映画評「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年中国=香港映画 監督ツイ・ハーク
ネタバレあり

唐時代に実在した判事を事実上の探偵に据えたミステリー作品で、原作がオランダ人のロバート・ファン・ヒューリックというのが興味深い。しかも決して新しい作品ではなく、1950年~60年代に一連の作品が書かれている。
 但し、ヒューリックが関係しているのは判事が探偵であるという設定だけで、構成その他は映画オリジナル、従って香港映画系である故にミステリー趣向以上にアクションに注力されているのが、本格ミステリー映画を渇望している僕としては残念である。

中国史上でも悪名高い則天武后(カリーナ・ラウ)が即位を企んでいる689年、大仏建立に絡んで有力者が衆人環視の中で焼死する謎の事件が続発する。則天武后は事件解決の為、かつて反逆を起して逮捕した判事ディー(アンディ・ラウ)の才能に頼み、釈放することにする。
 男まさりの側近チンアル(リー・ビンビン)はこの処置が気に入らないが、監視の為に暫し一緒に行動するうちに彼に恋する。判事が調査を進めるうちに火炎虫という存在が浮かび上がり、大仏建立の監督シャトー(レオン・カーフェイ)の犯行であることを突き止める。判事は自ら火炎虫の災厄にかかりながらシャトーを倒し、彼の計った大仏倒壊による宮殿破壊という筋書きを未然に防ごうと奮闘する。

ミステリーとしては、肝心の推理過程が別の人物と共同という形で判事に集中しないために進行が散漫である感を禁じえない。監督がツイ・ハークなのでワイヤー・アクションも大量に使われていて賑やかで結構と言いたいところではあるものの、本作のCGも昨日の「白蛇伝説」と五十歩百歩で、市街情景などいかにも絵であるという部分が多く今一つ。これならCGでなく優秀な書き割りの方が余程本物らしいのではないか?

最近の映画はHD撮影が当り前でビデオ的な映像でも以前ほどは気にならなくなったとは言え、本作のいかにもビデオでございますという質感がCGのリアルさやアクションの迫力を殺いだ気がする。やはり、フィルムはマジックなのである。

デジタル上映・・・7、8年前に予言したように、“映画”の終りが始まっているね。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年08月03日 02:06
デジタルはツブツブ感やザラザラ感がでますね。
フィルムを越えるハイビジョンも出てきましたが、こういう映画ではフィルムでしょうな~
ハリウッドでもかなり絵が使われておりますが、本物より本物らしい絵で、日本人画家がかなり活躍しているようです。
香港はそこまでする気がないのかな?
オカピー
2013年08月03日 21:14
ねこのひげさん、こんにちは。

今は、HDで撮影してフィルムで上映という形が多いのでしょうが、HDをそのままデジタル上映したりする形式も多いようで、古い映画館をつぶす要因になっていますね。画質だけの問題だけでなく、どうもいかんです。

>日本人画家
日本の役人と政治家にがっかりしている最中ですので、それ以外の分野で頑張ってほしいもの。
それすらつぶしかねない我が国の為政者でございますが。
例えば、“児童○ルノ規制法”はコミックやアニメをつぶすと一部で言われていますね。運用次第では、凡俗の僕等も影響を受けかねない。くわばらくわばら。

この記事へのトラックバック