映画評「図書館戦争」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・佐藤信介
ネタバレあり
21世紀に入って新作映画が劇的につまらなくなった為、現在、僕の一番の関心事は読書である。それも古いものばかり。昨年の今頃読みたい古典をピックアップしたら1000作ほどあった。平均三日かかるとして10年近い日を要するが、実際には読了にひと月くらいはかかるであろう大河小説や思想書も含まれるので、20年くらいかかるのではないかと思う。ほぼ全て図書館で読める。どうしても読めない英文関係はダウンロードして原書で読む。
閑話休題。
レイ・ブラッドベリの同名小説をフランソワ・トリュフォーが映画化した「華氏451」(1966年)以来(?)の本格焚書SFであるが、「華氏451」は本そのものが禁じられていたのに対し、こちらの焚書対象は公序良俗に反するPTA的なものである。図書館同士の知恵比べでも見せるのほほんとした作品かと勝手に想像して観始めたところ、全く違いました。
現実の世界でも秘密保護法が治安維持法のように変な方向に進むと検閲が始まるのではないかと危惧している。そうなっても戦前と違って何の力もないと判明した共産主義関係の書物は問題外であろう。寧ろ戦争反対、国家や政治家・官僚の現実における横暴を糾弾するような書物がやり玉にあがる可能性がある。昔と違って国際的な監視が厳しいので、そう簡単に官憲による検閲は始まらないと思うものの、一度始まったら廃止するまでに半世紀はかかると見ている。僕が読みたい本を読み終わり、恐らく死期を迎える20年後まで始まらないでほしい。
本作は一部パラレルワールド、一部近未来の日本が舞台である。1988年にメディア良化法なる秘密保護法と同じくらい珍妙な法律ができ、武装した良化隊なるものが図書館を焼き尽くし、死傷者が出る。これに対抗するのが図書隊で、我が国の現状のように図書館内の専守防衛にのみ武器の使用が認められているという設定。図書隊はゲリラ組織に近く、良化隊は戦前の特警に近い感じだが、本当の警察とは別の存在で、状況次第で良化隊とて警察に逮捕される可能性があるということだ。とは言っても、良化隊と警察は近い存在と思われている。
激しい戦闘アクションが繰り広げられる中で、高校生時代に図書隊の青年に読みたい本を救ってもらった榮倉奈々が数年後(2019年)に図書隊に入隊して、鬼教官・岡田准一に徹底的にしごかれるが、実は彼こそ彼女が王子様と憧れる当の人物でありました、というロマンス系の傍流のお話が粛々と進行する。
その意味では先日の「県庁おもてなし課」と似た構成で、さすがに原作者が同じだけのことがある。有川浩などという名前だから当然男性かと思いきや女性ということ。“ありかわひろ”と読むのですな。
娯楽映画的に腑に落ちないのは、実質的な内戦状態なのに、図書館利用者や一般人の反応にはそうしたことが全く伺わえないこと。三つの組織の関係、特に良化隊と警察の関係が些か曖昧で、最後に警察は正義の味方のようになっているが、こちらも余りすっきり説明されていない。
再び現実に戻る。一部で「はだしのゲン」に対する学校の図書室での閲覧制限が取り沙汰されている。「はだしのゲン」を制限せよと訴える人々は「過激な描写」「差別用語」を一応の理由にしているが、(本当にそれを理由にしている人もいるだろうが)本音が日本軍の暴力描写に対する反感、自虐史観からの脱却にあることは透けて見えている。中国で行った自分の暴力がやりきれなくて恩給を拒否している人さえいらっしゃる。やった人が何の得もないのに「やった」と言っているのに、戦争に行ってもいない人が「やっていない」と言うの何だか変だ。しかし、僕が言いたいのは、どちらが正しいかではない。自由が守られてほしいだけである。
以前にも述べましたが、政治家になると人はバカになると福沢諭吉は言っております。
