映画評「スターシップ・トゥルーパーズ3」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督エドワード・ニューマイヤー
ネタバレあり
一般SF(映画)ファンにはつまらない駄作だろうが、第2作が寧ろ一般的なスペース・オペラ・ファン用に作った狙いが外れてどの点からみてもつまらない文字通りの愚作だったのに対し、恐らく殊勝なファンに向けて作られたに違いない第1作同様の面白さがある。
連邦政府の名の下に一つに固まった人類が植民惑星で昆虫のお化けと戦うというお話は地球での巨大昆虫映画と大して変わらず何ということなく、アクション的な見せ場もVFXの出来映えも水準以下、これらの点から評価したら全く大したことのない作品である。
面白いのは未来観である。第1作は、具体的には男女が同じシャワー室にいるというバリアフリーならぬセックス(ジェンダー)フリーの男女観が、そういう世界では所謂セクハラもないだろうという考えも浮かんで、大変興味深かった。本作にも似た場面があるが、セクハラはなくもない感じで第1作ほど徹底した感じがない。
本作でもっと面白いのは“宗教化された独裁”、“独裁のような宗教”が交錯しながら進行することである。本作では、外観的に明らかにナチスのそれをパロディー化している、未来の独裁的民衆管理が出て来て、平和運動家の処刑場面やら兵隊たちの粛清が躊躇いなく行なわれている事実が描かれている。これが“宗教化された独裁”だが、独裁者はいつの時代も自分以外の宗教を認めない。
そこに絡んで出てくるのが昆虫がコントロールする宗教と人類本来の宗教である。人類本来と言っても作者故にどうしても一神教であるが、これが“独裁のような宗教”という文言に通じる。
だから戦闘アクションとして観る人には“不愉快な宗教観”ということになるだろうが、本作で一番興味深いのはこの宗教観なのである。
総じて、現在の世界情勢全体をパロディーとして見せたような印象もある。そこに価値があるとは言わないが、純度が高くてもただ戦っているSFアクションより余程面白く観られた、というのが僕の正直な感想なのである。
性差別はなくなってもシャワーまで一緒という羨ましい未来は来ないだろうなあ。
2008年アメリカ映画 監督エドワード・ニューマイヤー
ネタバレあり
一般SF(映画)ファンにはつまらない駄作だろうが、第2作が寧ろ一般的なスペース・オペラ・ファン用に作った狙いが外れてどの点からみてもつまらない文字通りの愚作だったのに対し、恐らく殊勝なファンに向けて作られたに違いない第1作同様の面白さがある。
連邦政府の名の下に一つに固まった人類が植民惑星で昆虫のお化けと戦うというお話は地球での巨大昆虫映画と大して変わらず何ということなく、アクション的な見せ場もVFXの出来映えも水準以下、これらの点から評価したら全く大したことのない作品である。
面白いのは未来観である。第1作は、具体的には男女が同じシャワー室にいるというバリアフリーならぬセックス(ジェンダー)フリーの男女観が、そういう世界では所謂セクハラもないだろうという考えも浮かんで、大変興味深かった。本作にも似た場面があるが、セクハラはなくもない感じで第1作ほど徹底した感じがない。
本作でもっと面白いのは“宗教化された独裁”、“独裁のような宗教”が交錯しながら進行することである。本作では、外観的に明らかにナチスのそれをパロディー化している、未来の独裁的民衆管理が出て来て、平和運動家の処刑場面やら兵隊たちの粛清が躊躇いなく行なわれている事実が描かれている。これが“宗教化された独裁”だが、独裁者はいつの時代も自分以外の宗教を認めない。
そこに絡んで出てくるのが昆虫がコントロールする宗教と人類本来の宗教である。人類本来と言っても作者故にどうしても一神教であるが、これが“独裁のような宗教”という文言に通じる。
だから戦闘アクションとして観る人には“不愉快な宗教観”ということになるだろうが、本作で一番興味深いのはこの宗教観なのである。
総じて、現在の世界情勢全体をパロディーとして見せたような印象もある。そこに価値があるとは言わないが、純度が高くてもただ戦っているSFアクションより余程面白く観られた、というのが僕の正直な感想なのである。
性差別はなくなってもシャワーまで一緒という羨ましい未来は来ないだろうなあ。
この記事へのコメント
後から考えてみれば、おっしゃる通り、パロディーというかブラックユーモアというべきかの映画でありましたね。
『宇宙の戦士』は、発表とうじから右翼的とか好戦的と言われて物議を醸していた小説で、ハイラインは、そのつもりで書いたわけではないと憮然としていたようです。
中学の時、雑誌に連載されていて面白かったですけどね。
好戦的といえば、いまの日本アニメのほとんどがあてはまりますけどね。
あまり記憶が定かでないのですが、「2」よりは面白かったような。
「1」は好きです。
ハードSFファンに割合評判の良かった第1作から・・・本来の観方からすれば邪道なのかもしれないですが・・・独特な未来観を見せる作品だなあと僕は面白がりました。評価自体は水準、当ブログ用に言えば☆☆★にしましたが。
本作のほうがもっと戯画化され変な宗教観を中心にした未来観(世界観という言葉は間違われて使われているケースが多いので嫌いです)が可笑しくてたまらなかったので、作品としては大したことないものの☆3つにしました。
>ハインライン
「異星の客」という長編(創元SF文庫)を40年前に兄の友人から貰いましたが、未だに読んでおりません^^;
>好戦的
日本のアニメが輸入されてTV放映されるようになった大昔、欧州でその暴力性・好戦性が問題になったのは有名な話ですよね。
本シリーズの2作目はお粗末千万でしたから、本作の方が面白いと思う方が圧倒的でしょうね。「1」よりつまらないと言う人も圧倒的でしょうが(僕がパロディー的に本作が一番楽しめました=笑えました)。