映画評「プレイ-獲物-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2011年フランス映画 監督エリック・ヴァレット
ネタバレあり

1970年代のアラン・ドロンの主演映画を何本か合わせて割ったようなサスペンスである。

銀行強盗をして逮捕されたアルベール・デュポンテルは金の在り処を打ち明けない為に刑務所内にいる仲間から狙われる始末ながら、残り刑期が二カ月となったところで、婦女暴行の罪で服役中のステファン・デバクが囚人仲間に襲われたのを助けた為に自らは刑期を延長され、直後にデバクは冤罪が認められて釈放される。
 デバクに妻と幼い娘を託したデュポンテルは、憲兵を名乗るセルジ・ロペスから彼が何人も婦女を殺害している異常者であると確信をもって告げられた為に不安になり、看守に賄賂を贈って彼の見ている前でリンチしに来た仲間たちに反撃する際に看守もやっつけて首尾よく脱獄、追って来る警官たちを見事に振る切るが、その間に案の定妻を男に殺され、他の女性連続殺人の罪まで帰せられてしまう。執拗に追う警察をかわしながら遂にデバクとその妻が彼の娘と一緒に住んでいる家を突き止めるや、娘を奪取して彼と対峙する。

ヒッチコックが好んだ“追われながらの犯人探し”ものとも言える。それは嬉しいが、設定・展開には疑問百出。例えば、銀行強盗をして逮捕され、金の在り処を吐いていない主人公が何故に釈放されることになるのか? 仲間に狙われる以前の問題だろう。法律とはそういうものなのかねえ?
 主人公の性格も一貫しない。allcinemaで投稿者K氏が指摘しているように、お金を独り占めしその在り処を妻にすら教えないほど人間を信用しない若しくは慎重な男がデバクをいとも簡単に信用し、後でほぞを咬んで脱獄する。典型的な“お話の為のお話”になってはいまいか。

脱獄した後、車がビュンビュン走っている幹線道路で主人公と警官が走り回るアクションはなかなか良い。鉄道を使ったアクションも地味ながら悪くない。良い意味で70年代の映画を見るようだ。
 K氏と反対に僕はCGも大量の火薬も使わない見せ方自体は買いたい。アメリカのジャンル映画がつまらなくなった原因の殆どは、映画的な工夫をする労力を惜しんでCGを使いすぎているせいと思っているからだ。フランス映画界はリュック・ベッソンのようにハリウッド映画を追わず、フランス流を守れば良い。

お話に戻ると、彼を追跡するうちに女刑事アリス・タッリオーニ(イタリア系フランス人? タグリオーニかもしれないが、一般的にイタリア語で"gli"は“ッリ”と読む)が連続殺人事件の真犯人は別人と思うようになり警察が真犯人に接近していくというミステリー・サスペンスの要素において、警察を巡る一連の描写は些か調子が良すぎて肩すかしを食らう。

70年代の同系列作品よりぐっとスピード感はあるが、その為に犯罪映画らしいムードが多分に犠牲になっているので良し悪し。

“獲物”が示すように、タイトルのプレイは、"play"ではなく"prey"の方です。

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  • 『プレイ-獲物-』

    Excerpt: (原題:La proie) ----この映画、スゴく評判いいようだね。 “エンターテイメントの原点”だの “本物の映画魂”だの言われている…。 「そうだね。 派手なアクションは香港映画、 凝ったサ.. Weblog: ラムの大通り racked: 2013-06-19 23:31