映画評「ドアーズ/まぼろしの世界」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督トム・ディチロ
ネタバレあり
まだ小学生だったがリアル・タイムでドアーズは知っていた。「ハートに火をつけて」がラジオの洋楽番組でよく流れていた。しかし、ドアーズが好きになったのは「地獄の黙示録」で「ジ・エンド」を聞いてからで、まずベスト・アルバムを買ったらどの曲も格好良いので、結局ジム・モリソンが在籍しているドアーズのオリジナル・アルバムは全て買った。どのアルバムも聴き応え十分で基本的につまらない曲はないが、ビートルズのように詳細まで知りたいと思うほどではない。
現に僕はジム・モリソン(ボーカル)のワンマン・バンドと思っていたが、歌詞は詩人志願のモリソンが殆ど全て担当しているものの、作曲は友人で最初のバンド・メンバーたるレイ・マンザレク(キーボード)が結構担当しているらしい、ことを本作を見て初めて知った。
基本的に全員の共作になっているパターンが多いので、クレジットを見ても解らない。ビートルズの場合はレノン=マッカートニーとなっていても、メイン・ボーカルを務めている方が大体作っているという方程式があるのとは違う。本当のファンならその辺も解るのだろうが。
4人組にも拘らずベースのいないこの変則バンドでは、マンザレクのキーボード(左手)がベースの代りを務めている。
日本では劇場公開されたこの作品は、TVシリーズ"American Masters"の一つとして2009年にTV放映されていて、マンザレクの力も侮れないものの、文字通り麻薬的な魅力を持ち実質的に人気の支柱だったモリソンがドラッグとアルコールに溺れ、ツアー中の猥褻訴訟など裁判問題を挿入して、自滅に向っていく様子を綴っていく。かなり興味深いドキュメンタリー作品としてロック・ファンは必見と言える。
モリソンがふらふらだった間に発表したどのアルバムも結果的に(少なくとも僕には)良い出来で、特に遺作「L.A.ウーマン」ではバンドはぐっとブルース色を強めモリソンは力強いボーカルを聞かせ、デビュー・アルバム「ハートに火をつけて」と甲乙つけがたい出来映えになっている。因みに、第2作の「まぼろしの世界」も愛聴盤。初心者は「ハートに火をつけて」から聴くのが無難ではないかと思う。
出張先のロサンゼルスで「L.A.ウーマン」がラジオから流れて来た時は感動したなあ。
2009年アメリカ映画 監督トム・ディチロ
ネタバレあり
まだ小学生だったがリアル・タイムでドアーズは知っていた。「ハートに火をつけて」がラジオの洋楽番組でよく流れていた。しかし、ドアーズが好きになったのは「地獄の黙示録」で「ジ・エンド」を聞いてからで、まずベスト・アルバムを買ったらどの曲も格好良いので、結局ジム・モリソンが在籍しているドアーズのオリジナル・アルバムは全て買った。どのアルバムも聴き応え十分で基本的につまらない曲はないが、ビートルズのように詳細まで知りたいと思うほどではない。
現に僕はジム・モリソン(ボーカル)のワンマン・バンドと思っていたが、歌詞は詩人志願のモリソンが殆ど全て担当しているものの、作曲は友人で最初のバンド・メンバーたるレイ・マンザレク(キーボード)が結構担当しているらしい、ことを本作を見て初めて知った。
基本的に全員の共作になっているパターンが多いので、クレジットを見ても解らない。ビートルズの場合はレノン=マッカートニーとなっていても、メイン・ボーカルを務めている方が大体作っているという方程式があるのとは違う。本当のファンならその辺も解るのだろうが。
4人組にも拘らずベースのいないこの変則バンドでは、マンザレクのキーボード(左手)がベースの代りを務めている。
日本では劇場公開されたこの作品は、TVシリーズ"American Masters"の一つとして2009年にTV放映されていて、マンザレクの力も侮れないものの、文字通り麻薬的な魅力を持ち実質的に人気の支柱だったモリソンがドラッグとアルコールに溺れ、ツアー中の猥褻訴訟など裁判問題を挿入して、自滅に向っていく様子を綴っていく。かなり興味深いドキュメンタリー作品としてロック・ファンは必見と言える。
モリソンがふらふらだった間に発表したどのアルバムも結果的に(少なくとも僕には)良い出来で、特に遺作「L.A.ウーマン」ではバンドはぐっとブルース色を強めモリソンは力強いボーカルを聞かせ、デビュー・アルバム「ハートに火をつけて」と甲乙つけがたい出来映えになっている。因みに、第2作の「まぼろしの世界」も愛聴盤。初心者は「ハートに火をつけて」から聴くのが無難ではないかと思う。
出張先のロサンゼルスで「L.A.ウーマン」がラジオから流れて来た時は感動したなあ。
この記事へのコメント
あまりに早い死で痛ましい・・・・
天才と言われる人たちは、どこか壊れやすいのでしょう。
「ホイットニー、お前もか」という感じですね。
1970年、ジミ・ヘンドリックス27歳、ジャニス・ジョプリン27歳、1971年ジム・モリソン27歳。
全員27歳で、最初の文字がJ。しかし、こんな大物中の大物がこんなに立て続けに死んでしまって当時のロック・ファンは大騒ぎだったでしょうね。
ヴァル・キルマーがジム・モリスンを演じた「ドアーズ」にがっくり来て以来、ようやくに彼らをそのまんま語ってくれる作品にV!
