映画評「雲の上団五郎一座」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1962年日本映画 監督・青柳信雄
ネタバレあり
なるほど今はお笑いタレントばかりで、喜劇役者がいないのだ。お笑いタレントが映画に出演しても喜劇でなかったり、お笑い的であっても本人独自の芸で見せるケースに当たったためしがない。
どさ回りが続く雲の上団五郎(榎本健一)一座が現在興行を続けている場所で、妾に手を出したとヤクザに団員二名即ち三木のり平と八波むと志が追われて一座が破壊された為団長は二人を追い出す。
四国へ旅に出た一座は、船上で若い理論派の演出家フランキー堺と出会い、彼と示し合せた興行主・花菱アチャコの娘・水谷良重の作戦で、四国ではそこそこ知られた劇場で興行をすることになるが、余りの出鱈目ぶりに興行主はショックで倒れてしまう。
西部劇に邦楽が掛かるのだからその気持ちも解るが、この可笑しさは実際に観るに如くはない。実際にはその出鱈目ぶりは有名な喜劇役者たちならではの見事に統制された呼吸により成り立っているわけである。ややこしいですな。
フランキー堺の見せ場は演出家が自ら演ずることになった「勧進帳」の弁慶の出鱈目な台詞を繰り出す箇所。加えて音楽が途中でジャズに変わるのはドラマーだった彼のアイデンティティーを意識したものなのは「幕末太陽傳」(1957年)に同じ。
劇中劇が全体の三分の二くらい占める中でハイライトと言うべきは、恐らく多くの方がそう思われるに違いないが、復帰した三木と八波が繰り広げる「切られ与三郎(与話情浮名横櫛)」である。呼吸がここほど見事に効果を発揮する喜劇場面は演劇ではともかく、日本映画ではなかなか見当たらない。それくらい見事である。最後を飾る「カルメン」はそれに比べると大分落ちる。
お話は前後するが、一座の真面目にやっているのに可笑しいところを理解した大阪の大劇場主・高島忠夫が花菱に物凄い額を提示して劇団を引き抜き、めでたしめでたし。
日本の喜劇人はこの辺りまでの方が可笑しかったのではないかと再確認した次第だが、惜しむらくは可笑しい若しくは面白いのは殆ど劇中劇の部分であることで、これでは舞台のライブ収録を観ているのに等しい感じがする。劇映画としての面白さという点では疑問を残す。
原作は「君の名は」で知られる菊田一夫。監督は青柳信雄。
古臭いようで新鮮でした。
1962年日本映画 監督・青柳信雄
ネタバレあり
なるほど今はお笑いタレントばかりで、喜劇役者がいないのだ。お笑いタレントが映画に出演しても喜劇でなかったり、お笑い的であっても本人独自の芸で見せるケースに当たったためしがない。
どさ回りが続く雲の上団五郎(榎本健一)一座が現在興行を続けている場所で、妾に手を出したとヤクザに団員二名即ち三木のり平と八波むと志が追われて一座が破壊された為団長は二人を追い出す。
四国へ旅に出た一座は、船上で若い理論派の演出家フランキー堺と出会い、彼と示し合せた興行主・花菱アチャコの娘・水谷良重の作戦で、四国ではそこそこ知られた劇場で興行をすることになるが、余りの出鱈目ぶりに興行主はショックで倒れてしまう。
西部劇に邦楽が掛かるのだからその気持ちも解るが、この可笑しさは実際に観るに如くはない。実際にはその出鱈目ぶりは有名な喜劇役者たちならではの見事に統制された呼吸により成り立っているわけである。ややこしいですな。
フランキー堺の見せ場は演出家が自ら演ずることになった「勧進帳」の弁慶の出鱈目な台詞を繰り出す箇所。加えて音楽が途中でジャズに変わるのはドラマーだった彼のアイデンティティーを意識したものなのは「幕末太陽傳」(1957年)に同じ。
劇中劇が全体の三分の二くらい占める中でハイライトと言うべきは、恐らく多くの方がそう思われるに違いないが、復帰した三木と八波が繰り広げる「切られ与三郎(与話情浮名横櫛)」である。呼吸がここほど見事に効果を発揮する喜劇場面は演劇ではともかく、日本映画ではなかなか見当たらない。それくらい見事である。最後を飾る「カルメン」はそれに比べると大分落ちる。
お話は前後するが、一座の真面目にやっているのに可笑しいところを理解した大阪の大劇場主・高島忠夫が花菱に物凄い額を提示して劇団を引き抜き、めでたしめでたし。
日本の喜劇人はこの辺りまでの方が可笑しかったのではないかと再確認した次第だが、惜しむらくは可笑しい若しくは面白いのは殆ど劇中劇の部分であることで、これでは舞台のライブ収録を観ているのに等しい感じがする。劇映画としての面白さという点では疑問を残す。
原作は「君の名は」で知られる菊田一夫。監督は青柳信雄。
古臭いようで新鮮でした。
この記事へのコメント
この映画もNHKで・・・(^^ゞ
しかし、菊池寛とは知りませんでした。というか忘れていたんでしょうね。
エンタツアチャコの映画で記憶に残っているのは、女性とデートしたアチャコが通天閣に登り彼女が風で飛ばしたハンカチが尖塔の先に引っかかったのを取りに行き、大騒ぎになるという場面を覚えてます。
それが元でめでたく結婚するというたわいない話でしたが、それが、何の映画だったか・・・・忘れてしまいましたけどね(~o~)
子供心に、すごくおもしろかった印象だけは残っています。
「8時だヨ全員集合」が演劇的要素のあるお笑い番組の最後でしたかねえ。1971年に第一期が終るとともに見なくなりました。並行して観ていた映画の方が面白くなったんですよね。
出演作を当たってみると、「アチャコ青春手帖 大阪編」というのがそんなお話であっても不思議ではない気がしますが、よく解りませんなあ。
通天閣がでていたからその映画かもしれません。
1962年だと、正月にじいさんばあさんに連れられて観に行ったのかな~?
なんせ、オフクロは、洋画しか観ない人でしたから・・・・(~_~;)
今世紀に入るまで映画好きと言われる人種は、概して洋画が好きでして、僕も高校までは邦画は観ませんでしたし、高校の途中ぐらいから観るようになったと言っても、有名な監督やキネマ旬報のベスト10などを参考にして取捨選択をしていましたから、通俗的な喜劇映画は殆ど観ていないですね。「寅さん」は別格的に上手いので観ていましたが、「釣りバカ」は第一作だけ観て後は観ていません。山田洋次が多少絡んでいても、やはりあのカット割りの技術と呼吸なしには観たい気が起こらない。
うちの母は結婚してからTVを別にすると映画を見たことがないのではないかなあ。TVを買うまで映画館に足を運んでいたらしい父は、TVを買った途端に映画館へは行かなくなったようです。