映画評「危険な情事」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1987年アメリカ映画 監督エイドリアン・ライン
ネタバレあり
公開当時は思い出さなかったが、今思うにクリント・イーストウッドの監督デビュー作「恐怖のメロディ」(1971年)と同工異曲のサスペンス映画。男女関係だからストーカーものと言うべきながら、この後流行と言って良いほど数多く作られた“逆恨みもの”の先鞭をつけたような印象もある。
愛妻アン・アーチャーと幼い娘のいる弁護士マイケル・ダグラスが雑誌社の編集者グレン・クローズと火遊びをしたところ、本気になった彼女が電話を執拗に掛けるところから始まって、車を壊され、引っ越しの為に売りに出す家を買う振りをして訪れるなど次第に狂気を募らせ、一家を恐怖に陥れる。
エイドリアン・ラインの展開ぶりは、開巻から三分の一くらいまで後段の恐怖への準備をじっくりと行ない、その後彼が帰る際に引き留めたいグレン女史が現れ、よく見ると手首を切っている、というシーンから徐々にサスペンスと恐怖度を高めていく。緩急を使った見事な演出である。
幾つかあるカットバックによるサスペンス醸成も編集の教科書と言いたい鮮やかさで、特に娘が飼い始めたウサギの小屋へ駆けつける様子とアンがぐつぐつと煮立っている鍋に近づいて行くカットバックは最後の瞬間に一つの意味を成して誠に強烈。やはりカットバックに始まる終盤のクライマックスも超弩級の恐怖醸成に圧倒される。
僕には余り関心がないが、男女の是非論について言えば、男に罪がないわけでもないし、女性に多少同情の余地があるとは言え、あそこまで行っては異常であり、主人公にとって罪に対して罰が大きすぎると言わざるをえまい。男性諸君は肝に銘ずべし。
出演者では、元来ご贔屓であったアン・アーチャーが平凡な主婦を演じて好調。彼女の平凡な存在感があればこそグレン・クローズの怪演が引き立つのである。
“安易に浮気する勿れ”――誠に解りやすい教訓譚でした。
1987年アメリカ映画 監督エイドリアン・ライン
ネタバレあり
公開当時は思い出さなかったが、今思うにクリント・イーストウッドの監督デビュー作「恐怖のメロディ」(1971年)と同工異曲のサスペンス映画。男女関係だからストーカーものと言うべきながら、この後流行と言って良いほど数多く作られた“逆恨みもの”の先鞭をつけたような印象もある。
愛妻アン・アーチャーと幼い娘のいる弁護士マイケル・ダグラスが雑誌社の編集者グレン・クローズと火遊びをしたところ、本気になった彼女が電話を執拗に掛けるところから始まって、車を壊され、引っ越しの為に売りに出す家を買う振りをして訪れるなど次第に狂気を募らせ、一家を恐怖に陥れる。
エイドリアン・ラインの展開ぶりは、開巻から三分の一くらいまで後段の恐怖への準備をじっくりと行ない、その後彼が帰る際に引き留めたいグレン女史が現れ、よく見ると手首を切っている、というシーンから徐々にサスペンスと恐怖度を高めていく。緩急を使った見事な演出である。
幾つかあるカットバックによるサスペンス醸成も編集の教科書と言いたい鮮やかさで、特に娘が飼い始めたウサギの小屋へ駆けつける様子とアンがぐつぐつと煮立っている鍋に近づいて行くカットバックは最後の瞬間に一つの意味を成して誠に強烈。やはりカットバックに始まる終盤のクライマックスも超弩級の恐怖醸成に圧倒される。
僕には余り関心がないが、男女の是非論について言えば、男に罪がないわけでもないし、女性に多少同情の余地があるとは言え、あそこまで行っては異常であり、主人公にとって罪に対して罰が大きすぎると言わざるをえまい。男性諸君は肝に銘ずべし。
出演者では、元来ご贔屓であったアン・アーチャーが平凡な主婦を演じて好調。彼女の平凡な存在感があればこそグレン・クローズの怪演が引き立つのである。
“安易に浮気する勿れ”――誠に解りやすい教訓譚でした。
この記事へのコメント
02年「運命の女」以来、E・ラインの映画来てませんね。
翻弄する女、翻弄される女描かしたら巧い監督さん。
いわゆる女性映画の生臭ジャンル(笑)で名を上げて。
また、男性陣には、かなり居心地のおよろしくない映画。
話題作ということで当時観に行った知人夫婦のこと。
奥さま、終始前のめりで目ん玉ピッカリコ、
ダンナさま、ほとんど高イビキつき熟睡とな。(爆)
ほんのちょぴっとしか引用してないのですけれど
えらい昔の拙記事持参いたしました~^^
>「運命の女」
僕はあの幕切れが気に入ってしまって、結構気に入りましたが、世評はダメだったようで、干されたみたい。
で、現在およそ十年ぶりに新作を撮っているとの情報あり。入って来ると良いですね。
本作は、序盤の激しい何のシーンが当時話題を呼んでいた記憶があります。本当はそれより怖さに注目すべき作品だったのですがねえ。
古くは、安珍清姫の話もありますからね~
男は、ついフラフラと乗ってしまいますが・・・・(^^ゞ
そのあとが大変ですな~
子供が出来たの・・・なんて言われようものならパニックですが\(-o-)/
「恐怖のメロディ」が女性のストーカーを本格的に扱った映画史上最初の作品かなあなどと(何の根拠もなく)思いますが、本作はさらに強烈でした。
しかし、実社会では、ストーカーは圧倒的に男性が多いのでしょうね。
>子供ができたの
それは別の意味で怖いです。ちゃんと避妊をしましょう^^
年末年始の休みはDVDざんまいですよ~
グレン演じたストーカー女 恐るべし! 見てて
「ひょっとして、彼女 ターミーネーターか?」と^▽^
電話換えても 掛かってくるし 娘の学校の送り迎えには先回りするし
手を打つのが早過ぎ・・・ そして ”ウサギの煮込み”・・・こえ~よ・・・
>“安易に浮気する勿れ”――誠に解りやすい教訓譚でした。
まあ そうですね。 昔 日野OL放火殺人事件が あったみたいでしたが 事件の内容見てて 不倫やったら たいてい 何かの代償がつくもんですね・・・まず当事者は 無傷は ないです。↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%87%8EOL%E4%B8%8D%E5%80%AB%E6%94%BE%E7%81%AB%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
>グレン
【怖い女性が出る映画】ベストを選んだら入選確実ですし、【映画の中の怖い女性】を選んでもベスト3に入りそうですよね。
>浮気
最近僕の身近な人からものすごい話を聞かされました。映画の中だけではないんだなあと背筋がぞっとしましたよ。