映画評「クレアモントホテル」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年イギリス=アメリカ映画 監督ダン・アイアランド
ネタバレあり
英米合作だが、原作者エリザベス・テイラー(昨年亡くなったかの大女優とは別人)が英国人で、舞台も英国、出演者も大体英国人、ということで上品な英国テイストのドラマとなっている。
夫に先立たれ余生を過ごす為に娘に勧められてロンドンのクレアモント・ホテルに長逗留することにした老婦人ジョーン・プローライトは、そこが先行きの長くなさそうな老人ばかりが数人過ごしているだけの安ホテルなのにちょっと驚く。暇を持て余す先客の老人たちは新しい宿泊客の訪問者に関心を抱くが、彼女が電話をした孫はなかなかやって来ない。そこで、外出中にふと転んだ時に親切にして貰った若者ルパート・フレンドを孫ということにして紹介すると、ホテルは彼の話に花が咲く。
他方、母親の期待に背いて一人暮しで作家を目指している青年は彼女を題材に小説を書き始め、娘との相性の悪い老婦人と同病相憐れむかのように世代を超えた友情を育んでいく。彼は彼女が話した英国映画の名作「逢びき」をレンタル店で借りようとして感じの良い妙齢美人ゾーイ・タッパーと知り合って意気投合、その結果老婦人は一人でいることが増えつつも、二人の行く末に頼もしさを感じたかのように安らかに死を迎えることになる。
ハリウッド映画がどんどん下品さを増していく中、こういう英国らしい上品な作品を観ると実に良い気持ちになる。老人たちが正に英国風なユニークさを爆発させて楽しい反面、若者は些かハンサムにして好青年に過ぎる感はあるが、老いの孤独を浮かび上がらせ、人生の最期をいかに充実して生きるかという寓話としては感じ良く作る為には必要な設定、配役なのであろう。「逢びき」、1930年代の名曲“For All We Know"の使い方も非常にうまい。
そして、昨年四月僕が母を失った後スタインベックの小説「怒りの葡萄」の中で「人は一人ぼっちでは何の役にも立たない」という文言を読んで、「人は自分の為に生きるのではない。誰かの為に生きて幸福を得る。但し、相手から無言のうちに同じようにして貰って初めて本当の幸福となり、それこそ人の生きる意味である」と抱いた思いと正に同じ思いを本作から受け取り、言葉にならない感動を覚えるのである。
2005年イギリス=アメリカ映画 監督ダン・アイアランド
ネタバレあり
英米合作だが、原作者エリザベス・テイラー(昨年亡くなったかの大女優とは別人)が英国人で、舞台も英国、出演者も大体英国人、ということで上品な英国テイストのドラマとなっている。
夫に先立たれ余生を過ごす為に娘に勧められてロンドンのクレアモント・ホテルに長逗留することにした老婦人ジョーン・プローライトは、そこが先行きの長くなさそうな老人ばかりが数人過ごしているだけの安ホテルなのにちょっと驚く。暇を持て余す先客の老人たちは新しい宿泊客の訪問者に関心を抱くが、彼女が電話をした孫はなかなかやって来ない。そこで、外出中にふと転んだ時に親切にして貰った若者ルパート・フレンドを孫ということにして紹介すると、ホテルは彼の話に花が咲く。
他方、母親の期待に背いて一人暮しで作家を目指している青年は彼女を題材に小説を書き始め、娘との相性の悪い老婦人と同病相憐れむかのように世代を超えた友情を育んでいく。彼は彼女が話した英国映画の名作「逢びき」をレンタル店で借りようとして感じの良い妙齢美人ゾーイ・タッパーと知り合って意気投合、その結果老婦人は一人でいることが増えつつも、二人の行く末に頼もしさを感じたかのように安らかに死を迎えることになる。
ハリウッド映画がどんどん下品さを増していく中、こういう英国らしい上品な作品を観ると実に良い気持ちになる。老人たちが正に英国風なユニークさを爆発させて楽しい反面、若者は些かハンサムにして好青年に過ぎる感はあるが、老いの孤独を浮かび上がらせ、人生の最期をいかに充実して生きるかという寓話としては感じ良く作る為には必要な設定、配役なのであろう。「逢びき」、1930年代の名曲“For All We Know"の使い方も非常にうまい。
そして、昨年四月僕が母を失った後スタインベックの小説「怒りの葡萄」の中で「人は一人ぼっちでは何の役にも立たない」という文言を読んで、「人は自分の為に生きるのではない。誰かの為に生きて幸福を得る。但し、相手から無言のうちに同じようにして貰って初めて本当の幸福となり、それこそ人の生きる意味である」と抱いた思いと正に同じ思いを本作から受け取り、言葉にならない感動を覚えるのである。
この記事へのコメント
それにしてもこの作品、とても地味目ですが、人生の先輩方の気持ちが正直に表れている素直さが気に入っています。サラさんのお茶目な所なんかも可愛らしくて(笑)
とってもいい感じで映画館を出ました。
M・ファイファーと共演した折のフレンド君は
かなり役たらずに感じましたが
本作での彼はかなりよろしかったですね。
“あんなに善き青年、いるわけない”と
思って観てましたが、“もしかして、いるかも~”
そんな気持ちにも、させてくれましたもの。
ただ、ここにこうして生きてあることで
他者の幸せに少しは関与できてるかも・・・
な~んてかなりオメデタイ考えで暮らし続けて
いたりするのですが、ダメでしょうかね。(笑)
>ルパート・フレンド
ハリウッドには勿体ないです(笑)
英国映画も下町を中心にしたものには苦手なものがありますが、老人や中上流階級を描かせると地味ながら味わい深いものが多いです。
事実は小説より奇なり、などと申して案外いるかもしれません・・・
が、映画は上手く嘘をついてこそ映画。
ころりと騙されて良い気分になったほうが得な作品でしたね。
>他者の幸せに少しは関与
いやあ、間違いなくできていらっしゃいますよ。
お元気な文章の行間からよ~く見えます^^
良かったですネェ。なんかじわっとするものが胸に広がってくるような…
この二人のツーショットがまたいいですネェ。
ワーズワースの詩、映画「逢びき」そして「For All We Know」カーペンターズがカバーしてヒットしましたよね。こんな雰囲気はアメリカ映画では出せない味ですよね。こうやっていい映画に出会うと俄然元気が出てくるもんですねぇ。
ルパート・フレンド…ちょっと線が細い気もするけれど、ここ数年の私のお気に入りでございます。
明日付けで予約投稿したので、日付変更線がかわるとそちらにもTBいくと思います。
正に英国映画の味でね、良かったですよねえ。
アメリカ映画は昔から大味でも上手い監督が多かった。最近は剛速球に見えても棒球(ぼうだま)ばかりで、ほんまにつまらない。もうちょっと付き合っても良いと思いますけど。
>ルパート・フレンド
日本で公開された作品は最新作を除いて全部観ているなあ。
やはり英国ムードが良いです。
>予約投稿
了解であります^^)ゝ