映画評「キック・アス」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督マシュー・ヴォーン
ネタバレあり
近年大量に作られ過ぎてヒーローものにはゲップが出そうな感じになっている。本作などアングルが面白くて楽しめる出来映えになっているとは言え、だからこそTVではなく映画では1970年代から90年代にかけてのようにたまに作られる方が有難さも手伝ってぐっと高い評価を出しやすいのですがね。
デイヴ(アーロン・ジョンスン)は運動が苦手なのにスーパーヒーローに憧れて、通販で買ったコスチュームを着て町に繰り出しチンピラたちをやっつけようとするが、案の定泥棒にあっさり刺されその後自動車に轢かれて病院行き。が、そこで全身を金属で補強された為に前よりましになって“キック・アス”として再度繰り出し、その奮闘ぶりがYouTubeで広められ一躍人気者になる。彼に憧れて“レッド・ミスト”なるヒーローも現われるが、その正体は大物マフィアのダミーコ(マーク・ストロング)の息子クリス(クリストファー・ミンツ・ブラッセ)。
この二人が手を組んで町をパトロールしている間に子分を殺されるなどして怒り心頭のダミーコは“キック・アス”のせいと勘違いして殺そうとするが、一連の事件を起こした本格的な自警団ヒーローは実は元刑事のビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)と11歳の娘“ヒット・ガール”(クロエ・グレース・モレッツ)で、ことの真相を知った大ボスは“キック・アス”と彼から辿りついた“ビッグ・ダディ”を捕えて公開処刑しようとする。危うく難を逃れた“ヒット・ガール”は救出に現われるものの結局死んでしまった父親の復讐を開始する。
タイトルに反して実質的な主人公はこの“ヒット・ガール”ことミンディで、“キック・アス”はダミーコや自警団父娘を話に登場させる狂言回しの役目を負っていると見なして良いようで、その割に登場している時間が長く構成上のバランスが悪いと言うべきなのかもしれない。殿さまに化けたうっかり八兵衛ばかりが出て水戸黄門がなかなか出て来ないようなものでござる。
しかし、そう杓子定規に判断しないで、逆に現状のバランスから4人の個性的なヒーローが出てきてなおかつ完全な協力関係にないユニークなヒーローものとして観るのが妥当なのでしょう。SF的な要素が極めて薄いのも珍しい。
アクション的には物凄い銃使いであり運動神経を持っている“ヒット・ガール”の独壇場で、それを11歳の少女が無情の趣きで“悪い奴”を次々となぎ倒すところにひねくれた大人には面白いわけである。僕はそうひねくれてもいないので、少々微妙なところであります。
監督は「スターダスト」「レイヤー・ケーキ」の中堅マシュー・ヴォーン。
2010年アメリカ映画 監督マシュー・ヴォーン
ネタバレあり
近年大量に作られ過ぎてヒーローものにはゲップが出そうな感じになっている。本作などアングルが面白くて楽しめる出来映えになっているとは言え、だからこそTVではなく映画では1970年代から90年代にかけてのようにたまに作られる方が有難さも手伝ってぐっと高い評価を出しやすいのですがね。
デイヴ(アーロン・ジョンスン)は運動が苦手なのにスーパーヒーローに憧れて、通販で買ったコスチュームを着て町に繰り出しチンピラたちをやっつけようとするが、案の定泥棒にあっさり刺されその後自動車に轢かれて病院行き。が、そこで全身を金属で補強された為に前よりましになって“キック・アス”として再度繰り出し、その奮闘ぶりがYouTubeで広められ一躍人気者になる。彼に憧れて“レッド・ミスト”なるヒーローも現われるが、その正体は大物マフィアのダミーコ(マーク・ストロング)の息子クリス(クリストファー・ミンツ・ブラッセ)。