2013年日本映画 監督・佐藤信介
ネタバレあり
21世紀に入って新作映画が劇的につまらなくなった為、現在、僕の一番の関心事は読書である。それも古いものばかり。昨年の今頃読みたい古典をピックアップしたら1000作ほどあった。平均三日かかるとして10年近い日を要するが、実際には読了にひと月くらいはかかるであろう大河小説や思想書も含まれるので、20年くらいかかるのではないかと思う。ほぼ全て図書館で読める。どうしても読めない英文関係はダウンロードして原書で読む。
閑話休題。
レイ・ブラッドベリの同名小説をフランソワ・トリュフォーが映画化した「華氏451」(1966年)以来(?)の本格焚書SFであるが、「華氏451」は本そのものが禁じられていたのに対し、こちらの焚書対象は公序良俗に反するPTA的なものである。図書館同士の知恵比べでも見せるのほほんとした作品かと勝手に想像して観始めたところ、全く違いました。
現実の世界でも秘密保護法が治安維持法のように変な方向に進むと検閲が始まるのではないかと危惧している。そうなっても戦前と違って何の力もないと判明した共産主義関係の書物は問題外であろう。寧ろ戦争反対、国家や政治家・官僚の現実における横暴を糾弾するような書物がやり玉にあがる可能性がある。昔と違って国際的な監視が厳しいので、そう簡単に官憲による検閲は始まらないと思うものの、一度始まったら廃止するまでに半世紀はかかると見ている。僕が読みたい本を読み終わり、恐らく死期を迎える20年後まで始まらないでほしい。
本作は一部パラレルワールド、一部近未来の日本が舞台である。1988年にメディア良化法なる秘密保護法と同じくらい珍妙な法律ができ、武装した良化隊なるものが図書館を焼き尽くし、死傷者が出る。これに対抗するのが図書隊で、我が国の現状のように図書館内の専守防衛にのみ武器の使用が認められているという設定。図書隊はゲリラ組織に近く、良化隊は戦前の特警に近い感じだが、本当の警察とは別の存在で、状況次第で良化隊とて警察に逮捕される可能性があるということだ。とは言っても、良化隊と警察は近い存在と思われている。
激しい戦闘アクションが繰り広げられる中で、高校生時代に図書隊の青年に読みたい本を救ってもらった榮倉奈々が数年後(2019年)に図書隊に入隊して、鬼教官・岡田准一に徹底的にしごかれるが、実は彼こそ彼女が王子様と憧れる当の人物でありました、というロマンス系の傍流のお話が粛々と進行する。
その意味では先日の「県庁おもてなし課」と似た構成で、さすがに原作者が同じだけのことがある。有川浩などという名前だから当然男性かと思いきや女性ということ。“ありかわひろ”と読むのですな。
娯楽映画的に腑に落ちないのは、実質的な内戦状態なのに、図書館利用者や一般人の反応にはそうしたことが全く伺わえないこと。三つの組織の関係、特に良化隊と警察の関係が些か曖昧で、最後に警察は正義の味方のようになっているが、こちらも余りすっきり説明されていない。
再び現実に戻る。一部で「はだしのゲン」に対する学校の図書室での閲覧制限が取り沙汰されている。「はだしのゲン」を制限せよと訴える人々は「過激な描写」「差別用語」を一応の理由にしているが、(本当にそれを理由にしている人もいるだろうが)本音が日本軍の暴力描写に対する反感、自虐史観からの脱却にあることは透けて見えている。中国で行った自分の暴力がやりきれなくて恩給を拒否している人さえいらっしゃる。やった人が何の得もないのに「やった」と言っているのに、戦争に行ってもいない人が「やっていない」と言うの何だか変だ。しかし、僕が言いたいのは、どちらが正しいかではない。自由が守られてほしいだけである。
以前にも述べましたが、政治家になると人はバカになると福沢諭吉は言っております。
この記事へのコメント
自衛隊オタクでもあるそうで・・・( 一一)
べたべたの恋愛と自衛隊オタクの組み合わせですか。
変なの(笑)