一年遅れのベスト10~2011年私的ベスト10発表~
群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2011年私的ベスト10は皆様の2010年にほぼ相当する計算でございます。初鑑賞なら何でも入れてしまうので、時々とんでもなく古い作品も出てきたりしますが、悪しからず。
2011年は母の急死という大事件があって物理的にも時間を取られ、その後別件で心療内科に通う精神状態に陥った為鑑賞本数はかなり減りました。鑑賞本数はほぼ一日一本の363本、そのうち再鑑賞が50本ですので、対象となる初鑑賞作品は313本と例年より大分少なくなりましたが、それでも「よくこれだけ見られたな」というのが実感です。
1位・・・白いリボン
内容の強烈さと曖昧な展開が特徴のミヒャエル・ハネケとしては、強烈さより曖昧さ・難渋さが表に出た作品。既に僕らが観る時には色々な情報が入り説明されて「ナチズムの胚胎を描いた作品」と僕を含めて解ったように語っていますが、実際真っ白な状態で観た時にそこまでテーマを見抜ける人は何%いらっしゃるでしょうか。実際のところ、僕はモノクロ時代のイングマル・ベルイマンを思い出させる映像に惚れ込んでこの位置に置いたというのが正直なところ。カラー映画だったらダメだったでしょう。
2位・・・瞳の奥の秘密
珍しいアルゼンチン映画。背景にはアルゼンチンの歴史と政治がありますが、僕はミステリー趣味のある恋愛映画として鑑賞、特に近年珍しい洒落っ気のある作品として大いに気に入りました。2011(皆さんとしては2010)年はアメリカ映画が全く不調でした。
3位・・・息もできない
三月末に観たあと反芻できないまま母の死という不測の事態を迎えたので、個人的にはこの映画の迫力を恐らくきちんと理解していないと思いつつ、韓国映画特有の大袈裟な表現を抑えた点を買いました。80年代の邦画「竜二」を思い出した人も多いようですね。
4位・・・ずっとあなたを愛してる
文学的な映画と映画文学は言葉は似ていますが、全く正反対の作品群。こちらは正に映像が文字の代わりを務める映画文学と言うべき秀作で、自分の子供を“殺した”罪を犯した女性の出所後の内面の変遷を綴っています。女優二人の演技も秀逸でした。監督をしたフィリップ・クローデルという人は本業は作家ですが、映像もかくも自在に操れるとは驚きであります。
5位・・・フローズン・リバー
母を失ったばかりだからというわけではないでしょうが、苦闘する二人の母親を不法越境幇助という珍しいアングルから描いて非常に感動させられました。監督は新人女性監督コートニー・ハント。メジャー系では有望な新人が現われない一方、インディペンデント系では優秀な人が続々現われています。
6位・・・パリより愛をこめて
リュック・ベッソン絡み(本作は原案)では「96時間」同様好調な娯楽アクション映画で、ストレートで無駄が少なく、多少のお遊びがあって面白い。かかる作品もベスト10に一本くらいは入れたいもの。この出来なら十分その価値あり。
7位・・・カティンの森
ベスト10に戦争をテーマにした作品が絡まない年はないですねえ。
アンジェイ・ワイダの作品としては設計・編集に些か不満が残りながらも、個人的に“後悔”に苛まれた年ということもあり、ヒロインの後悔に共感を覚えて観た作品です。
8位・・・トイ・ストーリー3
このシリーズは映像には感嘆しつつも僕の印象はどうも世評ほど良くなかったのですが、特別の年で僕の心境に変化があったのか、或いは映画そのものの出来が良かったのか、判然としないところもありますが、この第3作には非常に感銘致しました。物にも魂があるという以前からの思いを強くしましたね。
9位・・・フェイズIV/戦慄!昆虫パニック
1974年製作という古いSF映画で、不勉強にも全く知りませんでした。日本で正式に劇場公開はされていないものの、SFファンの間では非常に有名で、TVでは以前から見られたのこと。映画ファンとしてはタイトルバック・デザイナーとして余りにも有名なソウル・バスが監督ということに注目が行きますが、こんなタイトルにも拘らず実験的かつ哲学的な作品です。お話に共通性はないながら「2001年宇宙の旅」に通底するテーマを感じます。
10位・・・悪人
2010年話題性という意味で「告白」と争った本作。どちらも人間の善と悪ということを考えざるを得ない作品ながら、後味という点からは本作のほうがぐっと映画らしい余韻を持って終わる為好感を覚えます。「告白」はミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム」ほどでないにしても後味が悪すぎましょう。
次点・・・牛の鈴音(昨年唯一☆☆☆☆★を付けた作品ですが、映像詩的ドキュメンタリーなので別枠にした次第)
ワースト・・・手を挙げろ!(一人合点で、全く意味不明。文字通りお手上げ状態でした)
****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・ミヒャエル・ハネケ~「白いリボン」
男優賞・・・新井浩文~「BOX 袴田事件 命とは」 「クヒオ大佐」
女優賞・・・クリスティン・スコット・トーマス~「ずっとあなたを愛してる」
脚本賞・・・エドゥアルド・サチェリ、フアン・ホセ・カンパネラ~「瞳の奥の秘密」
撮影賞・・・クリスティアン・ベルガー~「白いリボン」
音楽賞・・・林光~「裸の島」
特別賞・・・勝新太郎の居合抜きの速さ!