この二人が手を組んで町をパトロールしている間に子分を殺されるなどして怒り心頭のダミーコは“キック・アス”のせいと勘違いして殺そうとするが、一連の事件を起こした本格的な自警団ヒーローは実は元刑事のビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)と11歳の娘“ヒット・ガール”(クロエ・グレース・モレッツ)で、ことの真相を知った大ボスは“キック・アス”と彼から辿りついた“ビッグ・ダディ”を捕えて公開処刑しようとする。危うく難を逃れた“ヒット・ガール”は救出に現われるものの結局死んでしまった父親の復讐を開始する。
タイトルに反して実質的な主人公はこの“ヒット・ガール”ことミンディで、“キック・アス”はダミーコや自警団父娘を話に登場させる狂言回しの役目を負っていると見なして良いようで、その割に登場している時間が長く構成上のバランスが悪いと言うべきなのかもしれない。殿さまに化けたうっかり八兵衛ばかりが出て水戸黄門がなかなか出て来ないようなものでござる。
しかし、そう杓子定規に判断しないで、逆に現状のバランスから4人の個性的なヒーローが出てきてなおかつ完全な協力関係にないユニークなヒーローものとして観るのが妥当なのでしょう。SF的な要素が極めて薄いのも珍しい。
アクション的には物凄い銃使いであり運動神経を持っている“ヒット・ガール”の独壇場で、それを11歳の少女が無情の趣きで“悪い奴”を次々となぎ倒すところにひねくれた大人には面白いわけである。僕はそうひねくれてもいないので、少々微妙なところであります。
監督は「スターダスト」「レイヤー・ケーキ」の中堅マシュー・ヴォーン。
この記事へのコメント
わたし的には前半が楽しめたので、彼にはヒットガールとは別の道を歩んでほしかった!
現代の病んだ病巣を描いた映画というところですかな?
>ヒットガール
PTAみたいなことは余り言いたくないですが、そんな後味は残りましたよね。
子供やおたくといった本来弱き者が強き者をくじくという主旨があったような気はしますが。
>アメリカの警察が困っている
アメリカという国は本当に面白いですね。
しかし、自警団と言えども、越権行為に及べば、どんなに正義の行為でも犯罪ですからねえ。
>現代の病んだ病巣
「スパイダーマン」などと違ってヒーローも悩むというアングルでないのは良く、本来弱いとされている者が悪を倒すという点では面白かったですが、昔の「スーパーマン」みたいに素直に観て問題のない作品でもないですね。
この作品は、わたしにとってはかなりのカルチャーショックでした。
>11歳の少女が無情の趣きで“悪い奴”を次々となぎ倒すところにひねくれた大人には面白いわけである・・・
残虐な殺人マシーンでありながらキュートな少女の平然としたバイオレンス描写・・・
アクションのテンポが格好良く、観ていて爽快に感じること自体、わたしも含めて現代が病んでいる証拠だとも思いました。
15R指定となっていることは、今回ばかりは良識の判断であるようにも思います。
映画としてはなかなか優れた作品だと思いました。
原型は「レオン」や「ニキータ」かな?
わたしは、「ペ-パームーン」なんかも思い出しましたよ。
では、また。
仰るように面白くて優れていますから、体調が万全の時に観ればもう少し違ったコメントも出たかもしれませんが、ローティーンの少女ですから、僕は少々複雑な心境になりましたねえ。
>現代が病んでいる証拠
映画が社会を映す鏡であるとすれば、観ていて気分が悪くなるような映画が増えている現実は確かなので、やはりそうなのでしょうか。
>「ペーパー・ムーン」
あれは詐欺は出てくるけど、憎めない秀作でしたね。僕はちょっと結びつかなったです^^
遅まきながら簡単記事をTBします。
アメリカ映画は益々つまらなく、欧州映画も決して没個性的になり誉められるものは減ってしますよネエ。
何年も前から言っていますが、この調子で行くと数年後には新作を見なくなる可能性も否定できません。何十本に一本でも良いのに当たると「こういうのがあるから映画はやめられないんだよなあ」ってなってしまうんですけどね(笑)。
>映画と現実と混同する輩
今の僕は笑えないんですよ(笑)。映画の見過ぎで心配症が度を越してしまい病気になっちゃった、と自己分析しているんです。