映画評「ニール・ヤング/ジャーニーズ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ジョナサン・デミ
ネタバレあり

ニール・ヤングは1960年代以降アメリカのロック史において十本の指に入る重要アーティストと思うが、日本でそこまで人気があるとは思えず、当然本作は日本劇場未公開である。
 本作については映画としてよりニール・ヤングのライブを楽しむ感覚で観た。かと言ってここで音楽レビューを書いても仕方がないし、僕自身そこまで彼について詳しくは知らないので、一応映画評ということでどうかよろしく。

僕が初めて意識して彼を聴いたのは1973年の名作LP「ハーヴェスト」に収められた「ハート・オブ・ゴールド」で、その前の「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」や「エヴリバディ・ノウズ・ディス・イズ・ノーホエア」と時間を遡るように聴いた。さらに、それ以前に所属していたバッファロー・スプリングフィールドの名作二枚とソロと並行して参加していたクロスピー・スティルス・ナッシュ&ヤング(CSN&Y)の「デ・ジャヴ」も比較的よく聴いた。

本作に収められたのは、故郷トロントでのツアー最後の公演模様で、2010年に発表されたLP[ル・ノイズ」から半分くらい、残りは「エヴリバディ・ノウズ・・・」から「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」、「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」から同名曲と「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」、「デ・ジャヴ」から僕が彼の代名詞と思っている名曲「ヘルプレス」といった古い曲に二分され、その中間時代の曲は殆ど演奏されない。充実期の曲と最新作からという構成はツアーにおける当然な選曲だろう。

個人的にはやはりよく聴いた1973年以前の曲が嬉しく、「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」で“1970年”という部分を“21世紀”と変えて(ちゃんと押韻している)歌ったところで思わず拍手。会場の聴衆も同じように拍手喝采だったので、それにも僕は嬉しくなった。

監督は「羊たちの沈黙」で有名監督になったジョナサン・デミ。ニールが兄ボブの運転する車に先導されて、演奏するマッセイ・ホールまで行く旅の様子が随時挿入され、彼の故郷に対する思いが浮かび上がる構成となっている。これについて、カナダ生まれだということすら知らなかった僕にはさほど感慨も湧かないが、ヤングの熱烈なファンなら感動できるものがあるかもしれない。

1970年に反戦デモをしていた学生4人が殺されたことを歌ったメッセージ・ソング「オハイオ」(発表はCSN&Yとして)の前にこの事件のドキュメント映像が挿入されるのは全体の構成を考えると違和感が残る。

声が変わらない。フォーエヴァー・ヤング、ニール・ヤング!

この記事へのコメント

2014年02月13日 00:30
ニール・ヤングの悪口いう人はいないみたいですね。
セックス・ピストルズでデビューした頃のジョン・ライドンもニール・ヤングはほめていた。
いかにもアメリカのロック・スター、アメリカのポップミュージックでのマッチョなホンモノ志向に合うのでしょうね。
でも、自分では曲名知ってるのはヘイヘイマイマイくらで、それもそんなに聴いた方ではないです。(この記憶もあいまいなくらいで)
オカピー
2014年02月13日 19:25
nesskoさん、こんにちは。

スーパーグループCSN&Yの中でも、米国での評価が一番高いのはニール・ヤングだと思います。
僕なんかはいい加減なファンなものだから、歌詞も碌に検討していませんが、一番聴き込んだ「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」に収められている楽曲は、繊細と野趣が入り混じった独特の味わいがあると感じましたね。個人的には、コンポーザーとしてのレベルが相当高いと思います。

「ヘイヘイマイマイ」はは言わば中期で一番有名な曲かもしれません。僕はこの辺りはさほど聴きこんでいませんが。

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