映画評「フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1974年アメリカ映画 監督ソウル・バス
ネタバレあり

ソウル・バスと言ってピンと来る人はかなりの映画通だろう。ヒッチコックの「めまい」や「サイコ」などでタイトル・デザインを作っていたデザイナーである。
 しかし、僕は全く不勉強で、彼が映画を監督していたことも知らなかったし、本作の存在も知らなかった。今回WOWOWが特集した【トラウマ映画館】で唯一未見だったのが本作で、確かにタイトル通り昆虫は出て来るがパニック映画ではなく、言わばハードSFである。

昆虫が出てくる映画と言えば、蟻が巨大化する「放射能X」や無数の蟻が出てくる「黒い絨毯」、「燃える昆虫軍団」といった作品が思い出される。いずれもそこそこ面白い通俗娯楽映画であるが、本作はそれらとはある意味次元が全く異なり、こんなタイトルながら「2001年宇宙の旅」のような、一種それに肉薄する哲学SFである。

太陽の異常活動か何かの影響で蟻が種族間の戦いを止めて天敵だった生物に対し優位に立ちやがて人間を襲撃するようになる。
 生物学者ナイジェル・ダヴェンポートと動物コミュニケーションの専門家マイケル・マーフィーがこの現象を食い止めるべく砂漠の中の研究所に立てこもるうちに、蟻が人間と闘うだけの知恵を持ち、コミュニケーションをする能力もあることが解る。彼らがイエローと呼ぶ特殊な薬品で防御すれば蟻たちはそれを命がけでばけつリレー形式で女王蟻のところまで運び、女王蟻はイエローに強い新種を生み出し、遂には研究所のコンピューターに異常を発生させる。
 研究所で保護していた少女リン・フレデリックは蟻に洗脳されたかのように砂漠に歩み出、ダヴェンポートは蟻の襲撃に遭い、マーフィーは招かれるように蟻の穴に入ってリンと結ばれ、蟻の部下になる。

蟻が人間と知恵比べをして人間に勝ち、蟻の言うことを聞くアダムとイヴを生み出すという、一種の人類滅亡への啓示的なお話で、やや世紀末映画の匂いがする。

「2001年宇宙の旅」と言えば、途中で出てくる蟻塚がモノリスに似ているだけでなく、最後に良い意味なのか悪い意味なのか不明ながら、新人類の誕生で終わるところも同じ。恐らくソウル・バスが造形したであろう二種類の蟻塚のデザインも面白い。

当時アメリカで活躍していたツトム・ヤマシタ(山下勉)の音楽も良いが、若くしてピーター・セラーズと驚きの結婚をした挙句39歳で死んでしまうリン・フレデリックの人間離れした可愛さが衝撃的。

この記事へのコメント

2012年01月06日 19:28
>若くしてピーター・セラーズと驚きの結婚をした挙句39歳で死んでしまうリン・フレデリックの人間離れした可愛さが衝撃的。

「さすらいの航海」の2年前ですから、更なる衝撃的な可愛さは察せられます♪
そうかぁ、彼女はセラーズと結婚してたんですなぁ。すっかり忘れてました。40歳前に亡くなったというのも衝撃的ですな。

オカピー様
今年もよろしくお願いいたします。
オカピー
2012年01月06日 21:15
十瑠さん、こちらこそ今年も宜しくお願い致します。

>リン・フレデリック
いや、本当に可愛い。人間離れしているとは決して大げさではないですよ。
IMDbによると、薬物が死因らしいですね。

序盤は「アンドロメダ」にも似ている、変なSF映画でした・・・
ねこのひげ
2012年01月07日 06:32
これは、ねこのひげの得意な分野ですね。(笑
SF業界?(笑)では、有名な作品です。ねこのひげも何度も見ましたし、VHSも持ってます。DVDはありませんけど、『アルゴン探検隊』とか『シンドバット七回目の航海』などが、DVDになっているので、この作品もDVDにしてくれないか?と願ってますけどね。
しかし、サブタイトルの「戦慄!昆虫パニック」というのを見ると、あのころSF映画というのは、子供が見るものと思われていたのがよくわかりますね。
『2001年宇宙の旅』を観に行った時も、子供が山のようにはいていて、内容がわからないものだから、場内が大騒ぎだったです。(--〆)
オカピー
2012年01月07日 21:38
ねこのひげさん、こんにちは。

日本では正式に公開されず、TVで何回か放映されたようですね。僕は公開された映画の題名は結構憶えていますが、未公開作品には余り詳しくないです^^;
かなり印象的な作品なので、ブルーレイに保存しておくことにしました^^

『2001年宇宙の旅』以前はSF映画はB級、子供向けというのが常識でしたからね。

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  • フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック

    Excerpt: 1974年 イギリス/アメリカ 84分 監督:ソウル・バス 出演:ナイジェル・ダヴェンポート リン・フレデリック マイケル・マーフィ アラン・ギフォード ロバート・ヘンダーソン  「黄金の腕.. Weblog: RE940の自作DVDラベル racked: 2012-01-28 23:22