映画評「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ルパート・ワイアット
ネタバレあり
ティム・バートンもリメイクなど作らずに、昨今流行りのビギニングものを作れば良かったのだろうが、2001年当時ではCGが進歩したと言っても動物を本物らしく見せかつ動かす技術がまだ足りず、仮にそういう着想があったとしても実現しなかったに違いない。
お話は単純至極、僕らが子供時代に大いに驚いた「猿の惑星」(状態)がどうして発生したかこれだけである。もう少し具体的に行きましょう。
その名もジェネシスという製薬会社でアルツハイマー治療薬の実験台にされていた雌のチンパンジーが暴れた為に射殺されるが、その後に子供が残される。薬の研究を任されていた科学者ジェームズ・フランコは脳の劣化著しい父親ジョン・リスゴーを治す為に密かに研究を続ける一方、その子チンパンジーを引き取ってシーザーと名付ける。知能を著しく向上させる効果もある薬を投与されていた母親からの遺伝で部分的に人間以上の知能を持つようになったシーザーは、リスゴーを救おうと隣人を痛め付けた為霊長類管理施設に送られ、そこの飼育係トム・フェルトンに嫌がらせを受けた為に人間に復讐しようと思い始める。
彼を人間嫌いにした理由にはもう一つあり、会いに来たフランコが「引き取るから」と言いつつ帰ってしまったことである。家に帰りたいと思い描いた円を彼が消す場面の悲しいこと!
夜になると檻から出て、お菓子作戦で施設で飼われている猿たち全員を仲間に付け、飼育員たちを倒して外に出、町をパニックに陥れる。
本作には二本の軸があり、一つの軸がここまで述べて来たことである。
ここについて言えば、モーション・キャプチャーと進化したCGの合作による素晴らしい視覚効果に尽きると言うしかない。動きや質感は言うまでもなく、実写との合成のレベルが頗る高い。CGのレベルを云々する時にそれと気付かないまま合成について触れている鑑賞者が少なからずいらっしゃるが、その手の不満がまず生じないレベルである。但し、完全な実写に見えるかと言うと、さすがにそこまでは行かず。
本作のもう一つの軸は何故人類が滅亡寸前にまで追い込まれたか。こちらは実にさりげなく扱われ、治験するチンパンジーに新薬を投与する際に一人の研究者が気体状の薬を浴びて新しい感染症を発症、パイロットたるフランコの隣人に菌を吐きかけてしまう。トータルで数分に満たない短い描写に過ぎないが、一つの実験が40年以上も前に僕らを興奮させた「猿の惑星」の発端だったという次第。
エンディング・ロールを除くと100分弱という誠にコンパクトな仕上がりで、こう端的に、一種呆気ない程に、解らせてくれるとは、見事に驚きましたなあ。脚本のリック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー、監督ロバート・ワイアットはお手柄と言うべし。
日本のTV局がリードする作品が内容を問わず概して大量の無駄を含んで2時間を超えるのと対照的に、ハリウッドでは一部の超大作との住み分けが上手く進み、短尺の映画が増えている。現在のアメリカ映画には不満を覚える部分が多い中で、これだけは20年前より改善されていると言って良いかもしれない。
高校時代、文化祭の為に映画ポスターのパロディーを色々考えた中に「猿のは臭(くせ)い」というのがあったが、没になったのは言うまでもない。
2011年アメリカ映画 監督ルパート・ワイアット
ネタバレあり
ティム・バートンもリメイクなど作らずに、昨今流行りのビギニングものを作れば良かったのだろうが、2001年当時ではCGが進歩したと言っても動物を本物らしく見せかつ動かす技術がまだ足りず、仮にそういう着想があったとしても実現しなかったに違いない。
お話は単純至極、僕らが子供時代に大いに驚いた「猿の惑星」(状態)がどうして発生したかこれだけである。もう少し具体的に行きましょう。
その名もジェネシスという製薬会社でアルツハイマー治療薬の実験台にされていた雌のチンパンジーが暴れた為に射殺されるが、その後に子供が残される。薬の研究を任されていた科学者ジェームズ・フランコは脳の劣化著しい父親ジョン・リスゴーを治す為に密かに研究を続ける一方、その子チンパンジーを引き取ってシーザーと名付ける。知能を著しく向上させる効果もある薬を投与されていた母親からの遺伝で部分的に人間以上の知能を持つようになったシーザーは、リスゴーを救おうと隣人を痛め付けた為霊長類管理施設に送られ、そこの飼育係トム・フェルトンに嫌がらせを受けた為に人間に復讐しようと思い始める。
彼を人間嫌いにした理由にはもう一つあり、会いに来たフランコが「引き取るから」と言いつつ帰ってしまったことである。家に帰りたいと思い描いた円を彼が消す場面の悲しいこと!
