映画評「イエロー・ハンカチーフ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督ウダヤン・プラサッド
ネタバレあり

日本映画の最高峰「幸福の黄色いハンカチ」のリメイクだが、残念ながら原案はピート・ハミルのみになっている。山田洋次の名前はスペシャル・サンクスで出てくるのみ。出前のエピソードなど色々細かいところを戴いているのになあ。オリジナルに出演した桃井かおりがゲスト出演。

邦画に詳しくない方の為に一応お話を。

15歳の少女クリステン・スチュワートは家に帰る為に先住民と自称する落ち着きのない若者エディ・レッドメーンの車に乗ることにするが、不安なので初老のウィリアム・ハートに同乗して貰う。レッドメーンに劣らずハートの様子も変だが、やがて彼が過失致死の罪で服役していた刑務所から出て来たばかりと判明する。旅を続けながら彼は二人に、ボート修理で知り合った妻マリア・ベローとのなりそめや離婚の書類を一方的に出したことを語り、やがて手紙で「待っているならボートに黄色い旗を上げてくれ」と書いたことを告げ、三人で元の住所へ急ぐ。

緊張の終幕は“推して知るべし”の展開ながらやはり感銘深く、オリジナルの十分の一くらいだが、やはり涙腺が刺激される。とは言え、オリジナルに比べるとあざとい感じが強い。ボートの住居故に一度ないと思わせておいて別の場所にあったという細工を加えたからである。

日米の間の刑罰にかなり違いがある為に、オリジナルの殺人より罪の軽い過失致死に変えられているのも注目される。また、アメリカ人にはオリジナル通りでは喜劇色が強すぎると見たかコミカルさは薄められている。

変更と言えば、オリジナルでは20代前半だった若者たちをティーンエイジャーにしたのは日本とアメリカの国民性の違いを反映したもので、アメリカ人にはオリジナルの若者たちの言動は20代としては幼く見えすぎるにちがいない。結果的に十代に変更したことで彼らの成長物語の部分がやや前面に出ているのも少々気に入らないところで、オリジナルのような狂言回しやアクセントの領域を超えてしまう印象がある。アメリカ人の説教臭さが出た形である。オリジナルで桃井かおりが高倉健に「折角だから観に行きましょう」と説得する瞬間に見せる成長ぶりのさりげない扱いを見よ(笑)。

アメリカ映画としては純朴に作られた印象はあって比較しなければそう悪くない。どちらかと言えばニューシネマ時代の映画のような印象が残る。シンプルなロード・ムーヴィーだからだろうか。

この記事へのコメント

2011年09月26日 21:10
こんんちは。
そうですね。ちょっと乾いたアメリカン・ニューシネマの懐かしい生真面目さが甦ってきました。
やっぱり泣かされたのですが、そんな自分をチェッと舌打ちしながら、どこか安心することができましたよ(笑)
ねこのひげ
2011年09月27日 06:56
オリジナルがピート・ハミルなのはしかたないでしょうね。
もともと、ピート・ハミルのニューヨーク・ポストのコラムがもとですからね。
ピート・ハミルがグレイハウンドバスの話を聞いて書いたものですからね。
ねこのひげもこのコラムを読んで感激しました。たまたま、バスの乗り合わせた乗客全員が黄色いリボンが木に下がっているか見てやるんですね。
そして彼を送り出してやる。

それを山田洋次監督が、日本向けに作るのか楽しみでしたし、それをこんどはアメリカが・・・・
アメリカ人向けにわかりやすくしたというところでしょうかね?
ねこのひげは、グレイハウンドバスの中の群像劇を見てみたかったですけどね。
あの雰囲気はとても好きです。
オカピー
2011年09月27日 17:58
kimion20002000さん、こんばんは。

アメリカン・ニューシネマはロードムーヴィーが多かったですし、変な登場人物が出てくる傾向もありましたし、何だか40年くらい前に遡った気分ですよ。
「スケアクロウ」なんて名作もありましたが、最近TVに出て来ないなあ。

オリジナルは(特に今年は)咽ぶという感じになりますが、こちらは涙腺が熱くなるくらいでした。最近の映画は必要以上に刺激的だから、こういう純朴な映画は良いです。

僕は素直に目頭を熱くしていましたよ^^
オカピー
2011年09月27日 18:06
ねこのひげさん、こんにちは。

>ピート・ハミル
Story by Pete Hamil でも良いのですが、僕としては、Story by Yoji Yamada, inspired by Pete Hamil's column くらいにして欲しかったんですよ。あそこまでオリジナルを踏襲しているのなら^^
山田洋次の技術は日本でも実力程には評価されていないと思うし、ましてアメリカでは殆ど無名でしょうからね。残念でしたTT

国民性の違い、風土の違い、法律の違いを考えて変えるべきところは変えられていましたね。しかし、最後にハンカチが建物の間から見える縦のショットの構図までオリジナルから戴くとはねえ。嬉しいですけど。
ここまで似せれば、逆輸入と言っても良いでしょう!

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  • mini review 11516「イエロー・ハンカチーフ」★★★★★★☆☆☆☆

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