映画評「 [ リミット ] 」
☆☆★(5点/10点満点中)
2010年スペイン映画 監督ロドリゴ・コルテス
ネタバレあり
僕のお気に入りの作品に若きスティーヴン・スピルバーグが作った「激突!」がある。あれ以上シンプルで面白い映画はないと思うが、シンプルさでは本作が上回るかもしれない。但し、映画として良いかどうかは別である。
CRTという会社に雇われてイラクで運転手の業務に付いた男ライアン・レーノルズが目覚め、棺桶の中にいることに気付く。棺桶の中には連絡の為に置かれた携帯電話やライターがあり、やがて肉親を失ったイラク人の犯人から金目当てに誘拐したと告げられる。主人公は家族や知人に連絡をするが不在等でらちが明かないので、直接雇い先や国務省と交渉することにするが、当然のことながら思うように進まず、約束の時刻が近づく。酸素や携帯電池の残量の問題も出てくる。
流行りのシチュエーション・スリラーの極北とでも言うべき内容だが、アイデアのユニークさはともかく、言わぬが花の幕切れを観るにつけサスペンスとは何ぞやという疑問が湧く。目的がサスペンスでなかったり、もっと複雑な構成ならともかく、これだけ単純なお話なのにこの幕切れ(推して知るべし)では、僕らが今までヒヤヒヤしてきたのは何の為かという疑問を回避できないのである。
「激突!」がサスペンスとして真に面白いのはやはり幕切れできちんと締めたからであって、この作品では社会の不条理ばかりが目立ち、僕の映画観では感心できない、ということになる。
色々工夫も認められるので星は水準だけ進呈致しますが、こういう極限のシチュエーションにあって主人公が不安障害であるという設定は「屋上屋を架す」ことにしかならず、少なくともプラス材料にはならない。主人公に携帯電話を使う以外に何かをしようという強い意志が見えないのも作劇的に残念。
スペイン映画だから某大国への皮肉を感じないでもないです。
2010年スペイン映画 監督ロドリゴ・コルテス
ネタバレあり
僕のお気に入りの作品に若きスティーヴン・スピルバーグが作った「激突!」がある。あれ以上シンプルで面白い映画はないと思うが、シンプルさでは本作が上回るかもしれない。但し、映画として良いかどうかは別である。
CRTという会社に雇われてイラクで運転手の業務に付いた男ライアン・レーノルズが目覚め、棺桶の中にいることに気付く。棺桶の中には連絡の為に置かれた携帯電話やライターがあり、やがて肉親を失ったイラク人の犯人から金目当てに誘拐したと告げられる。主人公は家族や知人に連絡をするが不在等でらちが明かないので、直接雇い先や国務省と交渉することにするが、当然のことながら思うように進まず、約束の時刻が近づく。酸素や携帯電池の残量の問題も出てくる。
流行りのシチュエーション・スリラーの極北とでも言うべき内容だが、アイデアのユニークさはともかく、言わぬが花の幕切れを観るにつけサスペンスとは何ぞやという疑問が湧く。目的がサスペンスでなかったり、もっと複雑な構成ならともかく、これだけ単純なお話なのにこの幕切れ(推して知るべし)では、僕らが今までヒヤヒヤしてきたのは何の為かという疑問を回避できないのである。
「激突!」がサスペンスとして真に面白いのはやはり幕切れできちんと締めたからであって、この作品では社会の不条理ばかりが目立ち、僕の映画観では感心できない、ということになる。
色々工夫も認められるので星は水準だけ進呈致しますが、こういう極限のシチュエーションにあって主人公が不安障害であるという設定は「屋上屋を架す」ことにしかならず、少なくともプラス材料にはならない。主人公に携帯電話を使う以外に何かをしようという強い意志が見えないのも作劇的に残念。
スペイン映画だから某大国への皮肉を感じないでもないです。
この記事へのコメント
まあ、単純にそうとばかりは言えないけど・・・・大作を得意とする人もいれば、短編を撮らせたらすごい人が長編を撮らせたらダメというのもありますけどね。
でも、やはり、『激突!』はすごかったですね。
ラストで巨大タンクローリーが落ちていくシーンは、まさに肉食恐竜が落ちていくようでした。
ビター・エンドを否定するつもりはないですが、一応単純とみなされるサスペンス映画の場合ビター・エンドはそれまでの途中のヒヤヒヤは何だったのか、という思いに駆られること大です。尤も助かると解りすぎているのも問題ですが。
>『激突!』
脚本・演出共に傑出していましたねえ。
あの作品は、人間心理のタイプスリップを描いた映画と評しているのですが、リンクした記事は読まれました?
>肉食恐竜
僕は原始人との対決を想定してマンモスと形容しましたが、意味は同じです^^