映画評「逃走車」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ムクンダ・マイケル・デウィル
ネタバレあり

「ワイルド・スピード」により人気アクション俳優になったポール・ウォーカーは、このまま車が主役の映画ばかり出ることになるのを神様が気の毒がったのか、車の事故で亡くなってしまった。自分の運転ならまだしも他人の運転だったとは・・・映画と現実は違うものだ。このタイミングにつき勝手に追悼作品と致します。合掌!

アメリカ人のウォーカーが別れた妻に会いに何故かヨハネスブルクに降り立ち、移動に利用したのが運悪く配車ミスで、悪党が拉致した現地女性ナイマ・マクリーンを運ぶレンタカーであった為に悪党から追われてひどい目に遭う。

という最近流行りのワン・シチュエーションのサスペンスで、ナイマが人身売買をしている悪徳警官一味を告発しようとしていた女性検事、追うのがそうはさせじと必死の警官一味というお話の構図自体は悪くない。警官それも署長を始め警察幹部も絡んでいる為逃げ込む場所がないという設定がサスペンスを生むのである。

しかし、問題が相当多い。そもそも警察一味が何故さっさと殺さずにナイマを生かしたまま、それもわざわざ(恐らく民間人を使って)レンタカーで移動しようとしていたのか僕の頭では理解できぬ。生かしておく理由が見当たらない為、強引に感じられる。典型的な“お話の為のお話”である。ウォーカーが後部座席に横たわっていた女性検事に気付くのも遅すぎる。

この手の作品はスタートで疑問が湧くと楽しめないので、悪くない着想を生かしきれず、勿体ないと言うしかない。カメラが車から出ないという拘りも自縄自縛になって、肝心なカーアクションに解らない部分が多すぎる。尤も僕は本作をカーアクション映画とは思っていないのだが、それでも、例えば、追ってきた警察の車がどうして転倒したのか解らないのでは不満が残ると言わざるを得まい。

この後ウォーカー主演作は何本か待機中らしいが、主演俳優が不慮の事故で亡くなった後にその映画を観るのは余り嬉しくないものだ。

ムクンダ監督、むくんでいない時に作ってください。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年01月29日 02:00
時々、こういった作品がありますね~
殺せばそれですむのになぜ殺さないのかと見ている観客に思わせたらその映画は失敗でしょうね。
納得する理由が後からでもでてくればいいですけどね・・・・
オカピー
2014年01月29日 20:12
ねこのひげさん、こんにちは。

邪魔なのだから殺せばそれで済むのに、本来関係のない主人公をはめるために生かされれているように見えるのだから、こりゃダメです。
後から理由を繰り出す映画もありますが、それを続編でやったのが「ソウ」シリーズですね。前作で突っ込まれた部分を続編で修復するという作戦でしたよ。

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  • 逃走車/ポール・ウォーカー

    Excerpt: これは劇場予告編を観て面白そうだなと思いました。主人公が借りたレンタカーによってある事件に巻き込まれていくというお話のアクション・サスペンス作品なのですが、何でも全編 ... Weblog: カノンな日々 racked: 2014-01-28 22:38