映画評「SP 野望篇」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・波多野貴文
ネタバレあり

2007年11月から2008年1月にかけて三ヶ月程放映されたテレビ・サスペンスの劇場版だということでありますが、テレビ・ドラマは観ないので最初のうちは何が何だか解らない。

警視庁警備部警護課第四係の面々(即ちSP)が公衆の集まっている場で要人警護するのが第一幕で、一種の予知能力(危険察知能力と言っている人が多い)を持っている若いSP岡田准一が事前に傘を持った男が怪しいと感じ、取り押さえるまでのアクション。
 現場指導のトップが係長の堤真一、とろい松尾諭をやたらと殴る女SP真木よう子といったところが同僚、といった辺りが段々解って来る。

松尾のコメディリリーフはTVらしい配置で基本的には不要だが、目くじらを立てる程のことではあるまい。

しかるに、序盤のアクション描写において例によってカメラが必要以上に揺れるのがどうも気に入らない。
 劇映画はカメラやフレームを意識させないのが本筋であるのに対し、カメラを意識させて(ドキュメンタリーもどきで)現実的と思わせるのは寧ろ本質的に劇映画作りの逆の方法論であり、本来は邪道なのである。つまりこの手法は【第4の壁】を破る異化効果(例えば俳優が観客に向って話しかける)の応用なのだが、そこに気付いている人は少ないようだし、誰もがやっているこの手法自体を今更声を大にして批判するつもりはない。ただ、他の多くの作品同様、見にくいのが問題ということである。

さて、SPたる彼らを監視している誰かがいることから、無駄に長いプロローグに反して本作の眼目がアクションにはないらしいことが判って来る。
 最初は監視している連中が所謂“悪役”なのかと思いきや、堤らが日本を変える為に何か姦計を巡らしているのではないかと様子を探っている公安で、そしてその姦計の中心にいるのが与党幹事長の香川照之であるというところまで本作では判明、その後どうなるかは次の「革命篇」でのお楽しみということになっている。

単なる続編かと想像していたら、「革命篇」は今流行りのPART2という位置付けになるらしい。

ということで本格的に面白くなる前に終わってしまうが、TVドラマの映画版としてはなかなかハードボイルドなのが嬉しく、メロドラマに傾く傾向にある織田裕二映画の二の舞にはならないようだ。

しかし、官房長官(蛍雪次朗)護衛のシークエンスはアイデアは良いが疑問も多い。全体的に無駄が多く、本作を三分の一に圧縮して「革命篇」と繋げて一本の映画に出来ますぜ。

映画もTVも差がなくなってきたわい。というより、1910~20年代の連続活劇に先祖返りか。

この記事へのコメント

2012年06月10日 21:14
プロフェッサー、こんばんは。
この手の作品、どうにかなりませんかね。

テレビを2時間スペシャルでいいのに、劇場版としてやるのさえうんざりするのに、今時はテレビの続きを平気で金をとって劇場でみせる。

劇場版というわけではなく、単純につづきですからね・・・・。

しかも、たいていの場合、レギュラーで単純に事件を解決していたころのがおもしろい場合のが・・・・・。まあ、根底にある謎とかはそのままなんですが、そのあたりの絡め方と展開が無理に大きくしたり、いろいろと強引なんですよね・・・・。

なんだかんだいってテレビから全部みてるんですけどね。

これからも多いですよね、テレビの劇場版・・・・・。
ねこのひげ
2012年06月11日 06:43
最近、めたらやったらに長いのが多い上に、前編後編に別れた恋愛映画まで出て来たのには恐れ入ります。
おじさんとしては100分程度で解決して欲しいわ・・・・
オカピー
2012年06月11日 12:03
イエローストーンさん、こんにちは。

アメリカ映画が幼稚化、欧州映画が先鋭化している為邦画が強くなりました。
それも、TV視聴者層、TVドラマも良く見る映画ファンをターゲットにしたほうが集客力があるということで、こういうTVの映画版が大量に作られるのも時代の趨勢で仕方がないのでしょうね。
ヒットする邦画の殆どは、TVアニメかドラマの劇場版というのが実際ですから。そうでないものもTV局絡み。アメリカ映画が圧倒的に強かった僕らの青春時代とは、映画界も変わりました。

