映画評「エイリアン」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1979年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり
「スター・ウォーズ」のヒットで映画界が俄かに宇宙に目を向けた頃作られた、言わずと知れたSFホラーの傑作。「怖いぞ」という評判に既にミーハーでなかった僕も興味を覚え、大いに構えて観たものである。
"alien"という、それまで優秀な受験生くらいにしかお馴染みでなかった英単語が一躍有名になって日本人の間に定着した。しかし、多くの日本人がalien=地球外生物と理解しているのは間違いで、異星人の意味と共に外国人を指すことは案外知られていない。或いは形容詞で、「外国の」といった意味が一般的。
トム・スケリットを船長とする7人編成の民間宇宙船が地球への帰還中に謎の音信をキャッチ、発信源の惑星に到着してみると、宇宙船はあってももぬけの殻。探索中に一等航海士のジョン・ハートが節足動物のような宇宙生物に襲われ、昏睡状態に陥る。やがて死期に近付いた生物が顔から離れ、ハートも元気に蘇生するが、食事をしている際に突然苦しみ出すや腹を突き破って宇宙生物即ちエイリアンが出現して逃げ去る。
以降、神出鬼没にして体内に酸を流している無敵のエイリアンから逃れつつ何とかやっつけようと奮戦するも乗組員たちは次々と倒れていく。
コスト的にはドル箱スターを排した中級作品で、どちらかと言えばショック演出が多い中にあって、それがサスペンス醸成に大いに生きた。つまり、誰がどういう順番で死んでいくか見当が付かないという意味で興味が持続するのである。「悪の花園」という西部劇でギャラの安い方から順番に死んでいくケースがあって甚だ興醒めしたのとは対照的に、ハラハラし通しだった。
エイリアンの足に切った時に酸が噴出して大騒ぎになる場面も捨てがたいが、ハートの腹が割けてエイリアンが出てきたショットを初めて観た時には吃驚しましたなあ。本作以降このショック・ショットは色々な作品で模倣され、ドキッとはすることはあってももはや映画のショック演出として吃驚することはまずない。エイリアンの造形も斬新にしてショッキング、やはり色々と模倣されている。
SF的に面白いのはレイ・ブラッドベリのSF小説「火星年代記」を思い出させる科学者イアン・ホルムの正体で、これがなければ本ブログ上のジャンルとしてはホラー映画に分類したかもしれない。美術班が頑張った宇宙船などの造形と質感も大いに楽しめる。
3等航海士役のシガーニー・ウィーヴァーは新人ながら女傑として大奮闘し、後の活躍はご存知の通り。当り前だが随分若い。その他の出演者も、ヴェロニカ・カートライト、ヤフェット・コットー、ハリー・ディーン・スタントンと、地味ながらなかなか豪華。映画ファン好みの配役で、当時僕が知らなかったのはシガーニーだけだった。
監督をしたリドリー・スコットにとっても出世作。若手ながら誠に堂々と撮っていて、慌ただしいだけで面白味の欠ける昨今の若手と大分違う。本作のヒットにより、なかなか興味深い趣向の長編デビュー作「デュエリスト/決闘者」が公開された。
原案・脚本のダン・オバノンは本作が上出来すぎて、今のところ並ぶ若しくは優る作品を生み出せていない。
誰かさんがこんな映画ありえん(alien)と言いましたとさ。
1979年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり
「スター・ウォーズ」のヒットで映画界が俄かに宇宙に目を向けた頃作られた、言わずと知れたSFホラーの傑作。「怖いぞ」という評判に既にミーハーでなかった僕も興味を覚え、大いに構えて観たものである。
"alien"という、それまで優秀な受験生くらいにしかお馴染みでなかった英単語が一躍有名になって日本人の間に定着した。しかし、多くの日本人がalien=地球外生物と理解しているのは間違いで、異星人の意味と共に外国人を指すことは案外知られていない。或いは形容詞で、「外国の」といった意味が一般的。
トム・スケリットを船長とする7人編成の民間宇宙船が地球への帰還中に謎の音信をキャッチ、発信源の惑星に到着してみると、宇宙船はあってももぬけの殻。探索中に一等航海士のジョン・ハートが節足動物のような宇宙生物に襲われ、昏睡状態に陥る。やがて死期に近付いた生物が顔から離れ、ハートも元気に蘇生するが、食事をしている際に突然苦しみ出すや腹を突き破って宇宙生物即ちエイリアンが出現して逃げ去る。
以降、神出鬼没にして体内に酸を流している無敵のエイリアンから逃れつつ何とかやっつけようと奮戦するも乗組員たちは次々と倒れていく。
コスト的にはドル箱スターを排した中級作品で、どちらかと言えばショック演出が多い中にあって、それがサスペンス醸成に大いに生きた。つまり、誰がどういう順番で死んでいくか見当が付かないという意味で興味が持続するのである。「悪の花園」という西部劇でギャラの安い方から順番に死んでいくケースがあって甚だ興醒めしたのとは対照的に、ハラハラし通しだった。
