映画評「アニマル・キングダム」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年オーストラリア映画 監督デーヴィッド・ミショルド
ネタバレあり
17歳の若者ジェームズ・フレッシュヴィルは、母親が麻薬の過剰摂取で急死したので、祖母ジャッキー・ウィーヴァーに引き取られるが、彼女が悪行三昧の息子三人をコントロールしている事実上のギャング・ママである為、自ずと犯罪に巻き込まれてしまう。即ち、伯父たちは知恵袋たる友人を警察に殺された腹いせに警官二人を殺害、この事件の証人として刑事ガイ・ピアースが証言を引き出そうと少年にアプローチした為、今度は祖母の息が掛かった警官に命を狙われる羽目になるのである。
本作の狙いは平凡な若者が祖母一味の犯罪に巻き込まれ、自ら犯罪に手を染める必要が生じてくる過程を描くことにあるが、日本の観客には違和感が残る。
つまり、主人公は“ごく平凡な穏やかな生活”をしているはずなのだが、一般日本人には麻薬で死ぬ母親は平凡は母親ではないし、母親が死んだ横でぼんやりとTVを観ている主人公も平凡ではなく、その様子から穏やかな生活とは全く感じられないからである。
大分増えているのかもしれないが、麻薬は日本の一般大衆の生活とはまず無縁という環境の落差がある。日本なら麻薬で死んだとすれば救急隊員が大騒ぎするだろうが、そんな様子を全く見せない。僕らの感覚では母親は軽犯罪者であるし、息子も取り調べを受けるであろうが、それがない。だから、主人公が平凡で穏やか生活が崩され、犯罪に巻き込まれるという印象が薄くなる。
序盤にメルボルン警察の捜査班は容赦ないという言説があり、その通り、警察はいきなり知恵袋を殺す。日本映画なら一味の悪行を描いた上で、かつ、その抵抗ぶりを示さない限りは射殺は有り得ないが、まるでマフィア同士の抗争のように無情に殺す。欧米の警察が日本より簡単に犯罪者に発砲するのは常識であるものの、メルボルンではその常識からも著しく外れているようで、それを序盤の説明で処理しているわけである。
かくして我々の印象に残るのは、母親の死前後の落差ではなく、孤児になった少年がメルボルンに暮らす過酷さのみということになる。そうして、主人公が祖母一家の魔の手から上手く免れようと知恵を絞って所期の目的を達成し、安全のうちに恋人を殺した伯父を復讐の為に殺した後、彼の将来の人生がさらなる血にまみれない保証がどこにあろう?
と書くと一見ネガティヴな評価をしているように思われるに違いないが、実際は違う。環境が若者の人生を変えていく様子を写実的に描いて見どころある小傑作というのが僕の全体評価である。監督は新人デーヴィッド・ミショルド。揺れるカメラを使わずに実録風の感じを出していて、実力派という印象を残す。
僕は煙草すら吸ったことがない。"I haven't smoked any single piece."と言ったら、アメリカの取引先社長に驚かれた。
2010年オーストラリア映画 監督デーヴィッド・ミショルド
ネタバレあり
17歳の若者ジェームズ・フレッシュヴィルは、母親が麻薬の過剰摂取で急死したので、祖母ジャッキー・ウィーヴァーに引き取られるが、彼女が悪行三昧の息子三人をコントロールしている事実上のギャング・ママである為、自ずと犯罪に巻き込まれてしまう。即ち、伯父たちは知恵袋たる友人を警察に殺された腹いせに警官二人を殺害、この事件の証人として刑事ガイ・ピアースが証言を引き出そうと少年にアプローチした為、今度は祖母の息が掛かった警官に命を狙われる羽目になるのである。
本作の狙いは平凡な若者が祖母一味の犯罪に巻き込まれ、自ら犯罪に手を染める必要が生じてくる過程を描くことにあるが、日本の観客には違和感が残る。
つまり、主人公は“ごく平凡な穏やかな生活”をしているはずなのだが、一般日本人には麻薬で死ぬ母親は平凡は母親ではないし、母親が死んだ横でぼんやりとTVを観ている主人公も平凡ではなく、その様子から穏やかな生活とは全く感じられないからである。
大分増えているのかもしれないが、麻薬は日本の一般大衆の生活とはまず無縁という環境の落差がある。日本なら麻薬で死んだとすれば救急隊員が大騒ぎするだろうが、そんな様子を全く見せない。僕らの感覚では母親は軽犯罪者であるし、息子も取り調べを受けるであろうが、それがない。だから、主人公が平凡で穏やか生活が崩され、犯罪に巻き込まれるという印象が薄くなる。
序盤にメルボルン警察の捜査班は容赦ないという言説があり、その通り、警察はいきなり知恵袋を殺す。日本映画なら一味の悪行を描いた上で、かつ、その抵抗ぶりを示さない限りは射殺は有り得ないが、まるでマフィア同士の抗争のように無情に殺す。欧米の警察が日本より簡単に犯罪者に発砲するのは常識であるものの、メルボルンではその常識からも著しく外れているようで、それを序盤の説明で処理しているわけである。
かくして我々の印象に残るのは、母親の死前後の落差ではなく、孤児になった少年がメルボルンに暮らす過酷さのみということになる。そうして、主人公が祖母一家の魔の手から上手く免れようと知恵を絞って所期の目的を達成し、安全のうちに恋人を殺した伯父を復讐の為に殺した後、彼の将来の人生がさらなる血にまみれない保証がどこにあろう?
と書くと一見ネガティヴな評価をしているように思われるに違いないが、実際は違う。環境が若者の人生を変えていく様子を写実的に描いて見どころある小傑作というのが僕の全体評価である。監督は新人デーヴィッド・ミショルド。揺れるカメラを使わずに実録風の感じを出していて、実力派という印象を残す。
僕は煙草すら吸ったことがない。"I haven't smoked any single piece."と言ったら、アメリカの取引先社長に驚かれた。
この記事へのコメント
日本でも覚せい剤などが、一般社会に浸透してきておりますが、まだ海外ほどではありませんからね。
ねこのひげは30歳ぐらいで煙草を吸うのをやめました。
理由は別になかったんですけどね・・・金がもったいないという気がしたのかな?
最近見ていると煙草を吸っているのがいまだに多いのにはあきれますね。
>覚せい剤
日本の官憲が外国人を国外に出したがる理由の一つに麻薬も挙げて良いのでしょうね。
僕はこういうものに対する好奇心がないから、自分から浸かることは絶対ないです。中学生のタバコだって好奇心から始まっている人が殆どでしょ?
同級生のタバコ談話を聞くに及び、あんな煙いもの、どこが良いのかと思いましたよ。映画で観る分には格好良いものが多いですけどね。
>タバコ
一日ひと箱吸っても、今の価格なら年間十万円を軽く超え、50年続ければ七百万円以上ですからねえ。馬鹿にならない。
その殆どが税金。無駄に使われるなら、納める税金は最小限に抑えたいものです^^