映画評「シャンボンの背中」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年フランス映画 監督ステファン・ブリゼ
ネタバレあり

WOWOWに「W座からの招待状」というコーナーがある。「おくりびと」の脚本を書いた小山薫堂氏とイラストレーターの安西水丸氏が作品を紹介する。この二人がフランスで気に入って放映用に買ってきた作品だそうである。従って、恐らく上映会はやっているのであろうが、正式には日本劇場未公開なり。しかし、なかなか良かった。

大工のヴァンサン・ランドンが背中を痛めた妻オーレ・アッティカに代わって息子の通う小学校へ行き、代理教師のサンドリーヌ・キベルランから生徒へのお話を依頼される。お話のあと窓の具合が悪いと聞いた彼女の家に修理に出かけ、バイオリンを弾くそこはかとない彼女の風情に惹かれる。彼女の方も朴訥な彼を憎からず思うようになり、彼女が町を離れると知って遂に肉体的に結ばれてしまう。彼は彼女と一緒に町を出ると告げるが、翌日電車を待つ彼女の前に彼は現れない。駅の構内には逡巡する彼がいる。

というお話で、ある映画サイトではフランス版「恋におちて」(1984年)と紹介されている。確かに二人の中年男女の初恋のような素朴な交流に似通った雰囲気も感じるが、駅でヒロインが彼を待つシチュエーションは「マディソン郡の橋」(1995年)における車同士のサスペンスに気分的に近く、それ以前から僕はこのクリント・イーストウッドの名作を思い浮かべていた。

不倫だからという理由で彼は一緒に行かなかったのではあるまい。妻と息子への責任を負う大工にふさわしい決心であっただろう。そんな幕切れの後味はビターだけど爽快。これも一種のハッピーエンドであると思う。

原題はいかにもフランスらしく「シャンボン嬢」。名前はヴェロニクだから日本的な感覚では「ヴェロニクの背中」がベターかな?

この記事へのコメント

2014年01月07日 16:53
ストーリーを読んだだけで、観たくなりました。
内気な私でも(笑)妄想できそうな、誰でもフッと考えそうなお話じゃないでしょうか。

ラストの処理の余韻がどんなか。気になりますネ。
オカピー
2014年01月07日 17:40
十瑠さん、こんにちは。

>ストーリー
有難うございます。
非常に小市民的で、チェーホフが書きそうなお話です。
フランス映画にしては面倒くさくないけど、フランス映画的な味があるという不思議な映画です。いずれにしても小品という感じ。淡々としているが冷淡ではない、という辺りが気に入りました。

>ラスト
「マディソン郡の橋」のような強力な描写ではないですし、あそこまでサスペンスはないのですが、シチュエーションはそのまま男女を逆にした感じで面白かったですよ。
ねこのひげ
2014年01月08日 02:53
むかし・・・40年以上前だったかな・・・中村雅俊が若かりしころ、大学生役で人妻と恋に落ち、同棲しようとするが、人妻が夫と子供を捨てられなくて家庭に帰ってしまうというテレビドラマを観たことがあります。
『青春の旅立ち』だったかな?
中村雅俊がよくやっていた一連の青春ドラマでありましたが・・・
古今東西、似たような話はあるということで・・・
オカピー
2014年01月08日 19:56
ねこのひげさん、こんにちは。

構図としてはどこの国でもありそうなものですからね。
本作の殊勲は、大人同士の交流にも拘わらず、“不倫”の匂いを漂わせない清潔感でしょう。

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