映画評「探偵はBARにいる」(地上波放映版)
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・橋本一
ネタバレあり
東直己のハードボイルド小説をTV畑(「相棒」などの演出)の橋本一が映画化したハードボイルド映画である。原作が1993年1月に発表された時携帯電話は当り前でなかった。この映画版では、舞台を21世紀に移したことにより、主人公の探偵が携帯電話を持っていないことが面白い効果を生んでいる。「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」の探偵も持っていなかったので、映画に出て来る日本の探偵は携帯電話が嫌いであるという傾向が出来そうだ。
因みに、本作の劇場公開時の上映時間は125分。今回の放映は通常の放送枠を20分ほど拡大しているが、それでも本編105分で約20分、エンディング・クレジットを除いても17分程度のカットがあると思う。これは僕が地上波で映画を観る条件を満たしていないものの、結局観た。お話の理解は出来るレベルと判断しつつ、ハードボイルド映画で重要なムード醸成がカットによりどれほど損なわれたかは劇場公開版を観ていないので何とも言えない。
北大生で空手師範の松田龍平を助手にしている私立探偵・大泉洋が、仕事の受付先にしているバーの電話にかかってきた一人の女性の小出しにされる依頼内容を引き受ける度に暴力団から色々とひどい目に遭わされる。
というのは典型的なハードボイルドもののストーリーで、その多くで女性が悪役であったり、事件の重要なカギを握る人物であるというパターンを踏襲している。
姿を一向に見せぬ電話の主が、正義感が災いして殺された実業家・西田敏行の未亡人にして彼を殺した陰謀団と深い関係を持っているクラブのマダム小雪であることが丸きり解ってしまっても全く問題ではない。ハードボイルドにおいて重要なのは探偵の性格造形と、紆余曲折の見せ方の面白さと、ムード醸成である。その点に関しては本作は、特に日本映画としては十分及第点を進呈できるレベルにあると思う。
探偵の大泉は顔がユニーク過ぎて好悪を引き起しやすいが、些かのコミカルさを持っていて面白い(興味深いの意味であって、可笑しいの意味ではない)。
松田龍平はこういう便利役的な探偵役が似合うだけに助手役は役不足(役が不足しているのであって、力が不足しているという意味ではない。力が不足している時は力不足というのが本当。最近の役者は“私は役不足”と謙遜しているつもりが、実は“役が足りず不満である”とある年齢以上の方が誤解する発言をしている)気味ながら、相手役のコミカルさと相まってこちらも別種のとぼけた味を出していて実に面白い。
紆余曲折については具体的に言うには色々事件があるので一々触れられないものの、女性が絡む事件で探偵がひどい目に遭うフィリップ・マーロウもののような展開が誠に嬉しい。ムード醸成はバーを連絡先にしているという設定だけでもOKを出せるでありましょう。
「探偵はパーになる」でなくて良かったです。
2011年日本映画 監督・橋本一
ネタバレあり
東直己のハードボイルド小説をTV畑(「相棒」などの演出)の橋本一が映画化したハードボイルド映画である。原作が1993年1月に発表された時携帯電話は当り前でなかった。この映画版では、舞台を21世紀に移したことにより、主人公の探偵が携帯電話を持っていないことが面白い効果を生んでいる。「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」の探偵も持っていなかったので、映画に出て来る日本の探偵は携帯電話が嫌いであるという傾向が出来そうだ。
因みに、本作の劇場公開時の上映時間は125分。今回の放映は通常の放送枠を20分ほど拡大しているが、それでも本編105分で約20分、エンディング・クレジットを除いても17分程度のカットがあると思う。これは僕が地上波で映画を観る条件を満たしていないものの、結局観た。お話の理解は出来るレベルと判断しつつ、ハードボイルド映画で重要なムード醸成がカットによりどれほど損なわれたかは劇場公開版を観ていないので何とも言えない。
北大生で空手師範の松田龍平を助手にしている私立探偵・大泉洋が、仕事の受付先にしているバーの電話にかかってきた一人の女性の小出しにされる依頼内容を引き受ける度に暴力団から色々とひどい目に遭わされる。
というのは典型的なハードボイルドもののストーリーで、その多くで女性が悪役であったり、事件の重要なカギを握る人物であるというパターンを踏襲している。
姿を一向に見せぬ電話の主が、正義感が災いして殺された実業家・西田敏行の未亡人にして彼を殺した陰謀団と深い関係を持っているクラブのマダム小雪であることが丸きり解ってしまっても全く問題ではない。ハードボイルドにおいて重要なのは探偵の性格造形と、紆余曲折の見せ方の面白さと、ムード醸成である。その点に関しては本作は、特に日本映画としては十分及第点を進呈できるレベルにあると思う。
探偵の大泉は顔がユニーク過ぎて好悪を引き起しやすいが、些かのコミカルさを持っていて面白い(興味深いの意味であって、可笑しいの意味ではない)。
松田龍平はこういう便利役的な探偵役が似合うだけに助手役は役不足(役が不足しているのであって、力が不足しているという意味ではない。力が不足している時は力不足というのが本当。最近の役者は“私は役不足”と謙遜しているつもりが、実は“役が足りず不満である”とある年齢以上の方が誤解する発言をしている)気味ながら、相手役のコミカルさと相まってこちらも別種のとぼけた味を出していて実に面白い。
紆余曲折については具体的に言うには色々事件があるので一々触れられないものの、女性が絡む事件で探偵がひどい目に遭うフィリップ・マーロウもののような展開が誠に嬉しい。ムード醸成はバーを連絡先にしているという設定だけでもOKを出せるでありましょう。
「探偵はパーになる」でなくて良かったです。
この記事へのコメント
大泉洋と松田龍平の凸凹コンビぶりが良いですな。
松本・・・いずれオヤジさんのような探偵役もやるようになりそうですな。
すこし美男すぎる気もいたしますが・・・
この二人で実写版の『ルパン三世』みたいなのを作っても面白いかな?
大泉洋と松田龍平、単独でも探偵役のできそうな役者ですが、コンビを組むことで面白くなりましたね。
日本ではボガートのような単独行動よりコンビの方が受けそうです。
>『ルパン三世』
ルパンは大泉、次元が松田なら、五右衛門は誰が良いですか?
北海道出身という大泉洋は、ユースケ・サンタマリアと並んで、日本の芸能界ではその個性がユニークで貴重価値ありと思う私です。
そして、この映画もタイトルからして気になっておりました。タイトルどおりにハードボイルドなのか、はたまた看板倒れかと・・・。
>北大生で空手師範の松田龍平を助手にしている私立探偵
まるで、グリーンホーネットですな。松田君の役はまさにミスターカトウ=ブルース・リーであります。
そんな感じはなかったですか?
☆☆☆★(7点)なら一見の価値あり、ですね。
>ハードボイルド
コミカルな部分も多いですから、ボギーのようなのを期待するとズッコケると思いますが、お話の骨格はチャンドラーを踏襲しているような感じでしたね。
>ミスター・カトウ
設定的には近いものの、空手をフィーチャーした感じが余りしませんでしたね。主人公より確かに強いんですが。
>☆☆☆★
最近面白い邦画を観ていなかったこと、日本映画でハードボイルドらしいお話が見られたことが嬉しくて多少甘くつけました。
とにかく、ボギーを期待しないで観て戴きたいと思います(笑)。
ちょっと若いけど・・・
この三人ならユニークな映画が出来そうですけどね。
>栗原類
全く知りませんでしたので、ちょっと調べてみたら、雰囲気ありますね。
もう少し年齢が行っていたらもっと面白そう。
これも幻想映画館かな?^^