映画評「オルエットの方へ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1971年フランス映画 監督ジャック・ロジェ
ネタバレあり

日本に殆ど紹介されることのなかったジャック・ロジェとしては、先日初めて観た長編デビュー作「アデュー・フィリピーヌ」のカラー拡大焼き直し版と言うべき長編第二作。

ある会社のタイピスト、ダニエル・クロワジが親友フランソワーズ・ケガンと共にその従姉キャロリーヌ・カルティエ(の母)の別荘で九月のヴァカンスに出かける。暫く彼女らの馬鹿騒ぎと馬鹿笑いに付き合わされるうち、ダニエルの若い上司ベルナール・メネズが偶然を装って彼女たちの前に訪れる。「アデュー」では二人の娘がヴァカンス中の男の前に偶然を装って現れるが、ほぼ同じ構図。
 違うのはもう一人ボートを持っている男性パトリック・ヴェルドが現れることにより様相が多少複雑になるくらいで、フランソワーズがその彼と長くボートで遊んで帰って来ないと娘たちは何となく嫉妬心が湧いてきてふとアンニュイな気分になる。アンニュイになるのは目的のダニエルが少しもなびいてくれないメネズにしても同じで、そんな気分の中三週間ほどのヴァカンスから帰り、少々けだるい気分を残したまま十月になれば早くも来年のヴァカンスに思いを馳せる。

最後に多少の切なさが残るとは言え、これまた誠に他愛ない青春像で、「アデュー」の後半1時間を161分に引き伸ばした感じだから、お話としてそう面白い筈はないものの、前述作同様素人同然の役者を恐らく殆ど素のままにうまく動かしているのは感心させられる。即興演出若しくはそれに近いものと思われるが、わが邦の諏訪敦彦監督のようにそれを売りにしている印象を与えないのに好感が持てる。

ヴァカンスをテーマに日付を挿入して展開する辺り6歳年上のエリック・ロメールの幾つかの作品(「緑の光線」など)に似ているが、作劇的にロメールより(一見)ノンシャラン。大変長いので「アデュー」が気に入った人なら見ても良いという感じでしょう。

プルーストの大長編「失われた時を求めて」の第一部「スワン家の方へ」を思い出させるタイトルだけど?

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