TVの脚本を書いている人が映画用に2時間のものを書くとどうしても無理が出る。
先日も申したように、僕が唯一観ている「相棒」は本当に些細な事件を描いた挿話の方に圧倒的に面白いものが多く、却ってスペシャルとか映画に期待しないことが多くなりましたよ。
映画館だから派手にしないといけないという考えは本当は違うんですがね。
オカピー
2012年06月11日 14:23
ねこのひげさん、こんにちは。

シリーズどころか、「ハリー・ポッター」みたいに最後の一挿話が前後篇になったり、「トワイライト・サーガ」の近二作もそうですね。ねこのひげさんが恋愛映画と仰っているのはこれかな?(笑)
「トワイライト・サーガ」は元来お話の連続性が高いので、二部作とカウントする必要性すら感じませんけどねえ。あれほどつまらないシリーズも滅多にないと思います(苦笑)が、人気があるんですなあ。昔両親が見ていた「花ぼうろ」とかいう3年も続いたTVドラマがあり、一向に進まぬ展開にいつになったら終わるんだい、という気にさせられたのを思い出します。

特にTV局絡みで作られる邦画の長いこと。右に同じで、嫌になっちゃいますなあ。通常の内容なら100分くらいが落ち着きが良いですね。

この記事へのトラックバック

  • 『SP 野望篇』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「SP 野望篇」□監督 波多野貴文 □原案・脚本 金城一紀 □キャスト 岡田准一、真木よう子、松尾 諭、神尾 佑、野間口 徹、香川照之、堤 真一■鑑賞日 10月30日(土.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2012-06-10 10:03
  • SP 野望篇/岡田准一、真木よう子、堤真一

    Excerpt: とても意味深なラストシーンで終わったTVドラマ版。めちゃめちゃハマっていたドラマだけに続編の含みを持たせたようなあの謎めいたラストがずっと気になってたんですよね。早くに ... Weblog: カノンな日々 racked: 2012-06-10 10:06
  • SP 野望篇

    Excerpt: 興奮とツッコミどころ満載!! Weblog: Akira's VOICE racked: 2012-06-10 10:37
  • SP 野望篇

    Excerpt: 公式サイト。波多野貴文監督、岡田准一、堤真一、香川照之、真木よう子、松尾諭、神尾佑、堀部圭亮、蛍雪次朗、山本圭、丸山智己。フジテレビの深夜番組の映画化。来春、続編の「 ... Weblog: 佐藤秀の徒然幻視録 racked: 2012-06-10 19:45
  • 『SP 野望篇』 ('10初鑑賞144・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆★- (10段階評価で 7) 11月3日(水・祝) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 12:45の回を鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2012-06-10 20:14
  • 大義のために~『SP 野望篇』

    Excerpt:  警視庁警備部警護課第四係所属のSPを描くTVシリーズの映画版続編、二部 構成の第一弾。並外れた身体能力と危険察知能力を持つSP・井上薫(岡田准 一)が、尊敬する上司・尾形(堤真一)の不審な行動に疑.. Weblog: 真紅のthinkingdays racked: 2012-06-10 20:42
  • 『SP 野望篇』(岡田准一、堤真一共演、2部作の前篇)

    Excerpt: ----これって、またまたTVドラマの映画化だね。 「うん。監督の波多野貴文も劇場映画は初だというし、 正直言ってあまり期待はしていなかったんだ。 ところが、冒頭の襲撃未遂に続いて起こるフリーランニン.. Weblog: ラムの大通り racked: 2012-06-10 23:03
  • SP 野望篇

    Excerpt: 危険察知の特殊能力をもつ主人公のSPとその仲間たちの活躍を描いた「SP 警視庁警備部警護課第四係」の映画版第1弾。主演の岡田准一はこのために2年に渡って格闘技の訓練を積んだという。堤真一、真木よう子、.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2012-06-11 00:08
  • No.224 SP 野望篇

    Excerpt: 【ストーリー】 TVドラマ「SP」の劇場版2部作の前編。直木賞作家の金城一紀が原案と脚本を担当し、「エイリアン2」「ターミネーター2」でVFXを手がけたロバート・スコタックがスーパ ... Weblog: 気ままな映画生活 racked: 2012-06-17 22:30
  • SP 野望篇

    Excerpt: 特殊能力を持つ主人公のSPやその仲間たちが、テロリストたちと戦う姿を描いたテレビドラマ「SP(エスピー) 警視庁警備部警護課第四係」の劇場版。監督は 波多野貴文、キャストは岡田准一、堤真一、真木よう子.. Weblog: Yuhiの読書日記+α racked: 2013-09-02 23:35