映画評「ロストクライム-閃光-」
☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・伊藤俊也
ネタバレあり
僕の小学生時代には色々な事件が起きたが、大久保清による連続殺人と三億円事件はその中でも最大級の話題を提供した。その三億円事件の遺留品から事件の真相を色々と想像して書かれた永瀬隼介の小説をベテラン伊藤俊也が映画化したのが本作。
2002年ラーメン屋の店主が殺され、定年間際の刑事・奥田瑛二が捜査を担当し、出世願望の強い若手・渡辺大とコンビを組む。
という辺りまでは普通の刑事映画だが、奥田の単独行動に疑問と怒りを感じた渡辺に彼が被害者が三億円事件を起した学生運動グループの一人であったことを告げるところから趣きが大分変って来る。
つまりこの作品(恐らく原作も)は、ジャーナリスティックな視点から想像をたくましくして、一方で三億円事件の真相を、一方で三億円事件が解決しなかった理由を、こうでなかったのかと観客に見せるのが眼目ということが判る、という次第。
大いに興味深い作品になる可能性は、1968年の時点では反権力的な学生運動メンバーたちと警察という権力のコントラストが、2002年では共に保身に走る人々という共通性に変化するという流れにあったわけだが、誤認逮捕されて自殺したガードマンの息子・武田真治が三億円事件の犯人たちを抹殺しにかかるという展開を絡めたことで自ら考え出したその焦点を大いにぼやかし、しかも彼の行動が大いに疑問を生じさせモヤモヤして終るという二重の失敗になって、あたら長蛇を逸してしまった。
最初の問題については保身の為の内ゲバだけ場合によっては警察が仲間割れを促進するというアイデアを加え保身の立場を強調すれば人間に対して程良く批判的になり、警察の巨悪という現実に十分ありうるテーマも一応感じられたはずである。
二番目の問題については原因を作った犯人たちに憎悪を向けるのも解らないことはないが、一般的には誤認逮捕した警察を怨むのではないだろうか。ましてジャーナリストという設定ならなおさらである。
バランスと全体の長さと人物配置によっては、日本映画界が誇る傑作「飢餓海峡」とまでは行かないまでもかなり重量級の人間ドラマになり得るものがあったとは思う。
2010年日本映画 監督・伊藤俊也
ネタバレあり
僕の小学生時代には色々な事件が起きたが、大久保清による連続殺人と三億円事件はその中でも最大級の話題を提供した。その三億円事件の遺留品から事件の真相を色々と想像して書かれた永瀬隼介の小説をベテラン伊藤俊也が映画化したのが本作。
2002年ラーメン屋の店主が殺され、定年間際の刑事・奥田瑛二が捜査を担当し、出世願望の強い若手・渡辺大とコンビを組む。
という辺りまでは普通の刑事映画だが、奥田の単独行動に疑問と怒りを感じた渡辺に彼が被害者が三億円事件を起した学生運動グループの一人であったことを告げるところから趣きが大分変って来る。
つまりこの作品(恐らく原作も)は、ジャーナリスティックな視点から想像をたくましくして、一方で三億円事件の真相を、一方で三億円事件が解決しなかった理由を、こうでなかったのかと観客に見せるのが眼目ということが判る、という次第。
大いに興味深い作品になる可能性は、1968年の時点では反権力的な学生運動メンバーたちと警察という権力のコントラストが、2002年では共に保身に走る人々という共通性に変化するという流れにあったわけだが、誤認逮捕されて自殺したガードマンの息子・武田真治が三億円事件の犯人たちを抹殺しにかかるという展開を絡めたことで自ら考え出したその焦点を大いにぼやかし、しかも彼の行動が大いに疑問を生じさせモヤモヤして終るという二重の失敗になって、あたら長蛇を逸してしまった。
最初の問題については保身の為の内ゲバだけ場合によっては警察が仲間割れを促進するというアイデアを加え保身の立場を強調すれば人間に対して程良く批判的になり、警察の巨悪という現実に十分ありうるテーマも一応感じられたはずである。
二番目の問題については原因を作った犯人たちに憎悪を向けるのも解らないことはないが、一般的には誤認逮捕した警察を怨むのではないだろうか。ましてジャーナリストという設定ならなおさらである。
バランスと全体の長さと人物配置によっては、日本映画界が誇る傑作「飢餓海峡」とまでは行かないまでもかなり重量級の人間ドラマになり得るものがあったとは思う。
この記事へのコメント
黒澤明監督の作品をリメイクしたのがありましたが、ありゃあなんだ!?でありました。
最高の料理のひとつとも言える映画。ルキノ・ビスコンティーの『ベニスに死す』の舞台となった”オテル・デ・バン”が、マンションとして切り売りされるそうです。
映画フアンにショックを与えているそうです。(-_-;)
>黒澤明監督の作品をリメイク
多分同じ脚本を使ったあの作品のことと思いますが(笑)、オリジナルの呼吸が全然出て来ないんですよね。監督のセンスもさることながら、役者の質が変わったなあという思いが致しました。
「サイコ」も同じ脚本なのに全然別の作品のようでしたなあ。
>『ベニスに死す』
ヴィスコンティのファンの間でも人気のある作品ですからねえ。
尤もだと思います。
いつもTB、ありがとうございますm(__)m
今回、何故かTBが反映されません。
禁止ワードにでも引っ掛かっているのかな(汗)
未だに三億円の謎は興味の的ですね!
どういう形で事件が成り立ったのか?
綿密な計画から成立したのか、
或いは偶然が偶然を呼んでラッキーだったのか。
その本当のところを知りたいものですね^^
何が問題だったか解りませんが、確かにスパム扱いになっていましたので、ただいま解除致しました。
本当に警察が保守の為に隠したのだったら嫌ですねえ^^;