映画評「ザ・ワーズ 盗まれた人生」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ブライアン・クラグマン、リー・スターンサール
ネタバレあり

どんづまりのゴロかフライばかりだったアメリカ映画に久しぶりのクリーン・ヒットが出た。アメリカ映画=品のない、というのがこのところの公式であったことを考えれば、本作は品の良さだけでも内野安打くらいの価値がありそうだ。ブライアン・クラグマンとリー・スターンサールの二人組が自らの脚本をやはり二人で映画化したドラマ。

才能はあるが売れない作家志願ブラッドリー・クーパーが、偶然古物屋で買ってきたバッグの中から出てきた古い原稿に衝撃を受け、自らの名で出版したところ大当たりして一躍人気作家になるが、「あなたの小説は数十年前若き日(ベン・バーンズ)に描いた私の作品だ」と言う老人ジェレミー・アイアンズと出くわしてショックを受ける。老人は「数十年前妻子がいたからこそ書けた小説なのだからあなたが奪ったのは私の人生だ」とだけ言って姿を消す。悩んだものの老人亡き後もクーパーは結局真実を明かさずに文壇の寵児たり続ける。

というお話が、今を時めく人気作家デニス・クェイドが新作として、一部は本人の講演で、一部は個室に押しかけて来た美人オリヴィア・ワイルドに語る、という入れ子構造で綴られている。

メインテーマは勿論、言葉と人生の重さに関するクーパーの葛藤であるが、これが著名作家クェイドの自伝的作品ではないかと思わせ、映画の中で虚実が入り混じって展開していそうなところに、かつてはよく観られたハリウッド映画的な趣向の面白さがある。

老人の言葉と同じく、映画もかかる行為の是非を沙汰する態度を見せずに終了、正に「一つの失敗くらいあっても人生は続く」のである。

さすがのクーパー人気でも日本では空振りのようで。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年04月13日 06:28
O嬢と違って完全なる確信犯でありますが・・・・
悩むだけいいかな?
詐欺というのは一種の精神病だそうでありますがね。
オカピー
2014年04月13日 15:55
ねこのひげさん、こんにちは。

才能が全くない人ならやらなかったでしょうけど。
運命だったということでしょうなあ。
逆に有名作家が名前を隠して発表した作品ではないかと噂される作品もいくつかありますよね。
2021年12月10日 20:34
これはよかったですよ。アメリカ映画、まだ大丈夫! な気がしました、アメコミ映画化が続いてますからね。
わたしはアマゾンプライムで見るまで存在に気が付いていませんでしたが、もっと話題になってもよかったんじゃないかと思ったくらい。
朗読会というのは向こうではよく行われているようですね。歌手の巡業みたいなかんじがするんですが。作家はみんなやらなきゃいけないのなら、つらい人もいそう。
オカピー
2021年12月11日 16:10
nesskoさん、こんにちは。

>アメリカ映画、まだ大丈夫! な気がしました

そうですね。
しかし、アメコミ・ブームやYA系は現在一段落で、今年観たSF/ファンタジー系列の作品は一桁ですよ。色々なジャンルを観たい僕としては歓迎すべき傾向です^^v

>もっと話題になってもよかったんじゃないかと思ったくらい。

実際ヒットしなかったようです。僕の映画評を信用すれば、そんなことはなかったのに(笑)。尤も僕は劇場公開時には書くことはまずないのでねえ。

>作家はみんなやらなきゃいけないのなら、つらい人もいそう。

サリンジャーみたいに奥に引っ込んでしまう人もいますよね。

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