映画評「キラー・エリート」

☆☆★(5点/10点満点中)
2011年オーストラリア=アメリカ合作映画 監督ゲイリー・マッケンドリー
ネタバレあり

SASと略される英国陸軍特殊部隊が興味の中心となるアクション映画で、監督のファンすら大いにずっこけたサム・ペキンパーの同名映画(1975年)とは全く関係ない。

傭兵的殺し屋ジェースン・ステイサムは標的の車に残った子供を殺せず、嫌気のさした稼業から引退するが、先輩ロバート・デニーロを人質に取ったイエメンの長老一味から息子三人を殺した元SAS隊員を事故死に見せかけて殺すよう強要される。SAS隊員は並大抵の相手ではないことで難儀が予想されるが、最初の一人を仕留めると、強固な体系で結ばれている元SASメンバーたち即ちフェザー・メンが動き出し、クライヴ・オーウェンが筆頭にした実行部隊が彼の行く手に立ち塞がる。

"Based on a true story"ということで始まるが、SASに所属していたというラヌルフ・ファインズなる原作者がでっちあげたか、若しくは針小棒大に語ったほら話であろう。SASなる組織が極秘扱いなので、そこを逆手に取ればどのようにでも書けるわけである。
 それは別としても"Based on a true story"もピンからキリまで色々あり、こちらは文字通りベースにしている程度と想像される。事実、エンディングのクレジットを眺めていたら、"Inspired by the book titled..."と出て来た。原作がかりに限りなく実話に近いとしても、映画は作り物ということであろう。さもありなん(笑)。

出来映えとしては、基本となるお話はシンプル千万なのにシーンやシークエンスの繋ぎが悪い為実際以上にややこしく感じられる。主人公が殺し損ねた子供や恋人イヴォンヌ・ストラホフスキーの出て来るフラッシュバックの扱いが特にうまくない。最後ステイサムとオーウェンが好敵手的関係になって終る辺りの味わいはまあまあなので、マット・シェリングが脚本をきちんと交通整理していればもう少し面白くなったと思う。

駄作でもペキンパーの「キラー・エリート」が観たくなってきた、のは多分の気の迷いでありましょう(笑)。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年04月16日 18:09
『キラーエリート』を観たときは、ついにサム・ペキンパーも地に落ちたかと思いましたが・・・・
ニンジャという存在は、外人にとってはまさにキラーエリートようでありますようで・・・・スーパーヒーロというか、あこがれの存在のようでありますよ。
わざわざ、最低の作品のタイトルともいうべき『キラーエリート』を持ってきたのは、そういうことではないかと思われますな・・・
日本刀も最強の武器の扱いを受けてますからね・・・(^^ゞ

日本という国は、連中にとっては、不思議な神秘に満ちた国のようですよ。
違うと言っても聞いてくれないんですよ・・・(~_~;)
オカピー
2013年04月16日 21:14
ねこのひげさん、こちらにもようこそ。

>ニンジャ
30年ほど前アメリカでは相当前から忍者映画がブームであると知りましたが、「キラー・エリート」を観た時は知りませんでしたので、首をかしげたもので、僕の私淑する双葉先生が“ペキン監督パーになる”という終りのコメントを書いたのが今でも忘れられません。僕も真似をして面白い太字コメントを考えていますが、なかなか。

そう言えば、アメリカ人にとって忍者がキラー・エリートであることは、タランティーノの「キル・ビル」二部作でも示されていますね。

日本人はいつもわけの解らない笑みを浮かべ、礼儀正しいかと思えば、エコノミック・アニマルと揶揄されたり、アメリカ人にとっては不思議な民族なんでしょう。

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