映画評「きつねと猟犬」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1981年アメリカ映画 監督テッド・バーマン、リチャード・リッチ、アート・スティーヴンズ
ネタバレあり

ディズニー・アニメが不調だった1980年代初頭の動物アニメだが、出来映えは存外悪くない。

母親を猟師に殺された子狐が優しい未亡人トウィード夫人に拾われてトッドと名付けられ、隣の家に住む猟師エイモスが育て始めた猟犬の子犬コッパーと仲良くなる。が、天敵である二匹がいつまでも仲良く出来るわけもなく、猟の季節が終る頃夫人はトッドを禁漁区に放つものの、子狐時代にやられ放題だったエイモスはどうしても我慢ならず禁漁区に入って、先輩犬チーフとコッパーにトッドを追わせる。一度は見逃すことにしたコッパーはチーフが谷に落ちたことに怒ってトッドを追うが、トッドがチーフを熊から救おうとしたことに感じ入って、猟銃を向けたエイモスからトッドを庇う。

80年代の作品にも拘らず初期のディズニー・スタイルが大分維持されている点が注目に値するが、感心させられたのは、本来の意味でのエコロジー(生態学)の内容になっていることである。つまり、トッドが夫人の許に帰らず禁漁区で暮らし、コッパーは猟犬としての生活に戻る。通常の子供向け映画のように二匹の友情が本格的に復活することがなく、動物社会の厳しさを表現しているということである。

逆に、コッパーがチーフが谷に落ちて豹変する辺りは単純すぎる気がしないでもない。彼に天敵とかつての友情との間での迷いが見えるともっと感じが出る。

もう一つ、トリミングでもしているのか、カットによって画質(解像度)が大きく変わるのも気になった。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年11月26日 04:54
ディズニーの作品というのは、文部省推薦みたいな毒にも薬にもならないような作品が多かったですからね。
そのあたりで、限界が来ていたのでしょうけど、作品としてはそれなりの物をを実力を持っていますからね。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のシリーズで、壁を乗り越えたかな?
たぶん、ほとんどの人はディズニー作品とは思ってないでしょうね。
オカピー
2011年11月26日 15:47
ねこのひげさん、こんにちは。

アニメでは依然としてミュージカル・スタイルに拘っている面があってそこからなかなか抜け出せず、新味という点で非常に弱いですね。世間的には評価の高い「美女と野獣」も「白雪姫」時代と何も変わらない。どこか良かったのでしょうか?

新機軸を狙って作った実写SF「ブラックホール」も散々な評価でした。僕は個人的には結構気に入ったんですが(笑)。恐らくねこのひげさんもご覧になっているのではないかと思いますが、やはりあれはつまらんですか?
ねこのひげ
2011年11月27日 05:33
『美女と野獣』が評判がよかったのは、『ローマの休日』が若い人にも評判がいいのと同じ理由のような気がします。
『ブラックホール』はストーリーがいまいちでしたが、宇宙船とかブラックホールの映像は迫力があって好きでした。
『ブラックホール』は『トロンレガシー』を作ったジョセフ・コシンスキー監督がレガシーを作るそうですよ。
”柳の下の二匹目のドジョウ”となりますか?(*^。^*)
オカピー
2011年11月27日 22:27
ねこのひげさん、こんにちは。

>「美女と野獣」
僕はコクトーが作った実写版の幽玄なムードが好きだったせいか、ダメでした。映像の広がりなんかはさすがに新しい時代のものだなと感心したところもありますが。

>レガシー
そんなお話もありますか。
ちょっと期待しますか(笑)。

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