映画評「津軽百年食堂」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・大森一樹
ネタバレあり

舞台となる食堂の名前が大森食堂だから大森一樹が監督(兼共同脚色)に選ばれたのではあるまい(笑)が、俊英・大森監督も随分地味な扱いになりましたなあ。80年代は大森監督の名で観る映画ファンも多かったし、僕が本作を観たのは彼が監督をしていたからであるが、結論としては彼の作品の中では特に感心するほどではない。

明治42(1909)年、弘前で津軽蕎麦の屋台を営んでいた大森賢治(中田敦彦)は、青森から鰯の焼き干しを幼い娘と共に運んでくれる戦争未亡人トヨ(早織)を見染め彼女と共に食堂を始める。
 そして平成の現在、四代目に当たる陽一(藤森慎吾)は甘い考えを三代目の父親・哲夫(伊武雅刀)に咎められて以来東京でバルーン・アーティストをしてその日暮らしの生活を続けているが、父親の交通事故の為にピンチヒッターとして帰郷する。
 やがて故郷で家族や馴染みの人に再会したり、蕎麦を打つなどするうちに食堂の商売に魅力を覚え、一家が一度は諦めた“さくらまつり”への出店を決意する。

100年前の初代が食堂を始める経緯と四代目が食堂を真剣に引き継ぐ気持ちになるまでをオーヴァーラップする形で進行させたところが工夫ではあるが、その為に彼とルームシェアする新米カメラマンの筒井七海(福田沙紀)を大きく絡めたのが良し悪しで、同じ絡めるにしても彼女は明治のパートと同じようにもう少し補助的な役割に徹した方がお話のバランスが取れたように思う。

明治のパートはなるほど一代記としてバランスが取れているが、その対となるべき平成のパートがほぼ二人のバランスが拮抗して成立しているのは、明治と平成とをダブらせるという所期の目的から判断すると果たして如何なものであったか。少なくとも綺麗な対になっていないのは確かである。しかも、そのせいで彼女が亡き父親の面影を求めて思いを寄せる初老のカメラマン(大杉漣)が倒れるといったエピソードまで繰り出したり、どうも作劇に無理が出ている。

昨年三月の東北大地震直後四月上旬の公開だったらしいが、比較的被害の少なかった青森県が舞台とは言え、ご当地映画としてちょっとしみじみとさせるものはある。

おら、こんな村いやだー、東京へ出るだー。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年04月27日 04:33
サブはあくまでサブにしておかないと、おかしなことになりますね。サブがメインみたいになるのは・・・?

先日観たデイズニー生誕110年記念映画『ジョン・カーター』は、なんどもカットバックでみせて主人公がなぜ?そうなったのかを、徐々にわからせるようにして、うまかったですけどね・・・・

ただ、史上最大の大赤字とか?・・・・娯楽作品を難しくしすぎたのかな?
オカピー
2012年04月27日 10:36
ねこのひげさん、こんにちは。

>サブ
大森一樹監督は実績のある人なれば、その辺りは十分解っていると思いますが、原作故なのか、それとも大衆に迎合しようという意識が過剰に出たか。
結果としては甚だバランスを欠き、却って心を打つものを減じてしまう感ありでした。

>『ジョン・カーター』
当然(笑)まだ観ておりませんが、何となく想像できまする。
良く計算された映画が当たるとは限らないのが世の常でして、それはどの分野でも同じですわいねえ。
僕の買ったCDの中でも相当の名盤であるはずのリチャード&リンダ・トンプソン夫妻の一作もアナログで発売された当時二万枚しか売れなかったそうな。
これビートルズの「サージェント・ペッパー」(当然1位)以降に発売された重要な作品ベスト100に数えられているのですが、他の作品が数百万、場合によっては数千万ということを考えると、同じくらい価値があってもこれほどの差が出るということなんですよね。

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