映画評「ヤング≒アダルト」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ジェースン・ライトマン
ネタバレあり

監督をしたジェースン・ライトマンについてはデビュー作「サンキュー・スモーキング」から既に親父アイヴァンを遥かに上回る才能と感じた。その後の作品もなかなか優れていて、僕の勘もまんざら外れてはいないようでありますが、「JUNO/ジュノ」と同様ディアブロ・コディの脚本を映画化した本作は、意外と綺麗にまとまりすぎているのが逆効果で、前回コンビ作に少々及ばない感じ。

一般的に、アメリカの高校では金髪のチアリーダー(タイプ)がプロム・クイーン・タイプ即ち最も異性に人気のある女生徒になりやすいらしい。
 そんな彼女らも最終的には地元で平凡な奥様に落ち着くのが普通の人生行路。対して、本作の主人公37歳の美人シャーリーズ・セロンは田舎町を出て、ゴーストライターとは言え人気番組の原作を書き、男性にはチヤホヤされ外面的には恵まれた人生を送っているのだが、20年近く前の恋人パトリック・ウィルスンから生まれたばかりの赤ん坊の写真を送られて自分の不幸に思い至り、何を勘違いしたか冴えない田舎町の故郷に帰る。
 しかるに、寄りを戻そうと迫る相手は結局振り向いてくれず、幸福を得ようとあくせくしている姿に町民からは寧ろ同情される始末で、高校時代にゲイ疑惑で苛められて障害者になった太っちょ青年パットン・オズワルトに同病相憐れむかの如く慰めて貰うしかない。彼の妹コレット・ウルフから「あなたは皆の憧れであり、この街には何もない」と言われたことが思いがけぬ励みとなり、元いた都会が自分の居るべき場所であることを確認、人生を巻き直す気になる。

お話のタイプとしてはよくある自分探しであるが、コディ女史らしくひねくれたアングルを二つ付けたことがお話の妙味を生み出している。
 即ち、一つは高飛車で同性からひどく嫌われるタイプの女性を主人公にしたこと。それが終盤で素直に年下女性に認められることで自信を取り戻して一皮むけるという幕切れに繋がっている。
 もう一つは、一般的に冴えない街に生まれ育った若者にとって街を出ることが一種の憧憬である点を逆手に取っていること。かくして、平凡な現状に満足しきっている男とやり直そうとしている馬鹿らしさに気付いていないヒロインの勘違いぶりにより“真面目なドタバタ・コメディー”という性格を作り出した点が殊勲と言うべし。

洒落た邦題と一応誉めておきます。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年01月23日 06:37
これを考えた人に拍手でありますね。最近は適当なのや原題をそのままカタカナにしたタイトルが多いですからね。
田舎で美人でも、ハリウッドには、ウェイトレスでも、目の覚めるような美人がゾロゾロいますからね。
たぶん、みんな女優を目指しているんだろうな~と眺めたことがあります。
そこからのし上がっていくのは大変で。
オカピー
2013年01月23日 19:08
ねこのひげさん、こんにちは。

典型的なチアリーダー・タイプのシャーリーズ・セロンの起用も当って、なかなかブラックでもある真面目なコメディーになっていると思います。
しかし、6点とそう誉めているわけでもない僕がこんなことを言ってはなんですが、本国では意外と評判がよろしくないよう(悪いというほどでもない)です。

僕が寄ったLAでジャンクフード店の女の子は普通だったなあ(笑)。
それより上司が100ドル札を渡すのにびっくりしたような顔をしたのが印象的で、アメリカに腐るほど行っている上司曰く「アメリカ人は100ドル札を持たんのだよ」と。
実際、100ドル札を渡す主人公にタクシーの運転手「あんた、日本人か?」とジョークを飛ばす映画がありました。
ねこのひげ
2013年01月24日 07:31
美人は、ハリウッドの近く限定かな?
ほ~っという金髪美人がいましたけどね。
ねこのひげが、朝食を食べたファーストフードでもおばさんでしたね。

100ドル・・・・友人で細かいのがなくて100ドル札を出したら、偽札ではないかと、ジロジロ見られたのがいましたよ。(笑)
しかたないので、ねこのひげが交換してやりましたけど・・・
オカピー
2013年01月24日 21:32
ねこのひげさん、こんにちは。

>100ドル札
そうそう、どちらかと言えば、驚いたというよりジロジロ観られました。お札より人間の方をね・・・強盗犯か何かじゃないかと疑っていたりして^^;

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