映画評「宇宙人王(ワン)さんとの遭遇」
☆☆★(5点/10点満点中)
2011年イタリア映画 監督アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
ネタバレあり
なかなか面白いイタリア製の低予算SF映画。コメディーぽい邦題ながら、コメディーではない。しかし、ブラック・コメディーと言えないこともない。
イタリア、中国語の美人通訳フランチェスカ・クッティカが緊急に呼ばれ、目隠しされて通された事務室で、政府機関の責任者らしきエンニオ・ファンタスティキーニの通訳することになるが、漸く正体を明かされた相手は中国人ならぬ中国語を話す宇宙人で、平和的に見える宇宙人に対して行なわれるファンタスティキーニの強引な取り調べや拷問に人道的に我慢ができず、アムネスティに連絡を取ろうとするなど色々と抵抗を試みる。やがて何か緊急事態で彼がいなくなった隙を見て脱出に成功して彼女が見るのは、宇宙人の宇宙船に攻撃されるイタリアの町である。
というお話で、常識のある大人の鑑賞者であるならば、これがSFに擬して中国脅威論を具現化したお話であることはお察し戴けるでありましょう。
イタリア人は偏に経済的な脅威と思って観れば良いわけだが、日本人にとって中国の脅威は経済以上に軍拡や領土・領海問題にある。確かに無視はできない。同時に、それを理由に政府与党がやろうとしていることのほうが最終的に日本国民にマイナスにならないと誰が言えよう。しかし、今日の新聞によると、この映画を見ているうちに思いを馳せていた秘密保護法案が“知る権利”に関して幾分改善されそうな見込み。僕の気分も少し改善した。
さて、殆どが部屋でのシンプルなやり取りに終始するという極めてローコストで効率の良い作り方をしているのに加え、中国語が世界で一番話されているから宇宙人が中国語を話すという設定についても、中国の反感を回避すべく(できているかどうか責任は持てない)上手い理由を考えたものでござる。人権意識の高い者がとんでもないしっぺ返しを食らうというのも、誠に皮肉っぽく諷刺が効いている。
中国脅威論を描いた作品という理解が正しいとすれば相当なナショナリズムだから、その部分についてはどうかと思うが、同じような映画ばかり見せられているとこういう変化球が面白く感じられるのである。
日本では王ちゃんの55本が危ない(笑)。
2011年イタリア映画 監督アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
ネタバレあり
なかなか面白いイタリア製の低予算SF映画。コメディーぽい邦題ながら、コメディーではない。しかし、ブラック・コメディーと言えないこともない。
イタリア、中国語の美人通訳フランチェスカ・クッティカが緊急に呼ばれ、目隠しされて通された事務室で、政府機関の責任者らしきエンニオ・ファンタスティキーニの通訳することになるが、漸く正体を明かされた相手は中国人ならぬ中国語を話す宇宙人で、平和的に見える宇宙人に対して行なわれるファンタスティキーニの強引な取り調べや拷問に人道的に我慢ができず、アムネスティに連絡を取ろうとするなど色々と抵抗を試みる。やがて何か緊急事態で彼がいなくなった隙を見て脱出に成功して彼女が見るのは、宇宙人の宇宙船に攻撃されるイタリアの町である。
というお話で、常識のある大人の鑑賞者であるならば、これがSFに擬して中国脅威論を具現化したお話であることはお察し戴けるでありましょう。
イタリア人は偏に経済的な脅威と思って観れば良いわけだが、日本人にとって中国の脅威は経済以上に軍拡や領土・領海問題にある。確かに無視はできない。同時に、それを理由に政府与党がやろうとしていることのほうが最終的に日本国民にマイナスにならないと誰が言えよう。しかし、今日の新聞によると、この映画を見ているうちに思いを馳せていた秘密保護法案が“知る権利”に関して幾分改善されそうな見込み。僕の気分も少し改善した。
さて、殆どが部屋でのシンプルなやり取りに終始するという極めてローコストで効率の良い作り方をしているのに加え、中国語が世界で一番話されているから宇宙人が中国語を話すという設定についても、中国の反感を回避すべく(できているかどうか責任は持てない)上手い理由を考えたものでござる。人権意識の高い者がとんでもないしっぺ返しを食らうというのも、誠に皮肉っぽく諷刺が効いている。
中国脅威論を描いた作品という理解が正しいとすれば相当なナショナリズムだから、その部分についてはどうかと思うが、同じような映画ばかり見せられているとこういう変化球が面白く感じられるのである。
日本では王ちゃんの55本が危ない(笑)。
この記事へのコメント
あの国は統一しかけては分解していく国で、ほっておいても、また分解するでしょうな~
記録は破られるためにあるので・・・・破って欲しいですがね~
>翻訳機
素晴らしく優秀なのを持っていそうですが、無数の言語がある地球ですから、実際には大変でしょうねえ。
実際中国語、英語あたりに絞られるでしょうね。
>あの国
大昔から色々な民族がうろちょろしている場所ですけど、一番無理しているのが今ですよね。これまでの民族ではなくイデオロギーで統一しているわけですが。
>記録
さすがのヴァレンティンも、騒がれ出してから、本人の言に反して少々意識しているような気もします。
早めに追いついたら、60本を超えるんじゃないでしょうか?