映画評「ドライヴ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ニコラス・ウィンディング・レフン
ネタバレあり
WOWOWの“W座からの招待”という番組(?)での放映で、放送作家・脚本家の小山薫堂氏と解説もどきをしているイラストレーターの安西水丸氏に先に言われてしまったものの、本作は股旅物と同じ構図のお話である。
奇しくも映画版では色々と見ている長谷川伸の戯曲集を鑑賞当日に読み終えたところで、主人公が斬り殺した男の妻子に無償の愛を捧ぐ「沓掛時次郎」に特に似ている。これに「勘太郎月の唄」を併せて換骨奪胎するともっと似て来る。おのおのがた、1970年代どころか「沓掛」が発表されたのは1920年代でございますよ。
修理工で映画のカースタントもやっているライアン・ゴスリングがアパートの隣室に住んでいる子連れの人妻キャリー・マリガンと親しくなる。彼の裏稼業は逃走用運転手である。
やがて出所してきたキャリーの夫君オスカー・アイザックは服役中の恩義を高く売られてゴスリングを逃走用運転手として強盗を働くことを強要され、襲撃直後に射殺されてしまう。大物悪党に嵌められた計画と知ったゴスリングはキャリーとその息子の為に悪党即ちロン・パールマンやブライアン・クランストンを仕留める行動を起こす。
主人公は殺してこそいないものの、夫君を死に至らしめる計画で共犯関係であることを考えれば時次郎に似た立場だし、キャリーに仄かな愛情を匂わす辺りは股旅もの西部劇「シェーン」に通ずる。実にクラシックである。
それを古臭く撮ったら古色蒼然と言わざるを得なくなったであろうが、カンヌで監督賞を取って話題の若手(と言っても四十を越えている)ニコラス・ウィンディング・レフンがデンマーク出身らしいクールな映像で撮りちょっと変わったシークエンスの構成をしているから、無心に見ると結構新鮮に感じられるのである。
カー・アクションはCGを重視せず地味で量的にも少ないが、CGを使った作り物の派手さより昭和中盤生まれ世代の僕は当然買う。しかし、「ブリット」「バニシング・ポイント」「フレンチ・コネクション」といったニューシネマ時代のカー・アクションの迫力を求めるにはまだ経験不足と言うべし。
作劇的には、悪党紹介の為だけに用意されたと解釈できるレース参加話の扱いにもう少し工夫が欲しかった。
ライアン・ゴスリングは新境地を開いたと言える役柄を上手くこなしている。暫く要注目と思う。
スタントマン役のスタントマンは誰だったのでしょうか(笑)。
2011年アメリカ映画 監督ニコラス・ウィンディング・レフン
ネタバレあり
WOWOWの“W座からの招待”という番組(?)での放映で、放送作家・脚本家の小山薫堂氏と解説もどきをしているイラストレーターの安西水丸氏に先に言われてしまったものの、本作は股旅物と同じ構図のお話である。
奇しくも映画版では色々と見ている長谷川伸の戯曲集を鑑賞当日に読み終えたところで、主人公が斬り殺した男の妻子に無償の愛を捧ぐ「沓掛時次郎」に特に似ている。これに「勘太郎月の唄」を併せて換骨奪胎するともっと似て来る。おのおのがた、1970年代どころか「沓掛」が発表されたのは1920年代でございますよ。
修理工で映画のカースタントもやっているライアン・ゴスリングがアパートの隣室に住んでいる子連れの人妻キャリー・マリガンと親しくなる。彼の裏稼業は逃走用運転手である。
やがて出所してきたキャリーの夫君オスカー・アイザックは服役中の恩義を高く売られてゴスリングを逃走用運転手として強盗を働くことを強要され、襲撃直後に射殺されてしまう。大物悪党に嵌められた計画と知ったゴスリングはキャリーとその息子の為に悪党即ちロン・パールマンやブライアン・クランストンを仕留める行動を起こす。
主人公は殺してこそいないものの、夫君を死に至らしめる計画で共犯関係であることを考えれば時次郎に似た立場だし、キャリーに仄かな愛情を匂わす辺りは股旅もの西部劇「シェーン」に通ずる。実にクラシックである。
それを古臭く撮ったら古色蒼然と言わざるを得なくなったであろうが、カンヌで監督賞を取って話題の若手(と言っても四十を越えている)ニコラス・ウィンディング・レフンがデンマーク出身らしいクールな映像で撮りちょっと変わったシークエンスの構成をしているから、無心に見ると結構新鮮に感じられるのである。
カー・アクションはCGを重視せず地味で量的にも少ないが、CGを使った作り物の派手さより昭和中盤生まれ世代の僕は当然買う。しかし、「ブリット」「バニシング・ポイント」「フレンチ・コネクション」といったニューシネマ時代のカー・アクションの迫力を求めるにはまだ経験不足と言うべし。
作劇的には、悪党紹介の為だけに用意されたと解釈できるレース参加話の扱いにもう少し工夫が欲しかった。
ライアン・ゴスリングは新境地を開いたと言える役柄を上手くこなしている。暫く要注目と思う。
スタントマン役のスタントマンは誰だったのでしょうか(笑)。
この記事へのコメント
お話は殆ど股旅ものを思わせるスーパーにクラシックで、タッチが断然新しいというわけではないけれどアメリカのメジャー映画とは違う欧州風若しくはインディ風、というハイブリッド感が新鮮さを与えて好評を得たのでしょう。
カンヌと言えども監督賞はちょっと誉めすぎの感はありました。ふーむ(笑)。
違和感なくなるとすごいんですが・・・・・
SFX時代は勿論作り物であることがよく解ったものですが、しかし、粗探しをしないとそれなりに観られてしまったように、VFXも完全でなくても良いと思うんですよね。
もの凄く美しい情景が実はCGでした・・・では興醒めですもん(笑)。
尤も既に、“これは実写なのかCGなのか”と迷う映画にも遭遇しております。
「風と共に去りぬ」も実は特撮が多く、実景と思っていた序盤場面の背景が絵であり、大量の死体も後ろの方は絵と聞きました。何度か観ていますが、いつも夢中で観ているので解らなかったです^^;
これが、絵かと驚きました。
CGもスーパーリアリズムの背景も、“絵”に変わりはないのだけど、古臭い僕などはリアリズムの書き割りを撮った手作り感のほうが好き。
どうも、映画は密室にこもって作るものではない、という古風な考えから抜け切れませんや^^;
僕のブログ友達に「アニメは映画ではない」と仰る方がいらっしゃるのですが、その意味では彼の主張も解りますね。尤もCG出現前のアニメは、厳密に言えば、一枚一枚撮影していたわけですけどね。
ライアン・ゴスリングがすばらしかったです。
>一昔前のVシネみたいだなという印象
そんな内容を、北欧的なクールでスタイリッシュに映像に移したところが買われたのでしょうね。