エイリアンの足に切った時に酸が噴出して大騒ぎになる場面も捨てがたいが、ハートの腹が割けてエイリアンが出てきたショットを初めて観た時には吃驚しましたなあ。本作以降このショック・ショットは色々な作品で模倣され、ドキッとはすることはあってももはや映画のショック演出として吃驚することはまずない。エイリアンの造形も斬新にしてショッキング、やはり色々と模倣されている。
SF的に面白いのはレイ・ブラッドベリのSF小説「火星年代記」を思い出させる科学者イアン・ホルムの正体で、これがなければ本ブログ上のジャンルとしてはホラー映画に分類したかもしれない。美術班が頑張った宇宙船などの造形と質感も大いに楽しめる。
3等航海士役のシガーニー・ウィーヴァーは新人ながら女傑として大奮闘し、後の活躍はご存知の通り。当り前だが随分若い。その他の出演者も、ヴェロニカ・カートライト、ヤフェット・コットー、ハリー・ディーン・スタントンと、地味ながらなかなか豪華。映画ファン好みの配役で、当時僕が知らなかったのはシガーニーだけだった。
監督をしたリドリー・スコットにとっても出世作。若手ながら誠に堂々と撮っていて、慌ただしいだけで面白味の欠ける昨今の若手と大分違う。本作のヒットにより、なかなか興味深い趣向の長編デビュー作「デュエリスト/決闘者」が公開された。
原案・脚本のダン・オバノンは本作が上出来すぎて、今のところ並ぶ若しくは優る作品を生み出せていない。
誰かさんがこんな映画ありえん(alien)と言いましたとさ。
この記事へのコメント
大変楽しく拝読させて頂きました。^^
いわゆるデカイ話をキチンとまとめる器量と
いうか度量のある監督作品というのは映し
出される映像空間に「貫禄」が感じられますね。
プロフェッサーは「堂々と」と表現なされて
いらっしゃいますね~^^
>誰かさんが~~~と言いましたとさ。
↑↓→←東西南北キョロキョロ!(笑)
お客さまの映画談議で大賑わいの
7年前拙記事持参いたしました。はい、
プロフェッサーもいらっしゃいます、勿論。
第二作は疑似ベトナム戦争映画でしたね。アクションはさすがですが、自分らのしていることを母性を盾にとって正当化するのがいやらしいと思った。
第三作はまだ観ていないのですが、なんだかジェス・フランコがよく撮っていた女囚凌辱物のエコーを感じさせる作品ではないかと推測しています。
それにしても姐さんの記事へのコメントの多さには吃驚しますな。
古くて新しいシンプルな設定をショックとサスペンスを上手く配分して、ハラハラドキドキ、2時間弱楽しませくれましたねえ。
新人がタケノコのように登場し、殆どが無名のまま消えてしまう現在と違って、当時は、現在、名を残す監督が現れた最後のアメリカ映画繁栄期で、その中にあってもリドリー・スコットは卓越していましたよね。
>誰かさん
あわわ、姐さんの記事内容は失念していましたから、全くの偶然なんですが、
何だか姐さんを指しているように思えます^^;
失礼致しました<(_ _)>
>怪奇SFのお作法
ご指摘のように、美術が斬新だったので新しい内容と思いがちですが、こういうお話のSFは結構あると思います。
「遊星よりの物体X」(1951年)はその嚆矢だった作品ですね。
>第二作
そうでしたか(笑)
面白かった記憶が強いので、そこまで考えませんでした(笑)
>第三作
この辺りになると、すっかり忘れましたなあ^^;
情けない
>成虫化した後
恐らく、まだその恐ろしさが身にしみていないということなんでしょうねえ。
観客との意識の差を上手く扱ったと言えるのかもしれません。
>コメントの多さ
映画ブロガーさんが盛んな時期でもありましたし、僕が要らんことを言って盛り上げた犯人かもしれません(笑)
六本木の高速道路の高架横に”ギーガーズバー”というエイリアンのデザイナーである画家キーガーのデザインしたバーが出現しました。
いまは無くなっておりますが、それほどの衝撃をこの映画は与えましたが、三作目以降は堕落していくばかりで、ただのB級作品と化してしまいましたな~
ギーガーの画集も買いましたよ。
クレジットでは、トム・スケリットがトップに来ているので彼が主役かと思えば、新人のシガーニー・ウィーヴァーが主役でありましたね。
CGが登場する前夜に登場した傑作でした。
第三作は先行作と比べなければまあまあですが、次は完全にダメでした。
>シガーニー
誰が最後まで生き残るか解らないというのも良くて、しかし、一番無名の女優が生き残ってビックリしました。彼女が大スターになったのは、途中で死ななかったからと言われていますね。最初は男性が生き残ることになっていたようです。
しかも、ジェーン・フォンダとかフェイ・ダナウェイにオファーされたのが二人に断られた為のシガーニー起用。運命とは解らない者ですね。