映画評「HOME 愛しの座敷わらし」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・和泉聖治
ネタバレあり
一昨日もそうだったが、人気作家というのに全然知らない萩原浩の小説「愛しの座敷わらし」を和泉聖治監督、水谷豊主演という「相棒」コンビが映画化した作品。
開発した商品の売れ行きが思わしくなく岩手に左遷させられた食品会社の課長・水谷が妻・安田成美、娘・橋本愛、息子・濱田龍臣と盛岡郊外の築200年の屋敷に引っ越してくる。本人以外は全く内容を知らず、水洗トイレもガス風呂もない家の実態にびっくりする。
問題はそれだけでは終わらない。水谷は馴れない営業に苦労し、妻はとてつもなく広大な場所をカバーする近所付き合いにうんざり、東京で虐められていた娘はここでもしっくり来ない。息子は既に治ったが喘息を理由に母親から好きなサッカーをするのを止められている。水谷の母・草笛光子は認知症が始まっている。
ところが、子供たちが正体不明の何か・・・後に判明する座敷わらし・・・に遭遇してから、ぎくしゃくしていた家族関係が次第に好転していく。
というお話の途中までは、子供と大人の境界線を描いた作品と僕が勝手に言っている「となりのトトロ」と同工異曲である。大人には座敷わらしは原則的に認知できない。信じる心を持つ、即ち子供のような心を持つ人だけが見えるのだ。結局完全に見えるのは息子だけなのであるが、それでも水谷にもやがて音が感じ取れるようになる。
後半になると、お話の図式は「トトロ」から離れ、座敷わらしは福をもたらすという伝説どおり家族の問題は全て解決し、仕事で成功を収めた主人公の本社復帰も決まり、結局後ろ髪を引かれながら帰ることになる。
なかなか良いお話で、嫌いではないが、幕切れには相当疑問が付く。主人公にしてみれば色々な思いを込めて田舎の古屋敷を購入したはずなのに結局東京に戻ることにする。家族も最終的には盛岡での生活が気に入ったのに、成美ママの「ここで上手く行ったのだから、どこでも上手くいくわよ」の一言で全て片付けられてしまう。
しかも、地縛霊みたいな存在であるはずの座敷わらしが家族の一員としてついて来る。自分がこの家族であればそうあって欲しいと思うだろうが、作劇上これには無理があるのではないか? 座敷わらしとの別れを惜しみ悩みに悩んだ挙句に帰郷するという形ならともかく、ここまで来るとそれまで積み上げてきたドラマ上の蓄積を崩してしまうような気がする。
「泣きっ面に蜂」状態の我が家(文字通り雪で家も壊れた)。僕も座敷わらしがほしいです。
2012年日本映画 監督・和泉聖治
ネタバレあり
一昨日もそうだったが、人気作家というのに全然知らない萩原浩の小説「愛しの座敷わらし」を和泉聖治監督、水谷豊主演という「相棒」コンビが映画化した作品。
開発した商品の売れ行きが思わしくなく岩手に左遷させられた食品会社の課長・水谷が妻・安田成美、娘・橋本愛、息子・濱田龍臣と盛岡郊外の築200年の屋敷に引っ越してくる。本人以外は全く内容を知らず、水洗トイレもガス風呂もない家の実態にびっくりする。
問題はそれだけでは終わらない。水谷は馴れない営業に苦労し、妻はとてつもなく広大な場所をカバーする近所付き合いにうんざり、東京で虐められていた娘はここでもしっくり来ない。息子は既に治ったが喘息を理由に母親から好きなサッカーをするのを止められている。水谷の母・草笛光子は認知症が始まっている。
ところが、子供たちが正体不明の何か・・・後に判明する座敷わらし・・・に遭遇してから、ぎくしゃくしていた家族関係が次第に好転していく。
というお話の途中までは、子供と大人の境界線を描いた作品と僕が勝手に言っている「となりのトトロ」と同工異曲である。大人には座敷わらしは原則的に認知できない。信じる心を持つ、即ち子供のような心を持つ人だけが見えるのだ。結局完全に見えるのは息子だけなのであるが、それでも水谷にもやがて音が感じ取れるようになる。
後半になると、お話の図式は「トトロ」から離れ、座敷わらしは福をもたらすという伝説どおり家族の問題は全て解決し、仕事で成功を収めた主人公の本社復帰も決まり、結局後ろ髪を引かれながら帰ることになる。
なかなか良いお話で、嫌いではないが、幕切れには相当疑問が付く。主人公にしてみれば色々な思いを込めて田舎の古屋敷を購入したはずなのに結局東京に戻ることにする。家族も最終的には盛岡での生活が気に入ったのに、成美ママの「ここで上手く行ったのだから、どこでも上手くいくわよ」の一言で全て片付けられてしまう。
しかも、地縛霊みたいな存在であるはずの座敷わらしが家族の一員としてついて来る。自分がこの家族であればそうあって欲しいと思うだろうが、作劇上これには無理があるのではないか? 座敷わらしとの別れを惜しみ悩みに悩んだ挙句に帰郷するという形ならともかく、ここまで来るとそれまで積み上げてきたドラマ上の蓄積を崩してしまうような気がする。
「泣きっ面に蜂」状態の我が家(文字通り雪で家も壊れた)。僕も座敷わらしがほしいです。
この記事へのコメント
昔の映画だと、振り返ったら、座敷童が手を振って見送っていて、次第に消えていき、終の文字が出る。
というところでしょうね。
群馬なら古いお屋敷が残っていそうだから歩いてみたらどうですか?
出会えるかもしれませんよ(*'ω'*)
水谷家、映画の中では高橋家でしたっけ、は永遠に幸福が続くということになりますね。
それはそれで結構ですが。
起承転結的に考えると、余り効果的とは思えないエンディングでした。
市役所のそばに武家屋敷の一群があります。
我が家の前の家は(今はだれも住んでいない。但し、敷地で小さな自動車屋をやっている40代の姻族がたまに中に入っているようです)多分明治時代に作られた養蚕家屋ですが、あんなに古くても雪害を受けていない模様。
我が家は古いと言っても、昭和50年代に作られた家。鉄板陸屋根の変な家だから、こんなことになったのかな。普通の家にしておけば良かった。パンフレットを最初に持ってきた業者と大して検討もしないで契約してしまったんですよね。