映画評「アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2008年アルゼンチン映画 監督ミゲル・コアン

一見逆のようで実は、劇映画は左脳的に論理的に分析して語れるから書きやすく、ドキュメンタリーの映画評は書きにくい。内容について書くのは面白くないからだ。論理が全く破綻していたり、マイケル・ムーアの映画のように強引に劇映画的に構成されているものはそこについて触れれば良いから問題ないが、特に音楽ドキュメンタリーとなるとお手上げに近い。
 ロック関係ならいざ知らず、僕が全く知らないタンゴ(音楽)の重鎮たちを扱ったものだから右脳的に書くしかないが、残念ながら僕の音楽的感性は通俗的ではあるし、作家的にうまい文章をものする文才もない。しかも、どう書いていいものかと迷っているうちに1週間以上も経ってしまい、ますます五里霧中なのである。

などと愚痴をこぼしていても始まらないので、ぼちぼち何か書いてみましょう。

映画ファンには「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー作曲賞を獲ったグスターボ・サンタオラージャが製作の一人に加わっているというのが注目される音楽ドキュメンタリーで、作品としては11年ほど前に話題になったヴィム・ヴェンダースの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と類似している。

そのサンタオラージャ氏が50年前後活動しているタンゴ界の重鎮たちを集めてアルバムを作ろうというのが発端。その録音風景から彼らの音楽、タンゴへの愛情や高い技術が浮かび上がってくる、というのが前半の主眼で、終盤はその彼らが一堂に会してブエノスアイレスのコロン劇場でコンサートでの様子が映し出される。これが最後の演奏になった方々も何名かいらしてタンゴに縁のない僕らにもそれなりの感慨が湧き上がる。

音楽ファン以外は敢えて観なくても良いだろうが、それ以外の方が心に抱えた憂さをはらそうとバンドネオンが醸し出す哀愁に身を浸すのも悪くない。

ラテン音楽の中で日本人に一番親しみやすいのがタンゴでは?

この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年10月02日 07:36
20代のころ、仕事でアルゼンチンに行ったとき、ブエノスアイレスのクラブでタンゴを教えてくれた超美少女と一夜を過ごしたあと、早朝、窓の外から聞こえてきたアルゼンチンタンゴの歌声がすばらしくて覗いたら、ものすごい太ったおばさんが歌ってました。
あれから30年余、あの美少女もあのおばさんのようになっているかもしれないと、思い出しましたですよ(^^ゞ

あの歌声はすばらしかったですけどね・・・(~_~;)
オカピー
2011年10月02日 10:17
ねこのひげさん、こんにちは。

地球の裏側のアルゼンチンまで行かれたことあるですか。
僕の同僚はブラジルまで行きましたが、担当が違ったのでこちらにはお鉢が回って来なかったですね。

>一夜を過ごしたあと
なぬっなぬっ?^^

>あのおばさん
ラテン系とスラブ系はある年齢を過ぎると大半の人が太りますからねえ。
僕が教わったロシア語の女性教授も美人でしたが、大分太っていました。
シュエット
2011年11月15日 14:31
劇場鑑賞しました。
初めはさほど面白くなかったけど、コンサートでのバンドネオンの演奏はさすが!。やっぱり彼らの人生、身体いやはやDNAそのものにタンゴがしっかり刻まれているんですねぇ。国民性というよりも民族の血ですかねぇ。彼らの内から湧き出る、血が騒ぐというか、こういうドキュメンタリーは観ると、身震いさせられる。
オカピー
2011年11月16日 16:45
シュエットさん、こちらにも有難うございます。

>国民性というよりも民族の血
よくは解りませんが、コンチネンタル・タンゴとアルゼンチン・タンゴが何となく違うのはやはりインディオの血がどこかで差を付けているのだという気がします。
しかし、こういう映画について書くのは感性と文才の乏しい者には難しい(笑)

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