映画評「冬の小鳥」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年韓国=フランス映画 監督ウニー・ルコント
ネタバレあり
ウニー・ルコントという韓国生まれのフランス女性が1970年代に自分に起きた経験を基に作り上げたドラマで、秀作「シークレット・サンシャイン」を作ったイ・チャンドンが脚本に惚れ込んで制作に加わったという韓国=フランス合作映画である。
韓国からは時々驚かされる才能が現われるという評価を見かけたが、本作のタッチは明らかにフランス映画を見て育った者のもので、質感としてはフランス映画と言うべし。
9歳の少女ジニ(キム・セロン)は、恐らく父親と継母との関係で孤児院に入れられるが、自分は孤児ではないと思っている為施設や周囲の子供に親しめない。漸く仲良くなった二歳年上の少女スッキ(パク・ドヨン)も自分を連れていくという約束を守れないまま養女となる為に渡米する。再び孤独に陥ったジニはスッキと埋めた雀の子の墓を掘り起こして自分も埋めようとする。単純に死のうとしたのか、過去の自分との決別を意図したのか正確には解らないが、後者であるなら彼女は大した精神の持ち主である。
少女の心の軌道を描くこの作品の中で一番肝心なこの部分が解りにくく、僕の理解力ではやや【デウス・エクス・マキナ】的と言わざるを得ないのだが、ヒントとなるのは彼女が天空を見、その直後にマリア像が映されることである。とは言ってもキリスト教的説教臭さがなく、突然死をはねのけ生きる為に何をすべきか悟ったのだろうと解釈できる感じになっているのは良い。
タッチは押しつけがましくないセミ・ドキュメンタリーで、特に良いのは最初に父親といる時の素晴らしいジニの笑顔をたっぷりと映し出し、途中全く正反対に怏々とした様子を描き、最後の集合写真でまたあっぱれな笑顔を見せるという構成である。最後の笑顔は本当に素晴らしく、悲しみを乗り越えた少女に胸をなでおろす。
2009年韓国=フランス映画 監督ウニー・ルコント
ネタバレあり
ウニー・ルコントという韓国生まれのフランス女性が1970年代に自分に起きた経験を基に作り上げたドラマで、秀作「シークレット・サンシャイン」を作ったイ・チャンドンが脚本に惚れ込んで制作に加わったという韓国=フランス合作映画である。
韓国からは時々驚かされる才能が現われるという評価を見かけたが、本作のタッチは明らかにフランス映画を見て育った者のもので、質感としてはフランス映画と言うべし。
9歳の少女ジニ(キム・セロン)は、恐らく父親と継母との関係で孤児院に入れられるが、自分は孤児ではないと思っている為施設や周囲の子供に親しめない。漸く仲良くなった二歳年上の少女スッキ(パク・ドヨン)も自分を連れていくという約束を守れないまま養女となる為に渡米する。再び孤独に陥ったジニはスッキと埋めた雀の子の墓を掘り起こして自分も埋めようとする。単純に死のうとしたのか、過去の自分との決別を意図したのか正確には解らないが、後者であるなら彼女は大した精神の持ち主である。
少女の心の軌道を描くこの作品の中で一番肝心なこの部分が解りにくく、僕の理解力ではやや【デウス・エクス・マキナ】的と言わざるを得ないのだが、ヒントとなるのは彼女が天空を見、その直後にマリア像が映されることである。とは言ってもキリスト教的説教臭さがなく、突然死をはねのけ生きる為に何をすべきか悟ったのだろうと解釈できる感じになっているのは良い。
タッチは押しつけがましくないセミ・ドキュメンタリーで、特に良いのは最初に父親といる時の素晴らしいジニの笑顔をたっぷりと映し出し、途中全く正反対に怏々とした様子を描き、最後の集合写真でまたあっぱれな笑顔を見せるという構成である。最後の笑顔は本当に素晴らしく、悲しみを乗り越えた少女に胸をなでおろす。
この記事へのコメント
観ている人の人生観に左右されるのでしょうが、なんでも語って押し付けてくる映画よりはいいでしょうね。
さて、きょうは、オフクロの命日で一周忌なので、墓参りに行ってきますです。
恐らくそういうことなのだと思います。
とにかく台詞で何でもかんでも説明してしまう映画に比べれば余韻があって良いですね。
>命日
なかなか寂しさは消えないものですね。
じっくりお参りしてきて下さい。
子役の少女の演技に拍手。最近日本で人気の大人子供したジャリタレと較べるとまさに役者。「アジョシ」にも出てたけど、こっちはウォンビンのプロモーションフィルムでしたわ。本作の監督、フランス人夫婦の養女になったそうですけど、ずっと閉ざしていた部分があったんでしょね。養父母や兄弟たちはこの映画を観て、やっと彼女が理解できたって、そんなことがパンフレットで書かれていた。「捨てられた」っていう感覚は想像以上に子どもの心に深い傷を残し、大人になっても否が応でも引きずってしまっているんですね。クレイマークレイマーも決してハッピーエンドではない。その後の父と母とボクの関係は続いている。
でも彼女のそんな心の中を冷静に映像化した作品だなって思います。
TBしますね。
僕が感心した子役の演技では、フランス映画「ポネット」のヴィクトワール・ティヴィソルちゃんや「誰も知らない」の子供たち。
いずれも親の愛情に餓えた子供の役でしたが、自然な演技ではなく、演技をしていない演技が凄いなあと思いました。かと言って即興演技でもなさそうで、こういう演技指導はどうやったらできるのかなあと監督たちにも感心しましたね。本作の少女も正にそう。
母親を失って実感しましたが、こんな年になっても親子の関係はやはり特別ですね。兄弟でもその喪失感の溝は決して埋められない。まして捨てられたとなると傷は深いでしょう。