映画評「日蓮と蒙古大襲来」
☆☆(4点/10点満点中)
1958年日本映画 監督・渡辺邦男
ネタバレあり
大映の宗教スペクタクルで、あちらさんで言えば「偉大な生涯の物語」のようなものに相当する。
鎌倉中期、日蓮(長谷川一夫)が日本の柱・日本の眼目となると朝日に誓って、“南無妙法蓮華経”の題目を唱えることで人民を救い、「立正安国論」を幕府に提示して内患外憂の憂き目に遭うぞと訴えるが、聞き入れられずに遠島に処される。やがて、予言どおりに内乱が起き元寇が起こったことで日蓮は大いに持ち上げられることになる。
現代にまで名を残している宗教家は多かれ少なかれ革命家と言えるが、日蓮くらい強引に世を変えようとした僧侶は珍しいようだ。「日本の名著:日蓮」を読んだ時にも日蓮くらい好悪が分れる宗教家は日本では他にいないだろう、と書かれていた。
それはともかく、前半は日蓮の強引すぎる布教活動が描かれているが、日蓮という人間を客観視しないでその強気な活動ぶりと宗旨ばかり描かれては日蓮宗以外の人は序盤から早々白けてしまうにちがいない。
映画としては遠島を二回もご丁寧に描くに至っては「勘弁して下さい」という気分になり、武士が日蓮を斬ろうとすると雷に打たれて悶絶という場面も本来はスペクタクルながら失笑が洩れる。映画の扱いが、武士を倒した雷も元寇を挫折させた神風も日蓮が引き起こしたと言っているのも同様だからで、日蓮宗のプロパガンダ映画と言っても過言ではあるまい。これを史実とするなら、運よく雷に救われた日蓮が台風という自然の力により名を成した、というのが客観的な描き方になる。
元寇の場面は当時のテクニックとしては相当なスペクタクルとして評価できるが、ドラマとしては誠にご挨拶に困る。
1958年日本映画 監督・渡辺邦男
ネタバレあり
大映の宗教スペクタクルで、あちらさんで言えば「偉大な生涯の物語」のようなものに相当する。
鎌倉中期、日蓮(長谷川一夫)が日本の柱・日本の眼目となると朝日に誓って、“南無妙法蓮華経”の題目を唱えることで人民を救い、「立正安国論」を幕府に提示して内患外憂の憂き目に遭うぞと訴えるが、聞き入れられずに遠島に処される。やがて、予言どおりに内乱が起き元寇が起こったことで日蓮は大いに持ち上げられることになる。
現代にまで名を残している宗教家は多かれ少なかれ革命家と言えるが、日蓮くらい強引に世を変えようとした僧侶は珍しいようだ。「日本の名著:日蓮」を読んだ時にも日蓮くらい好悪が分れる宗教家は日本では他にいないだろう、と書かれていた。
それはともかく、前半は日蓮の強引すぎる布教活動が描かれているが、日蓮という人間を客観視しないでその強気な活動ぶりと宗旨ばかり描かれては日蓮宗以外の人は序盤から早々白けてしまうにちがいない。
映画としては遠島を二回もご丁寧に描くに至っては「勘弁して下さい」という気分になり、武士が日蓮を斬ろうとすると雷に打たれて悶絶という場面も本来はスペクタクルながら失笑が洩れる。映画の扱いが、武士を倒した雷も元寇を挫折させた神風も日蓮が引き起こしたと言っているのも同様だからで、日蓮宗のプロパガンダ映画と言っても過言ではあるまい。これを史実とするなら、運よく雷に救われた日蓮が台風という自然の力により名を成した、というのが客観的な描き方になる。
元寇の場面は当時のテクニックとしては相当なスペクタクルとして評価できるが、ドラマとしては誠にご挨拶に困る。
この記事へのコメント
蒙古襲来で神風が吹いて蒙古の船が翻弄されるスペクタクルはすごかった記憶がありますね。
実際には蒙古ではなく高句麗の人つまり朝鮮の人たちがほとんどで、翌日以降山口や島根に死体が流れ着いて、近在の人たちが「遠くから来てかわいそうに・・・」といいながら埋めてやり墓を立ててやったそうですけどね。
後、お釈迦さんの映画を観にいかされましたね。あのころの教育の一環だったんでしょうね。
小学校の時にご覧になっていますか。
スペクタクルはなかなか立派なものですが、いかんせん、日蓮宗のプロパガンダ映画では困っちまいますよ。
昨年観た「禅ZEN」はさすがに曹洞宗のプロパガンダという感じにはつくられていないので、その辺り時代の変遷を感じます。
>お釈迦さんの映画
大映の伝記映画「釈迦」なら僕もTVで観ていますよ^^
さて、この「日蓮と蒙古大襲来」も長谷川一夫主演。そして若手だった勝新太郎と市川雷蔵が共演。西洋スペクタクルを意識した作品でしたが、赤字だったようですね。
>先生が食べるまで帰さないなどという強権を取らなかったのは良かった。
僕も小学生の頃は好き嫌いが多かったです。大人になって酒を飲むようになったら大根・茄子・椎茸・牛蒡・筍など。何でも食べられるようになりました。
>佐分利信はキネマ旬報のベスト10に入っていますし、田中絹代は画面の意識が高くてなかなか面白い絵を生み出しました。
才能があったんですねー!
>小型の戦術核でしょうが、小型と言っても広島クラス。もっと小さなものを作っているかどうか。
小型でもやめて欲しいです!
>ほんまかいな?
50%本当ってところですか?
>こんな感じです。
ありがとうございました(笑)。
僕が子供の頃、「バナナボート」と言えばこれでした。
https://www.youtube.com/watch?v=SgVss968AGQ
そして、テレビでジャマイカの人があの曲を歌ってるのを見て僕が「ゴールデンハーフの真似をしてる!」と言ったら親父が「逆だよ!」と言ったのを思い出します。
>「水戸黄門海を渡る」を見ました
この辺は余り縁がないです。
「水戸黄門」の映画は、戦前の大河内伝次郎主演のものだけですね。
>大人になって酒を飲むようになったら大根・茄子・椎茸・牛蒡・筍など。何でも食べられるようになりました。
それは良かったですね。
僕は、ネギ・玉ネギは吐き気を催すことが多いので、今でも苦手。大分食べられるようになりましたが。
>50%本当ってところですか?
行動心理学的にはやらないはず。
しかし、プーチンより、最近は周囲の強硬派のほうが怖いのですよ。
単独なら行わないと思いますが、周囲に押されてやってしまうかもしれない。
>僕が子供の頃、「バナナボート」と言えばこれでした。
懐かしいですね。
ゴールデンハーフは、一人だけ全く憶えていない。
民間器がまだできていない1971年なのに、どうしてビデオ画像が残っているのかなあ。
>テレビでジャマイカの人があの曲を歌ってるのを見て僕が「ゴールデンハーフの真似をしてる!」と言ったら親父が「逆だよ!」と言ったのを思い出します。
これと似たようなことなのかもしれないけれど、ディズニー・ファンが、アニメと違うので(原作者の)アンデルセンとグリム兄弟はディズニーに謝れと訳の解らないことを言っていて、呆れ返ったことがありますよ。