2011年は母の急死という大事件があって物理的にも時間を取られ、その後別件で心療内科に通う精神状態に陥った為鑑賞本数はかなり減りました。鑑賞本数はほぼ一日一本の363本、そのうち再鑑賞が50本ですので、対象となる初鑑賞作品は313本と例年より大分少なくなりましたが、それでも「よくこれだけ見られたな」というのが実感です。
1位・・・白いリボン
内容の強烈さと曖昧な展開が特徴のミヒャエル・ハネケとしては、強烈さより曖昧さ・難渋さが表に出た作品。既に僕らが観る時には色々な情報が入り説明されて「ナチズムの胚胎を描いた作品」と僕を含めて解ったように語っていますが、実際真っ白な状態で観た時にそこまでテーマを見抜ける人は何%いらっしゃるでしょうか。実際のところ、僕はモノクロ時代のイングマル・ベルイマンを思い出させる映像に惚れ込んでこの位置に置いたというのが正直なところ。カラー映画だったらダメだったでしょう。
2位・・・瞳の奥の秘密
珍しいアルゼンチン映画。背景にはアルゼンチンの歴史と政治がありますが、僕はミステリー趣味のある恋愛映画として鑑賞、特に近年珍しい洒落っ気のある作品として大いに気に入りました。2011(皆さんとしては2010)年はアメリカ映画が全く不調でした。
3位・・・息もできない
三月末に観たあと反芻できないまま母の死という不測の事態を迎えたので、個人的にはこの映画の迫力を恐らくきちんと理解していないと思いつつ、韓国映画特有の大袈裟な表現を抑えた点を買いました。80年代の邦画「竜二」を思い出した人も多いようですね。
4位・・・ずっとあなたを愛してる
文学的な映画と映画文学は言葉は似ていますが、全く正反対の作品群。こちらは正に映像が文字の代わりを務める映画文学と言うべき秀作で、自分の子供を“殺した”罪を犯した女性の出所後の内面の変遷を綴っています。女優二人の演技も秀逸でした。監督をしたフィリップ・クローデルという人は本業は作家ですが、映像もかくも自在に操れるとは驚きであります。
5位・・・フローズン・リバー
母を失ったばかりだからというわけではないでしょうが、苦闘する二人の母親を不法越境幇助という珍しいアングルから描いて非常に感動させられました。監督は新人女性監督コートニー・ハント。メジャー系では有望な新人が現われない一方、インディペンデント系では優秀な人が続々現われています。
6位・・・パリより愛をこめて
リュック・ベッソン絡み(本作は原案)では「96時間」同様好調な娯楽アクション映画で、ストレートで無駄が少なく、多少のお遊びがあって面白い。かかる作品もベスト10に一本くらいは入れたいもの。この出来なら十分その価値あり。
7位・・・カティンの森
ベスト10に戦争をテーマにした作品が絡まない年はないですねえ。
アンジェイ・ワイダの作品としては設計・編集に些か不満が残りながらも、個人的に“後悔”に苛まれた年ということもあり、ヒロインの後悔に共感を覚えて観た作品です。
8位・・・トイ・ストーリー3
このシリーズは映像には感嘆しつつも僕の印象はどうも世評ほど良くなかったのですが、特別の年で僕の心境に変化があったのか、或いは映画そのものの出来が良かったのか、判然としないところもありますが、この第3作には非常に感銘致しました。物にも魂があるという以前からの思いを強くしましたね。
9位・・・フェイズIV/戦慄!昆虫パニック
1974年製作という古いSF映画で、不勉強にも全く知りませんでした。日本で正式に劇場公開はされていないものの、SFファンの間では非常に有名で、TVでは以前から見られたのこと。映画ファンとしてはタイトルバック・デザイナーとして余りにも有名なソウル・バスが監督ということに注目が行きますが、こんなタイトルにも拘らず実験的かつ哲学的な作品です。お話に共通性はないながら「2001年宇宙の旅」に通底するテーマを感じます。
10位・・・悪人
2010年話題性という意味で「告白」と争った本作。どちらも人間の善と悪ということを考えざるを得ない作品ながら、後味という点からは本作のほうがぐっと映画らしい余韻を持って終わる為好感を覚えます。「告白」はミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム」ほどでないにしても後味が悪すぎましょう。
次点・・・牛の鈴音(昨年唯一☆☆☆☆★を付けた作品ですが、映像詩的ドキュメンタリーなので別枠にした次第)
ワースト・・・手を挙げろ!(一人合点で、全く意味不明。文字通りお手上げ状態でした)
****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・ミヒャエル・ハネケ~「白いリボン」
男優賞・・・新井浩文~「BOX 袴田事件 命とは」 「クヒオ大佐」
女優賞・・・クリスティン・スコット・トーマス~「ずっとあなたを愛してる」
脚本賞・・・エドゥアルド・サチェリ、フアン・ホセ・カンパネラ~「瞳の奥の秘密」
撮影賞・・・クリスティアン・ベルガー~「白いリボン」
音楽賞・・・林光~「裸の島」
特別賞・・・勝新太郎の居合抜きの速さ!
この記事へのコメント
④はすでにお話ししましたので
①のことちょこっとだけ書いた記事
持参させていただきました。
こうなりますとハネケのモノクロ映画
ぜひとも今度はイジワル路線じゃないもの
観たいと私は強く思っておりますが。
あのD・リンチだってスタンダードな逸品
作ってくれたんですものね~(^ ^)
私、今年から何を思ったか、
鑑賞映画名メモしておくことに。
半世紀の鑑賞歴にして
なんと初めての試みですの。
何事もなければ軽~く年365本クリアと
行きたいところで~す。(笑)
>ハネケ
そうですね。
実力は間違いなくありますから、「ストレイト・ストーリー」みたいな比較的万人向けの作品も観たいですね。
>鑑賞映画名メモ
僕は高校時代の友人に影響されて、大学入学と共に映画名は勿論感想を綴るようになり今に至ります。文才がないので初期の映画評は、小学生並みのお粗末なものでしたよ。