映画評「5デイズ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督レニー・ハーリン
ネタバレあり
凡そ半世紀前に「五月の七日間」という秀作があったが、「5デイズ」などという恐怖映画みたいなチャチな邦題になってしまったこちらは原題「八月の五日間」若しくは「五日間の戦争(戦争の五日間)」。
と聞いてピンと来る人は相当国際情勢にお詳しい。ご想像の通り2008年8月に起きたグルジア南部にある南オセチア独立を巡って独立を阻止したいグルジア軍とオセチア軍(=ロシア軍)との闘いを、恋人をイラクで失った経験を持つジャーナリスト、ルパート・フレンドの視点で描いたものである。
カメラマンをする友人リチャード・コイルと共に同地には行った彼は、グルジア人一家の結婚式を撮影している最中に突然ロシア軍の空爆にさらされる。二人は花嫁の姉エマニュエル・シュリークィが妹と父を探すのを手伝い、再会して喜び合うのも束の間、オセチア軍の掃討作戦から逃げ回った挙句に捕まり、攻撃の証拠映像を収録したメモリーカードを巡って一家や自分たちの命を賭けた駆け引きを繰り広げる羽目になる。
実は交戦が始まった2008年8月8日は北京オリンピック開幕式が行なわれている最中で、小さく報道されたわけだが、僕は僅かに記憶がある。南オセチアという自治国名を憶えたのもこの時であったと思う。
この映画はグルジアが資本を提供しているので、グルジア中心に事が進行するが、少なくとも見た目はグルジアのプロパガンダ映画ではなく、戦場ジャーナリストに敬意を払う形になっている。グルジア軍人も人の心は持っているよという描写を挟んだことを含めて、恐らくおためごかしであろうが、そう見えない以上ノンポリを標榜する僕は本作をその面から批評する気はない。
実話を基にしていると言われているが、それは戦争の経緯や被害その他であって、ジャーナリストと軍人との間でメモリーカードを巡ってこんな駆け引きがあったとは思えない。しかし、グルジア人一家と行動を共にしている二人がオセチア軍から逃げ回る一連のシークエンスや捕えられてからの駆け引きにおけるサスペンス等娯楽映画的になかなか楽しめる。戦闘場面のおける迫力も実物を使ったと言われるだけのことはある。
最終的に戦場ジャーナリストは頑張っているという感慨は持てるので、ノンポリの方にはお薦め。政治的角度で見たい方はご遠慮ください。
要は独立阻止に働く方が第三者的には悪者に映るわけで、本作では通常の映画鑑賞感覚では応援すべきグルジアが悪党に見える位置にあるが、チェチェンを独立させないロシアは勿論その他の国々も他国のことは言えない。結局利権が絡む土地はどこの国も手放しはしない。
先日亡くなった山本美香さんは日本人ジャーナリストと知った政府軍により意図的に狙われたものである。流れ弾でも何でもない。悔しいね。
ジョン・レノン曰く、Imagine no possessions!
2011年アメリカ映画 監督レニー・ハーリン
ネタバレあり
凡そ半世紀前に「五月の七日間」という秀作があったが、「5デイズ」などという恐怖映画みたいなチャチな邦題になってしまったこちらは原題「八月の五日間」若しくは「五日間の戦争(戦争の五日間)」。
と聞いてピンと来る人は相当国際情勢にお詳しい。ご想像の通り2008年8月に起きたグルジア南部にある南オセチア独立を巡って独立を阻止したいグルジア軍とオセチア軍(=ロシア軍)との闘いを、恋人をイラクで失った経験を持つジャーナリスト、ルパート・フレンドの視点で描いたものである。
カメラマンをする友人リチャード・コイルと共に同地には行った彼は、グルジア人一家の結婚式を撮影している最中に突然ロシア軍の空爆にさらされる。二人は花嫁の姉エマニュエル・シュリークィが妹と父を探すのを手伝い、再会して喜び合うのも束の間、オセチア軍の掃討作戦から逃げ回った挙句に捕まり、攻撃の証拠映像を収録したメモリーカードを巡って一家や自分たちの命を賭けた駆け引きを繰り広げる羽目になる。
実は交戦が始まった2008年8月8日は北京オリンピック開幕式が行なわれている最中で、小さく報道されたわけだが、僕は僅かに記憶がある。南オセチアという自治国名を憶えたのもこの時であったと思う。
この映画はグルジアが資本を提供しているので、グルジア中心に事が進行するが、少なくとも見た目はグルジアのプロパガンダ映画ではなく、戦場ジャーナリストに敬意を払う形になっている。グルジア軍人も人の心は持っているよという描写を挟んだことを含めて、恐らくおためごかしであろうが、そう見えない以上ノンポリを標榜する僕は本作をその面から批評する気はない。
実話を基にしていると言われているが、それは戦争の経緯や被害その他であって、ジャーナリストと軍人との間でメモリーカードを巡ってこんな駆け引きがあったとは思えない。しかし、グルジア人一家と行動を共にしている二人がオセチア軍から逃げ回る一連のシークエンスや捕えられてからの駆け引きにおけるサスペンス等娯楽映画的になかなか楽しめる。戦闘場面のおける迫力も実物を使ったと言われるだけのことはある。
最終的に戦場ジャーナリストは頑張っているという感慨は持てるので、ノンポリの方にはお薦め。政治的角度で見たい方はご遠慮ください。
要は独立阻止に働く方が第三者的には悪者に映るわけで、本作では通常の映画鑑賞感覚では応援すべきグルジアが悪党に見える位置にあるが、チェチェンを独立させないロシアは勿論その他の国々も他国のことは言えない。結局利権が絡む土地はどこの国も手放しはしない。
先日亡くなった山本美香さんは日本人ジャーナリストと知った政府軍により意図的に狙われたものである。流れ弾でも何でもない。悔しいね。
ジョン・レノン曰く、Imagine no possessions!
この記事へのコメント
オリンピックの最中になんてことを・・・と思いました。
筒井康隆さんの短編で『8月の戦争』というのがあり、8月1日から31日までの日付を書いて、その日に起きた戦争の名前を書いただけでしたが、1日から31日まで、戦争がなかった日はないんです・・・衝撃です。
イマジンのような日が来ることがあるのですかね(~_~;)
>『8月の戦争』
興味深い着想ですね。人類が生まれて戦争がなかった時はないのでしょう。
>イマジン
ジョン・レノンは、国境と戦争の前提である人間の所有欲がなくなる可能性があるとは毫も思っていなかったでしょう。
2050年頃になると手術で犯罪をなくすことはできると言われていますので、人類全員に手術を施せば戦争はなくなるでしょうが、それこそありえませんね^^;