映画評「かぞくのくに」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督ヤン・ヨンヒ
ネタバレあり

在日朝鮮人二世の女流映画作家ヤン・ヨンヒの劇映画デビュー作。

1997年、脳腫瘍の診察の為に三か月の期間限定で、1972年帰国事業で渡った北朝鮮から自宅に帰って来た元在日朝鮮人ソンホ(井浦新)は、父親(津嘉山正種)、母親(宮崎美子)、妹リエ(安藤サクラ)と家族の団欒を楽しみ、幼馴染と旧交を温めるが、三か月の期間限定では手術や薬物治療は無理であると医師から告げられる。
 妹は玉の輿に乗ったと言われる兄の初恋の女性スニ(京野ことみ)を頼って手術の可能性を探るが、その確定的な返事が届く前に北朝鮮から帰国命令が下る。無情な連絡で淡々と帰国の途に就く兄に妹は空しくすがりつく。

僕はヤン女史の背景について全く存じ上げないが、恐らく彼女の実経験を基に書かれた物語であろう。家族の絆に国境はないのに、片方の国の体制故にその思いは非情に断たれる。「かぞくのくに」とは兄にとっての日本であり、それ以上に妹にとっての北朝鮮を指すと思われる。ひらがなであるのは「国家」といういかめしいイメージを取り除く意図にちがいない。

やるせない。北朝鮮の不自由さを「あの国では何も考えなくていい」というポジティヴな表現に代える兄の台詞が自由に関して殆ど問題のない日本に住む僕にとって重くのしかかる。日本にいるからやっと作れる内容である。ヤン女史はもはや韓国どころか北朝鮮にも行けないのではないか? ただ、内容の重さに比べて、先日の「終の信託」のような構成や画面の面白味があるとは言いかね、そうした観点から映画を見る比重の高い僕には何となく物足りなく感じられるのも事実。昨日の「アルゴ」でも述べたように、映画は昔の作品のように少し嘘っぽいくらいでちょうど良い。

安藤サクラと井浦新の二人が好演。

近くに変な国があると本当に迷惑するデス。それらの国に対抗しようと日本がそれらと大差のない秘密主義の国になりそうな気配があるのが最大の迷惑と言うべし。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年10月01日 02:38
先日、政治評論家のような方が説明しておりましたが、戦前の本当の日本人との付き合いを知っている老人たちが一線を退いて、日本憎しで嘘の歴史を洗脳教育された連中が政権を握りだした結果がいまの現状だそうで・・・・
迷惑というか・・・救えませんな~
オカピー
2013年10月01日 20:10
ねこのひげさん、こんにちは。

それは日本の政治家も似たような感じですねえ。
戦前・戦中を知っているかつての政治家は右派・タカ派と言われる人たちでも越えてはならぬ一線を厳守していたように思いますが、最近は選挙で大勝ちした勢いにタガが緩んでいるよな気がします。
今の状況が進んだら、自衛隊をやめる人が増え、入る人が減るのではないかなと思っています。余り進んだら徴兵制度ということになりかねません。
そこまでは減りませんか、さすがに。

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