ジョニー・デップのナレーションも良かったですネェ。
もともとジム・モリスンは詩だけを提供ってスタイルで参加していたようなんですよね。
「地獄の黙示録」。あの映像とドアーズのサウンドと、ジム・モリスンの声とがびたっと一体化していて鳥肌。でもコッポラとジム・モリスンが同級生だってちょっとピンとこない。横道それるけど、コッポラって学制時代からあんなふうだったのかしら?(笑)
ドアーズは好きだけど、案外知らないことが多かったなあ。
マンザレクって結構凄い奴だったんだ(笑)。
>「地獄の黙示録」
ばかでかい映画館"The End"聴いたら腰抜かしちゃいましてね、映画よりドアーズに夢中になって早速レコード店へ向かいましたよ。
この曲は、その10年前にマーティン・スコセッシが習作「ドアをノックするのは誰?」で使っていました。そう言えば、ドア繋がりでもありまする。
コッポラだって学生時代は細くて髭もなくて、もっと小生意気な感じだったんじゃいかなあ。
しかし、年を取ったジム・モリソンは想像できないですね。
観るたびにジム・モリソンの不在を思い知らされます。
当時のロック・ファンは大騒ぎしてたのかな・・・ジミヘンにしろジャニスにしろ活動期間が短いし殆どの人は彼らが死んでから本格的に聞き出したんじゃないかな。死んだから聞くというのではないけど、それだけ情報も今のように現地と同時に共有してなかっただろうし。
ビートルズやボブ・ディランは団塊世代の兄弟がいたんで、中学に入ったころから全部アルバム単位で聴いてました。刷り込み現象ですね。今でも1曲終わったら、次の曲が始まる前にイントロが浮かんでくる曲が一杯あります。でもドアーズは誰の影響でもなく、自分で選んではまっていった最初のバンドです。「まぼろしの世界」良いですね。ファーストのA面1曲めが break on through って、すでに完成してましたね。こんなバンドめったにありませんよ。
20年近く前ですが、たまたま7月の初めにパリに行くことになって、7月3日の命日にペールラシェーズ墓地に墓参りに行ってきました。パンク小僧みたいのが10人くらい来てて警察車両が1台来てました。さすがジム・モリソンです。
>ジム・モリソンの不在
存在感という意味ではやはりワンマン・バンドです。
>彼らが死んでから本格的に聞き出したんじゃないかな。
そうでしょうね。
>break on through
凄い曲ですよね。モリソンのボーカルが圧巻ですし。
今世紀の初めくらいだったでしょうか、ENDS(遠藤遼一)の「炎天」という曲を聴いた時、ドアーズに似ているなあと思いました。特にこの曲を思い出しましたね。ドアーズの影響を受けた日本人は余り知らないので強烈な印象を覚えましたよ。YouTubeにライブ映像がありますので、お時間が許すようなら是非チェックを。
>ベールラシェーズ墓地
良いですなあ。欧州へは行ったことがないデス。
女優のジュリー・デルピーがウディー・アレン風に作った「パリ、恋人たちの2日間」にちょびっと出てきました。
「パリ、恋人たちの2日間」って相手役が濃いラテン男のあれですかね。
ペールラシェーズ墓地は良いですよ。入口で地図も売ってて普通に散歩コースって感じでした。有名人が大勢眠っておられます。博識なプロフェッサーが行かれたら知り合いだらけだと思います。すごく広いので全部見て回れませんでしたが、覚えているだけでも、ショパン、オスカー・ワイルド、イブ・モンタンとシモーヌ・シニョレ(仲良く寄り添って眠っておられました)
国民的歌手のエディット・ピアフはメインストリートに立派なお墓があり、その日も2,3人の女性が花やバケツを持ってきてました。ジムのお墓はそれに比べると外れにひっそりありました。'71年には空いてる場所がなかったんでしょうね。
入口で売っている絵ハガキはジムの胸像がのってる写真なんですが、もうそんな物ありませんでした。
ドアーズがパンクに影響を与えたってよく言われるし実際そんな感じのBOYSがお墓にきてましたけど、影響受けてるメジャーなバンドってご存知ですか?
