映画評「LOFT ロフト」
☆☆★(5点/10点満点中)
2006年日本映画 監督・黒沢清
ネタバレあり
「CURE」の恐怖で度肝を抜かれた黒沢清監督の作品は、広い意味で大半は恐怖映画に分類されるものだが、難渋なものが多くて困る。「叫」は彼岸と此岸の境界を描いたものと解ったつもりになっているが、それ以外のものはお手上げとは行かないまでも断定的にこれだと把握することができないでいる。本作も正にそれである。
若くして芥川賞を受賞した女流作家・中谷美紀が、出版社の編集部長・西島秀俊に頼まれて通俗的な恋愛小説に取りかかるがスランプに陥った為、東京郊外の洋館に引っ越して気分一新創作に取りかかることにするが、深夜誰もないはずの隣のビルに何かを運ぶ男を発見する。
やがて男は大学教授・豊川悦司と解り、事情があって研究している1000年前の女性のミイラをちょっと預かってくれないかと頼まれ、引き受ける。
この辺りから本作は訳の解らないことになっていく。
というのも初対面の女性にミイラを預かってくれと頼む方も変だが、それを平気で引き受けその傍で創作を続ける彼女もまともとは思えないのである。
やがて、彼女は森の中で神出鬼没の亡霊らしき妙齢女性・安達祐美と出くわすようになり、どうも前に住んでいて突然引っ越したとされる人物らしい。豊川も彼女の幻影に悩まされているらしいが、一方で彼女の殺人容疑で西島が捜査を受けていることが判る。
ミステリーではないものの、この後の展開は言わぬが花で、ミイラが絡んで以降はお話を追うのに精いっぱい。
監督の狙いもなかなか解らない。生と死、彼岸と此岸といった“境界”を描くことが多い黒沢監督のことだから、正気と狂気の狭間を、主観と客観の境界が曖昧な映像で描いてみせたと言ったところだろうか。
構図は相変わらず見事ながら、ご挨拶に困る一編。
2006年日本映画 監督・黒沢清
ネタバレあり
「CURE」の恐怖で度肝を抜かれた黒沢清監督の作品は、広い意味で大半は恐怖映画に分類されるものだが、難渋なものが多くて困る。「叫」は彼岸と此岸の境界を描いたものと解ったつもりになっているが、それ以外のものはお手上げとは行かないまでも断定的にこれだと把握することができないでいる。本作も正にそれである。
若くして芥川賞を受賞した女流作家・中谷美紀が、出版社の編集部長・西島秀俊に頼まれて通俗的な恋愛小説に取りかかるがスランプに陥った為、東京郊外の洋館に引っ越して気分一新創作に取りかかることにするが、深夜誰もないはずの隣のビルに何かを運ぶ男を発見する。
やがて男は大学教授・豊川悦司と解り、事情があって研究している1000年前の女性のミイラをちょっと預かってくれないかと頼まれ、引き受ける。
この辺りから本作は訳の解らないことになっていく。
というのも初対面の女性にミイラを預かってくれと頼む方も変だが、それを平気で引き受けその傍で創作を続ける彼女もまともとは思えないのである。
やがて、彼女は森の中で神出鬼没の亡霊らしき妙齢女性・安達祐美と出くわすようになり、どうも前に住んでいて突然引っ越したとされる人物らしい。豊川も彼女の幻影に悩まされているらしいが、一方で彼女の殺人容疑で西島が捜査を受けていることが判る。
ミステリーではないものの、この後の展開は言わぬが花で、ミイラが絡んで以降はお話を追うのに精いっぱい。
監督の狙いもなかなか解らない。生と死、彼岸と此岸といった“境界”を描くことが多い黒沢監督のことだから、正気と狂気の狭間を、主観と客観の境界が曖昧な映像で描いてみせたと言ったところだろうか。
構図は相変わらず見事ながら、ご挨拶に困る一編。
この記事へのコメント
でもミイラは預からんでしょうね(^_^.)
芥川賞をとるような作家というのは変人奇人の集まりだそうですから、預かるのかな?
前の「ドッペルゲンガー」ならどう楽しめば良いか何となく解りますが、これは映画的にどう楽しんだものやら。黒沢清監督作品を何度も見返して体系化していかないと、とても理解できない作品世界です。
江戸川乱歩氏がご存命なら楽しんだかもしれませんね。