映画評「台風騒動記」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1956年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

山本薩夫監督は1960年代半ばくらいから社会派大作が多くなり、社会派と言いながら娯楽性を伴っていた為興行成績も良かったようで、コンスタントに作品を任されるという、戦前・戦中から映画を作っていた巨匠としては珍しい晩年を送っている。それまでは「戦争と平和」(1947年)など社会派タイプの作品を作る一方「忍びの者」などなかなか多彩な作品を撮っていて、1956年に作られた本作は社会派であると同時にコメディーである為彼の二つの面が同時に見られて興味深い。

原作は杉浦明平のルポ「台風十三号始末記」。

台風一過したふぐ江町、町議会はほぼ無事に残った小学校木造校舎をわざわざ壊して、国からの補助金でコンクリート校舎を建てることで意見が一致、町長・渡辺篤はこれで銅像が建つと期待し、ゼネコン業者と癒着している実力者議員・三島雅夫はこれで懐をさらに肥やそうと企む。そこへ背広を着て現れた佐田啓二氏が、教員・菅原謙二の友人に過ぎない失業者なのに大蔵省の監察官と勘違いされ、芸者を交える大接待を受けるが、その頃本物が町に現れて町議会と学校関係者は大慌て。

構成がなかなかよろしく、シチュエーション・コメディーでは一番重要な要素たる“誤解”を使って物語を始め、戦前・戦中同様に共産主義者を敵視して取り締まっている警官・多々良純(役名が赤桐=赤切りというのが可笑しい)を狂言回しに進行、その過程で銅像を建てて後世に名を残したい町長と業者との癒着が露骨に扱われる議員氏を筆頭に、為政者が町民ではなく自らの功名心や私腹を肥やす為だけに懸命に働く姿を描いて大いに笑わせる。

しかし、この様相は、3・11以降の日本国にも確認される部分があり、笑うどころが嘆かわしくなって来る。仮に2014年に消費税を増やしてもゼネコンが喜ぶような施策にお金が回る気配が濃厚、色々な説があるにしても数年後に国債購入に回される預貯金が干上がって日本が沈没する公算が大。
 実際はどの程度のものになるか知らないが、新聞に広告を出している書物の著者によれば世界でも殆ど例のないハイパーインフレになるそうな。「売らんかな」が見え透いているのでとても信用できないが、終戦時以上のインフレが起こる可能性がないとは言い切れない。外国の国公債を買っている僕は日本の国債の価値が下がり或る程度の円安になるところまでは歓迎だが、極端なインフレになっては意味がなくなるどころか、首を吊る羽目になる。インフレに強いのは現物、中でも金(きん)だが、なかなか買う気になれない。

閑話休題。

半世紀前に為政者は町民果ては国民の為にならない、情けない存在であることを強く訴えた勇気やよし。早ければ良いということはないが、ゼネコン業者と為政者の癒着を1956年に指摘したのも先見の明ありといったところ。

反面、映画の一本や二本では為政者は変わらないことがよく解り、勉強になりました。

国債暴落説自体が役人の財産税導入への布石という説もあり、実際の世の中は本作より複雑怪奇。サブプライム問題→リーマン・ショックも陰謀らしいし。自分だけが可愛い人々・・・嫌になっちまうねえ。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年08月08日 05:09
これも昔、NHKで観た記憶がありますね~「忍びの者」も観た記憶があります。
最近、地上波でも映画復活の兆しが見えてます。
福くんやリリコさんが紹介してますが・・・・
いいのやら悪いのやら・・・・見せかたを工夫をしてくれるとうれしいですが。

結局、役人というのは大昔から変わらんということでありましょうな~
オカピー
2012年08月08日 21:13
ねこのひげさん、こんにちは。

「忍びの者」は観たことがありますが、これは初めてでした。
大作に移行する(?)前の山本監督の代表作と目されているのを知ってからはTVでは出なかったようです。
多分銀座の並木座辺りでたまに観られたかもしれませんが、迂闊にも目に入らなかったのかなあ^^;

>地上波
私見では、変な解説を入れるなら、その分長く放映して欲しいなあと思います。この間の「八日目の蝉」を観て、誉めるにしても貶すにしても、下手な感想を書かれたら作者が余りにも可哀想すぎます。

>役人
官僚が首相や大臣より実権を握っている国ですから。その点は政権と共に官僚トップが総入れ替えになるアメリカの大統領制の方が理想的なんですがねえ。
2012年08月21日 15:23
オカピーさま

遅ればせながら、我家もやっとBSが観られるようになりました。
大手のレンタルショップにもない観たい映画が次々と放映予定!
近所のビデオ屋さんでは、なるほど、旧作が100円にプライスダウンするわけだと納得しました。
「台風騒動記」も録画してかなり気に入ってしまったため、消去できずにいます。予想外にも、外部媒体の録画時間が45時間ではたりなかったようです。。。
オカピー
2012年08月21日 22:12
樹衣子さん、こんにちは。

>BS
おめでとうございます。
宝の山でしょう?
1990年代はもっと凄いラインアップで、ビデオに録りまくりでした。
再放映があるものは直接HDDからブルーレイに落としていますが、なかなかやってくれないのは画質が悪いもののブルーレイ(一枚当たり12~16本くらいの映画が入ります)に落として、ビデオを捨てています。

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