>「パリ、恋人たちの2日間」
髭は濃かったです(笑)。
>ペールラシェーズ墓地
お墓の写真は撮るべきものかどうか知りませんが、写真に撮ったら物凄い数になりそうですね。日本にはこういう墓地はないですなあ。
>ドアーズ
ENDSの「炎天」にお時間を割いて戴き恐縮です。“突き抜けろ”という歌詞がBreak on throughに似ていますよね。僕は、エレクトーンや遠藤遼一のボーカルもドアーズを意識していると思いました。僕の見たライブでは上半身裸でしたし。
>影響受けてるメジャーなバンド
確かにパンクは反体制的なイメージを踏襲していますが、表面的にはドアーズよりヴェルヴェット・アンダーグラウンドっぽいのが多いようです。
僕がCDを持っているバンドの中では、テレビジョンTelevision というのがドアーズに拘ってエレクトラ・レコードと契約していて、詩的な歌詞などに影響を感じないでもないですが、サウンドはパンクなので余りそれっぽくない。敢えて言えば、9分を超える長い曲Marquee Moonの長い間奏に僅かにThe End 辺りの気分があるかな、といった程度。ヴォーカルは線が細いので、これは比較にならず。総合的にはやはり頼りなさげなヴォーカルを含めてヴェルヴェット・アンダーグラウンドのほうに似ていますね。
ENDSの「炎天」、すぐ見つかりました。面白かったです。ああいうのは誰かに教えてもらわないとたどり着けませんね。ありがとうございました。
私は70年代半ばくらいでロック系からは足を洗いまして、ストーンズも2枚組のメインストリートまでで、流行り歌で耳に入ってきたのは例のホテカルとかTREXのGET IT ON(これは好き)くらいですからパンクとか全く分かりません。イアン・デューリーはライブ映像を1度観ただけですけど、あれは良かったです。
ドアーズはONE&ONLYですね、カバーはできるけど、それ以上は無理ですよね。
ロスでL.A.WOMAN、感動ですね! 私、ロンドンのホテルでTVつけたらストーンズでした! サンフランシスコの空港では花のサンフランシスコが流れてるっていうのは嘘でした。
>70年代半ばくらいでロック系からは足を洗い
そうでしたか。
僕は足こそ洗っていませんが、70年代半ば台頭してきたパンクのせいでロックはつまらなくなったと思いましたね。パンクは印象に残るメロディーが少なく余り好きではない。プリパンクと言われるヴェルヴェット・アンダーグラウンドはあんなに面白いのに。
ポピュラー音楽界がディスコやハウスに傾いて必然的に古いロックやポピュラーに戻っていくことになりましたね。
>TREX
彼らは他の曲に交えて聴くととても良いですが、LPを通して聴くと飽きますね。一番評判の良い「スライダー」を持っています。ドアーズやビートルズやストーンズといった辺りはそういうことがない。
>イアン・デュ―リー
名前くらいしか知らないので先ほど少し見ましたが、なかなか面白いですね。しかし、ポール・マッカートニーと同じ年に生まれたので随分遅咲きだったみたい。
>ドアーズはONE&ONLYですね。
本当に。曲もボーカルも、そして演奏(決して上手くはないけれど)も魅力満点。モリソンは偉大なり!
>ロスでL.A.WOMAN
70年代ではなく、90年代でしたから、いくらLAでも始終かけているわけではないだろうに、僕を歓迎しているのかと思いましたよ(笑)。
>ロンドンのホテルでTVつけたらストーンズ
モカさんも歓迎されたんですね^^v