで案外ひねりがない印象が強い。
奥は深いけど、底が浅いお話でした。
2010年日本映画 監督・金子文紀
ネタバレあり
2006年に仲間由紀恵が主演した邦画と同じ題名の本作はよしながふみのコミックの映画化、と言っても例によって原作は知らない。
今月見ただけでも「チェイサー」「ひまわり」「大奥」と他に同じ題名を使った作品が三本もあり仕方なく○○版と補足しているが、配給会社・制作会社には題名に工夫をこらしてもらいたいもの。ある程度年数が離れているものは良いとしても、本作のように前の作品と近い場合後年ややこしくなる。
江戸時代中期、男だけがかかる疱瘡の為に男性の人口が女性の4分の1にまで減少した為、男女の仕事の分担がほぼ逆転し、大奥でも女将軍に仕えるのは男性である。そして、片や貧乏旗本の息子から大奥に入った水野祐之進(二宮和也)が順調に出世街道を歩み、片や財政再建を目的に紀州から将軍になった徳川吉宗(柴咲コウ)が改革を進め、遂に総見で将軍が水野に目を掛ける時がやって来る。どうもすんなり出世して行くと思ったら、実は大奥元締・藤波(佐々木蔵之介)の陰謀であった・・・。
という一種のパラレル・ワールド的なお話だが、僕は昨年こういうお話の映画が公開されると聞いて「とんでもない」と思う一方で、どんな風に仕上がっているか見ものだなとこの日が来るのを待っていた。
結論から言えば、思ったよりはきちんと作られているが、女将軍の場合男性大奥はまず成立しないであろうという僕の限られた知識に基づく考えは変わらない。そもそも大奥は将軍に世継ぎが出来ない時のことを考えて正室に加えて側室を増やしていった結果成立、それが次第に形骸化して吉宗の時代までにあのように巨大化していったと思われる。
しかし、将軍が女性である時彼女自身に問題があれば側室も何もあったものではない。仮に問題がないとしても、認知というややこしい問題が発生するので複数の男性を一時に抱えることはできない。
将軍が女性であっても、遊郭に暮らすのが男性でも、岡っ引きが女性でも構わないが、少なくとも世継ぎの問題を有効に解決する手段になり得ない以上男性将軍と同じ形の大奥は成立しないはず。実際には寧ろ将軍(男)を大事にして正室・側室に子供をじゃんじゃん産ませる方策が取られるのではあるまいか。まして女性の方が余っているのだからそのほうが合理的だ。人間の行動原理だけは現実と常識に即さないとダメで、ファンタジーだから何でもアリというのでは困る。
それを許容して観ることが出来れば★一つ余分に進呈できるくらいのお話にはなっている。が、本当の吉宗が大奥の美女を優先的に解雇したというのは聞いていたので、これを例にしても男女を文字通りひっくりかえしただけで案外ひねりがない印象が強い。
奥は深いけど、底が浅いお話でした。
この記事へのコメント
漫画や小説では、よくても実写化されると首をかしげる作品がけっこう多いですね。
絶対権力者になるというのは、ある意味、男の願望というか女の願望でもあるのでしょうけどね。
ねこのひげは、めんどくさいからお断りです。
大奥は徳川幕府の財政の60%以上を消費していたそうで、徳川幕府を崩壊させたのは、大奥であるとも言われてます。
女性君主は構いませんが、大奥が男連中だったら面白いだろうという発想が観る前から変ではないかと思っていました。
で、いざ観てみたものの、“大奥ありき”でその辺の説明は一切なし。大奥が何故できたかというところを上手く織り込まないとお話の為のお話になって、いけませんね。
>権力
は要らんです。食べて、少し趣味に勤しめる程度のお金と社会背景があれば良いです。
>財政の60%
大体250年もすればどんな強固な体制も崩れるのは世界の歴史を観ても明らかですが、それにしてもその数字なら崩壊が早まるのも無理ないですね。
今の日本も危ないんじゃないですか?