映画評「星の旅人たち」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督エミリオ・エステヴェス
ネタバレあり
日本でもお馴染みになってきたフランスからスペインは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼は先年の「サン・ジャックへの道」で本格的に紹介されたが、エミリオ・エステヴェスが自らのアイデアを映画化した本作は同工異曲と言うべき内容である。
眼科医マーティン・シーンが、聖地への巡礼に出た息子エステヴェスがピレネー山中で嵐に遭遇して死亡したことを聞き、慌てて現地に駆け付ける。死体を確認した彼は暫し考えた挙句火葬に付して、息子が何を思って旅に出たのか確認しようと遺灰を持って800kmの長い巡礼の旅に出る。
彼は肥満体形を気にしているオランダ人ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲンに話し掛けられてもむっつり右門を決め込むが、各ポイントに遺灰を撒いて行くことから事情を知られることになる。次に禁煙をする為に巡礼に出たというシニカルな口調のデボラ・カーラ・アンガーが道連れになる。純文学作家を目指しながら紀行ジャーナリストに甘んじているアイルランド人ジェームズ・ネスビットは、三人の仲間に加わると、ヴァーヘニンゲンから事情を知らされ、職業柄シーンに対し執拗な聞き込みを開始する。
暫くはむっつり右門と対照的によく喋る三人の奇妙な道中が続くが、シーンが酒を飲んでむっつり右門を決め込んだ自分を解放しすぎて警察のお世話になったのをネスビットが救ったことから互いに親近感が増し、さらにジプシー少年が遺灰の入った主人公のバックを奪った事件をきっかけにジプシーの宴に出席する辺りから最終目的地に向けての一体感が増していく。
息子の心情を理解しようと始めた旅が、主人公をして自分の心を開かせ、他人の気持ちを理解していく境地に至らしめる、という内容はなかなか爽快、エステヴェスのタッチはゆったりしていながらアメリカ映画らしく軽快。性格も旅の目的も尽く違う四人の登場人物の描写が面白く、幻想の息子をタイミング良く登場させて時に会話させるアイデアも成功している。
その昔映画館で観たルイス・ブニュエルの「銀河」も実はこの巡礼を扱っていたとある映画サイトの紹介で気付いた。お恥ずかしい次第。
マーティン・シーンがしーんとしているシーンが多かった。
2010年アメリカ映画 監督エミリオ・エステヴェス
ネタバレあり
日本でもお馴染みになってきたフランスからスペインは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼は先年の「サン・ジャックへの道」で本格的に紹介されたが、エミリオ・エステヴェスが自らのアイデアを映画化した本作は同工異曲と言うべき内容である。
眼科医マーティン・シーンが、聖地への巡礼に出た息子エステヴェスがピレネー山中で嵐に遭遇して死亡したことを聞き、慌てて現地に駆け付ける。死体を確認した彼は暫し考えた挙句火葬に付して、息子が何を思って旅に出たのか確認しようと遺灰を持って800kmの長い巡礼の旅に出る。
彼は肥満体形を気にしているオランダ人ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲンに話し掛けられてもむっつり右門を決め込むが、各ポイントに遺灰を撒いて行くことから事情を知られることになる。次に禁煙をする為に巡礼に出たというシニカルな口調のデボラ・カーラ・アンガーが道連れになる。純文学作家を目指しながら紀行ジャーナリストに甘んじているアイルランド人ジェームズ・ネスビットは、三人の仲間に加わると、ヴァーヘニンゲンから事情を知らされ、職業柄シーンに対し執拗な聞き込みを開始する。
暫くはむっつり右門と対照的によく喋る三人の奇妙な道中が続くが、シーンが酒を飲んでむっつり右門を決め込んだ自分を解放しすぎて警察のお世話になったのをネスビットが救ったことから互いに親近感が増し、さらにジプシー少年が遺灰の入った主人公のバックを奪った事件をきっかけにジプシーの宴に出席する辺りから最終目的地に向けての一体感が増していく。
息子の心情を理解しようと始めた旅が、主人公をして自分の心を開かせ、他人の気持ちを理解していく境地に至らしめる、という内容はなかなか爽快、エステヴェスのタッチはゆったりしていながらアメリカ映画らしく軽快。性格も旅の目的も尽く違う四人の登場人物の描写が面白く、幻想の息子をタイミング良く登場させて時に会話させるアイデアも成功している。
その昔映画館で観たルイス・ブニュエルの「銀河」も実はこの巡礼を扱っていたとある映画サイトの紹介で気付いた。お恥ずかしい次第。
マーティン・シーンがしーんとしているシーンが多かった。
この記事へのコメント
ひとくちに800キロと申しましても
想像するだに遥かな距離でございますね~
息子といえどもすっかりオジサンの風貌芳しくおなりの
E・エステベスは映画作りの才に恵まれて、お父さんの
マーティン・シーンは内心嬉しくて仕方がないんじゃないかしらん。(^ ^)
昨年いつものミニシアターで観ましたが、2015年までにはみんなデジタル化で
ございましょうから本作のようなほのぼのいかにも小劇場向き映画系は
この先公開されるかどうかも危ういと、もれ聞きましたね~
ま、映画好きはどんな形であろうとそれこそ這ってでもずってでも
映画を観続けるはずなんですけれど、映画館のスクリーンはスペシャルですからね~
私事で恐縮でございますが
左の目ン玉、また毛細血管切れてましてね、
「カトウさん、映画観るの、止めたら~」って主治医がカンタンに言うの。(笑)
800メートルなら何とかなりますけどね(笑)。
くどくなくてなかなか良い作品でした。
>2015年までにはみんなデジタル化
デジタルは保存性が悪くて20年しか持たないので、別の問題があり、出来の悪い映画は戦前のセルロイド製映画のように消失してしまう可能性もあると言われております。
>スクリーンはスペシャル
「ライアンの娘」が良かったのもスクリーンで観たからこそで、初鑑賞がTVだったらどうだったかなと思います。
解っているのですがねえ、諸事情によりまして銀幕からは遠ざかっております。
>毛細血管
確かに映画の見過ぎですね(笑)。
冗談はともかく、ご自愛ください。
先週、テレビ東京で『ジャイアンツ』『大奥絵巻』など往年の金をかけた名作をやっておりましたが、ああいった映画が作られることはないでしょうな~
テレビ東京と言えば、来週「猿の惑星」オリジナル第一作を放映するようです。
完全版なら勿論保存版にするところですが、少なくとも20分カットがあるだろうし、残念だなあ。
WOWOWさんも三つの放送枠を持ってから、古い映画が増えてきたのは良いのですがこちらが見たいものがそうそう出るわけではありません。
リメイクなんかやらなくても良いから、「猿の惑星」を是非やってほしい。テレビ東京さん、貸してやって(笑)!