映画評「恋多き女」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1956年フランス映画 監督ジャン・ルノワール
ネタバレあり
ジャン・ルノワールを真に面白いと思うには生まれつきの映画的センスがいる。最初は見事に眠ってしまった「ゲームの規則」(1939年)は三度目で突然ピンと来たのだが、同じ系統に属する作品と言っても良い本作は二回目の今回もまだピンと来ない。
売れない作曲家に協力した後中年靴製造業者と婚約したポーランドの公女イングリッド・バーグマンが、大衆に人気のある将軍ジャン・マレーを大統領に擁立するグループの公爵メル・ファーラーと良い雰囲気になる。公爵は将軍擁立の騒動に乗じて、将軍に恋する女性と将軍とを結びつけ、自分は公女と結ばれようと画策するが、なかなかそう簡単には事が運ばない。
ルノワールは、救世主を気取っているつもりで次々と変える相手男性を寧ろ不幸に陥れていき、恋らしい恋をしないまま運命の男性ファーラーと知り合っているのに、それに気づかずに自分だけが一人ご機嫌になっているヒロインのずれ具合による可笑し味を狙って作ったと思われる。しかるに、そういう印象が醸成しきれていない。これは私淑する双葉十三郎氏が指摘したように、よく計算されているにも拘わらずイングリッドのコメディー演技からとぼけたものを感じにくいからである。
他方、ルノワールの「ゲームの規則」的ドタバタ、ゴタゴタを直感的に面白がるセンスが僕にどうも欠けているせいもあるのではないかと素直に思う。ルノワールは本当に難しい。
メッセージがどうのこうの社会性がどうのこうのより、こういう映画を楽しめるのが真のインテリだと思うね。
1956年フランス映画 監督ジャン・ルノワール
ネタバレあり
ジャン・ルノワールを真に面白いと思うには生まれつきの映画的センスがいる。最初は見事に眠ってしまった「ゲームの規則」(1939年)は三度目で突然ピンと来たのだが、同じ系統に属する作品と言っても良い本作は二回目の今回もまだピンと来ない。
売れない作曲家に協力した後中年靴製造業者と婚約したポーランドの公女イングリッド・バーグマンが、大衆に人気のある将軍ジャン・マレーを大統領に擁立するグループの公爵メル・ファーラーと良い雰囲気になる。公爵は将軍擁立の騒動に乗じて、将軍に恋する女性と将軍とを結びつけ、自分は公女と結ばれようと画策するが、なかなかそう簡単には事が運ばない。
ルノワールは、救世主を気取っているつもりで次々と変える相手男性を寧ろ不幸に陥れていき、恋らしい恋をしないまま運命の男性ファーラーと知り合っているのに、それに気づかずに自分だけが一人ご機嫌になっているヒロインのずれ具合による可笑し味を狙って作ったと思われる。しかるに、そういう印象が醸成しきれていない。これは私淑する双葉十三郎氏が指摘したように、よく計算されているにも拘わらずイングリッドのコメディー演技からとぼけたものを感じにくいからである。
他方、ルノワールの「ゲームの規則」的ドタバタ、ゴタゴタを直感的に面白がるセンスが僕にどうも欠けているせいもあるのではないかと素直に思う。ルノワールは本当に難しい。
メッセージがどうのこうの社会性がどうのこうのより、こういう映画を楽しめるのが真のインテリだと思うね。
この記事へのコメント
「僕は偽インテリ」と昔から言っております。
ルノワールが解らない人間がインテリを気取れませんや(笑)
「ゲームの規則」がピンと来た時にはいよいよインテリの仲間入りかと思いましたが、錯覚でした^^
このドタバタが面白くないというのは、人によるのかもしれませんが。
タイトルは、エレナと男たち、なので、まさにそういう感じなのですが…主演3人にコメディ色を感じない点も、いまひとつなんでしょうかねえ…。
ルノワールを面白がるには多分にテクニックが要るのだ、と思いますね。
「ゲームの規則」の凄さを感じた時やはりルノワールは凄い作家なのだと思いましたが、この作品はやはりピンと来ませんでした。
狙いもある程度解りましたし、何故ピンと来ないかもある程度解っていますので、採点は悪くないのですが。