映画評「黒薔薇の館」
☆★(3点/10点満点中)
1969年日本映画 監督・深作欣二
ネタバレあり
アンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」とエドガー・アラン・ポーの怪奇小説の中間みたいなヴィリエ・ド・リラダンの短編集「残酷物語」を今読んでいるところ。偶然にも、この映画の前半は正にその内容を思わせる。と言おうか、ポーから着想を得たような感が強い。
深作欣二が監督をして丸山(美輪)明宏が主演している松竹作品で、資料には「黒蜥蜴」の続編と書かれているが、監督と主演以外に共通性は少ないので敢えて言うなら「黒」シリーズということになる。
実業家・小沢栄太郎が趣味の感覚で経営しているサロン“黒薔薇の館”にハーフの若者(ジョー山中)を連れた貴婦人・丸山明宏が現れ、三夜続けて彼女に魅入られた三人の人物(夫と称する西村晃、ツバメを自認する川津祐介、任侠の内田良平)が現れるが、「知らない」と一蹴され、川津は自殺し、内田は騒ぎの末に死んでしまう。
それを傍観していた小沢も彼女に入れ込んで館を改築するが、その直後に現れた不肖の次男・田村正和が父親から奪う形で恋に落ち、二人での逃避行したボートで遭難死する。
三日続けて男たちが現れ無残な結末を迎えるという前半まではポーや彼の後継者とも言われるフランスのリラダンに似たお話とムードでそれなりに興味深いものの、田村が現れる後半になるとお安いメロドラマに転じて一気に調子が落ちる。
「黒蜥蜴」では女怪盗だったから生きたと思われる倒錯的な丸山明宏は、あの作品のヒロイン像を引き継ぐ謎や魔性の部分があるとは言え、この作品の後半ではやはり一般女性として観ることができない為に恋愛映画として全く気分が乗らないのである。やはりもっと耽美的ムードで押せるお話でないと女装男性では厳しい。前半だけなら☆☆☆くらい。
世評を調べてみると丸山明宏を含めて意外に評判が良いので驚く。
丸山明宏のポーが聞こえる(意味不明)。
1969年日本映画 監督・深作欣二
ネタバレあり
アンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」とエドガー・アラン・ポーの怪奇小説の中間みたいなヴィリエ・ド・リラダンの短編集「残酷物語」を今読んでいるところ。偶然にも、この映画の前半は正にその内容を思わせる。と言おうか、ポーから着想を得たような感が強い。
深作欣二が監督をして丸山(美輪)明宏が主演している松竹作品で、資料には「黒蜥蜴」の続編と書かれているが、監督と主演以外に共通性は少ないので敢えて言うなら「黒」シリーズということになる。
実業家・小沢栄太郎が趣味の感覚で経営しているサロン“黒薔薇の館”にハーフの若者(ジョー山中)を連れた貴婦人・丸山明宏が現れ、三夜続けて彼女に魅入られた三人の人物(夫と称する西村晃、ツバメを自認する川津祐介、任侠の内田良平)が現れるが、「知らない」と一蹴され、川津は自殺し、内田は騒ぎの末に死んでしまう。
それを傍観していた小沢も彼女に入れ込んで館を改築するが、その直後に現れた不肖の次男・田村正和が父親から奪う形で恋に落ち、二人での逃避行したボートで遭難死する。
三日続けて男たちが現れ無残な結末を迎えるという前半まではポーや彼の後継者とも言われるフランスのリラダンに似たお話とムードでそれなりに興味深いものの、田村が現れる後半になるとお安いメロドラマに転じて一気に調子が落ちる。
「黒蜥蜴」では女怪盗だったから生きたと思われる倒錯的な丸山明宏は、あの作品のヒロイン像を引き継ぐ謎や魔性の部分があるとは言え、この作品の後半ではやはり一般女性として観ることができない為に恋愛映画として全く気分が乗らないのである。やはりもっと耽美的ムードで押せるお話でないと女装男性では厳しい。前半だけなら☆☆☆くらい。
世評を調べてみると丸山明宏を含めて意外に評判が良いので驚く。
丸山明宏のポーが聞こえる(意味不明)。
この記事へのコメント
深作さんも初期のころは変な作り方をしていたんですね~
美輪さんは、綺麗には違いないけど男にしか見えないですね。
マツコなんかのほうが女に見えますな。
この作品の記憶はないのですが、「黒蜥蜴」と連続する形で放映されていたと思いますね。「黒蜥蜴」は三島の家族が嫌がって、近年放映がなかったようです。
>マツコ
介護マンションで父親が生涯最後に笑った時(その時既に入り込んでいた菌により敗血症で二か月後に死去)観た番組に出ていたので、「あの人、男なんだよ」と言ったら「そうか、男なのか」と言っていたのを思い出します。
美輪さんは意図的に女っぽく見せない人なんですよね。その意味では最近よく出てくる連中とは一線を画しているような気がします。