映画評「モールス」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督マット・リーヴズ
ネタバレあり
リメイクのスパンは理想的には30年くらいと思うが、ネタ不足・才人(脚本家)不足著しいハリウッドはなりふり構わずシリーズとリメイクとヒット作のフォロウィング作品を作っている。特に、字幕を読むのを面倒臭がって外国映画をまず観ないアメリカ大衆の性向を利用して外国映画をリメイクするスパンは極端に短くなっている。
僕個人の鑑賞記録から言えば「ロシアン・ルーレット」を見るスパンは4年近くあったからまだ良いが、本作に至ってはオリジナル「ぼくのエリ 200歳の少女」を見て8カ月に満たない。マット・リーヴズによる本リメイクは、アメリカ製としてはぐっと静謐なムードが奏功してなかなか秀逸な出来映えになっているが、何しろ記憶も新しい為に物語への感興が生まれないのはお気の毒と言うしかない。
殺人事件が続発する街で、いじめられっ子の少年コディ・スミット=マクフィーが隣に引っ越して来た同年代自称12歳の少女クロエ・グレース・モレッツと孤独という同病を相憐れむように親しくなり、彼女からいじめっ子に逆襲する勇気を与えられるが、彼女の父親と思しき中年男性リチャード・ジェンキンズの自殺未遂と墜落死の後、血兄弟の交わりを結ぼうとした時に彼女が吸血鬼であると知ってしまう。一連の事件を嗅ぎまわる警官イライアス・コーティーズを殺した彼女は、一度どこへともなく去っていった後、いじめっ子グループにコディ少年が襲撃されるや瞬時に舞い戻って掃討、今度は二人で旅立って行く。
オリジナルとお話の骨子に違いはなく、ムードも恐怖映画度を多少増した程度でほぼ踏襲しているが、中年男性ジェンキンズがかつてコディ君と同じような少年であり、いずれコディ君も中年になって同じように切ない最期を迎えるのだろうという余韻が原版ほど巧く醸成できていない。それは彼女が年を取らないことを強調しない代わりにジェンキンズの少年時代を写真で見せるという手法でそのことを露骨に表現し、オリジナルのようにそのことを行間から想像する余地を奪っているからである。オリジナルに写真点出があったとしたら僕の勘違いなので申し訳ないが、いずれにしても説明しない部分の使い方、余韻醸成で劣るのは間違いない。
それ以外はなかなかきちんとしたリメイクで、かかるユニークなお話を自国の脚本家ないし原作から発掘できないハリウッドには失望が募るばかり。
一度成功したお話には金を“掛ける”が、新たなお話には“賭けない”ハリウッド首脳陣、てなとこかな。フロンティア精神を失ったもんだなあ。
2010年アメリカ映画 監督マット・リーヴズ
ネタバレあり
リメイクのスパンは理想的には30年くらいと思うが、ネタ不足・才人(脚本家)不足著しいハリウッドはなりふり構わずシリーズとリメイクとヒット作のフォロウィング作品を作っている。特に、字幕を読むのを面倒臭がって外国映画をまず観ないアメリカ大衆の性向を利用して外国映画をリメイクするスパンは極端に短くなっている。
僕個人の鑑賞記録から言えば「ロシアン・ルーレット」を見るスパンは4年近くあったからまだ良いが、本作に至ってはオリジナル「ぼくのエリ 200歳の少女」を見て8カ月に満たない。マット・リーヴズによる本リメイクは、アメリカ製としてはぐっと静謐なムードが奏功してなかなか秀逸な出来映えになっているが、何しろ記憶も新しい為に物語への感興が生まれないのはお気の毒と言うしかない。
殺人事件が続発する街で、いじめられっ子の少年コディ・スミット=マクフィーが隣に引っ越して来た同年代自称12歳の少女クロエ・グレース・モレッツと孤独という同病を相憐れむように親しくなり、彼女からいじめっ子に逆襲する勇気を与えられるが、彼女の父親と思しき中年男性リチャード・ジェンキンズの自殺未遂と墜落死の後、血兄弟の交わりを結ぼうとした時に彼女が吸血鬼であると知ってしまう。一連の事件を嗅ぎまわる警官イライアス・コーティーズを殺した彼女は、一度どこへともなく去っていった後、いじめっ子グループにコディ少年が襲撃されるや瞬時に舞い戻って掃討、今度は二人で旅立って行く。
オリジナルとお話の骨子に違いはなく、ムードも恐怖映画度を多少増した程度でほぼ踏襲しているが、中年男性ジェンキンズがかつてコディ君と同じような少年であり、いずれコディ君も中年になって同じように切ない最期を迎えるのだろうという余韻が原版ほど巧く醸成できていない。それは彼女が年を取らないことを強調しない代わりにジェンキンズの少年時代を写真で見せるという手法でそのことを露骨に表現し、オリジナルのようにそのことを行間から想像する余地を奪っているからである。オリジナルに写真点出があったとしたら僕の勘違いなので申し訳ないが、いずれにしても説明しない部分の使い方、余韻醸成で劣るのは間違いない。
それ以外はなかなかきちんとしたリメイクで、かかるユニークなお話を自国の脚本家ないし原作から発掘できないハリウッドには失望が募るばかり。
一度成功したお話には金を“掛ける”が、新たなお話には“賭けない”ハリウッド首脳陣、てなとこかな。フロンティア精神を失ったもんだなあ。
この記事へのコメント
福留がホワイトソックスから戦力外通告を受けたそうで、大リーグも厳しいでありますな~
戦力外通告をしてやりたくなるハリウッド映画も多いですがね。
『踊る走査線ファイナル』。テレビのCM見ると、青島刑事一発の銃声でバッタリ・・・・またかよ~(~o~)
今月はシリーズ、リメイクが結構多い。
ここ十数年そんな感じで推移していますが、特にお話の続くシリーズ(シリアル)が多くなっているのは迷惑ですなあ。一度観たら最後まで観たくなるのが映画ファンの性(さが)ですからねえ。話が不連続ならスキップもいいやってなことになりますが。
>福留
イチローや松井と違って春先は良くて夏場に持たなくて控えに回るというパターンでしたが、今年から春先からダメだったようで。
若ければ福留程度の実績があれば簡単に戦力外通告しませんが、三十も少し過ぎますと大リーグはシビア。松井も今月中に二割、来月中に二割五分くらい行かないと首が危ない気がしますね。若しくは一月にホームランを6~7本打つとか。
>『踊る走査線ファイナル』
厳密には、“捜査線”ですね(笑)。パソコンが阿呆だから走査線って出るんですよネエ、困ったもんです(笑)。しかしTV番組だから“走査線”で丁度良いや。
TVの映画版で気に入らいないのはタイトルが長いこと。「相棒」も最初のは結構長かったなあ。
しかも「劇場版・・・」とか「映画・・・」とか付くのが煩わしい。あいうえお順に並べる時に「劇場版」を外して考えるべきかいなか、それが問題になっているんですよ、本館のリメイク・リストでTT