夜になると檻から出て、お菓子作戦で施設で飼われている猿たち全員を仲間に付け、飼育員たちを倒して外に出、町をパニックに陥れる。
本作には二本の軸があり、一つの軸がここまで述べて来たことである。
ここについて言えば、モーション・キャプチャーと進化したCGの合作による素晴らしい視覚効果に尽きると言うしかない。動きや質感は言うまでもなく、実写との合成のレベルが頗る高い。CGのレベルを云々する時にそれと気付かないまま合成について触れている鑑賞者が少なからずいらっしゃるが、その手の不満がまず生じないレベルである。但し、完全な実写に見えるかと言うと、さすがにそこまでは行かず。
本作のもう一つの軸は何故人類が滅亡寸前にまで追い込まれたか。こちらは実にさりげなく扱われ、治験するチンパンジーに新薬を投与する際に一人の研究者が気体状の薬を浴びて新しい感染症を発症、パイロットたるフランコの隣人に菌を吐きかけてしまう。トータルで数分に満たない短い描写に過ぎないが、一つの実験が40年以上も前に僕らを興奮させた「猿の惑星」の発端だったという次第。
エンディング・ロールを除くと100分弱という誠にコンパクトな仕上がりで、こう端的に、一種呆気ない程に、解らせてくれるとは、見事に驚きましたなあ。脚本のリック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー、監督ロバート・ワイアットはお手柄と言うべし。
日本のTV局がリードする作品が内容を問わず概して大量の無駄を含んで2時間を超えるのと対照的に、ハリウッドでは一部の超大作との住み分けが上手く進み、短尺の映画が増えている。現在のアメリカ映画には不満を覚える部分が多い中で、これだけは20年前より改善されていると言って良いかもしれない。
高校時代、文化祭の為に映画ポスターのパロディーを色々考えた中に「猿のは臭(くせ)い」というのがあったが、没になったのは言うまでもない。
この記事へのコメント
NHKの番組で、ゴリラやチンパンジーなどの霊長類が、なぜ人間になれなかったかというのを以前見たことがありますが、頭蓋骨の形や作りが脳の発達を妨げているんだそうで、だから、絶対になれないということらしいです。
人間とゴリラでは、遺伝子のひとつが違うだけなんだそうですけどね。
そのわりには、ゴリラ以下の人間のなんと多いことか・・・
むだに2時間を超える映画はやめて欲しいですね。長ければ大作だと思っているようで・・・・
『海猿』・・・・ついに原作者が、二度とフジテレビには作らせないと怒っているそうです。
勝手に『海猿』関係の本を出版したり、事前の連絡もなしに突撃取材と称して仕事場に押し掛けたりで、抗議しても謝りもしないそうで・・・・
>科学的根拠
そうですね。
子供が残される経緯や、薬の効果が人間とチンパンジーでは違うといった辺り、若干疑問がないわけではないです。
しかし、作劇のスピード感がそういう疑問を凌駕していたような気がしますね。
進化は突然変異とも言われていますし、進化が人間を立てるようにし、立てたことがさらに脳を発達させる要因となったと言われていますね。
他の類人猿も立てますが、何か突拍子もない偶然が起こらない限り現在の類人猿が人間のようにはならないでしょう。
ごくありきたりのロマンスが2時間を軽く超えるに至っては、何を考えているのか、と思ってしまいますね。
>「海猿」
ほぉっ、そうですか。
少なくとももう映画版は結構なので、朗報かな(笑)。
いつもTB、ありがとうございますm(__)m
ただ、今回は何度かTB試みましたが、繁栄しませんでした。
URLに残しておきますねm(__)m
最近webryが調子が悪いんですよ。
わざわざ済みませんでした。